自撮りサル著作権裁判のその後について
昨年の秋に「サルは著作権者になり得るのか?」という記事を書いています。今ではわりと有名になってしまったと思いますが、インドネシアの森林で撮影をしていた写真家のカメラをサルが奪ってシャッターを勝手に押してしまったことで、自撮り写真が撮影されてしまい、しかも、その写真の出来が絶妙であったことにより起きた事件です。
これについては二つの争いがからんでいて、一つ目は写真家が自分に著作権があると主張して写真を転載したWikimediaと争った件です。シャッターを押したのがサルであるとは言え、写真家はカメラの位置や機材の選択等創作性がある行為をしているので、著作者になるという論理構成もあり得なくはないですが、米国著作権庁はこの主張を認めず、著作物としての登録を拒否しました。
二つ目が今回の話で、PETA(People For The Ethical Treatment of Animals)という動物愛護団体が、サル(ちなみに名前はNARUTOです)を原告とし、その後見人となって、この写真の著作権はサルにあるということで写真家側を訴えたという構図です。
その裁判の口頭弁論があり、判事が「原告の主張は認められない(サルは著作権者にならない)」との心証を開示したようです(最終判決ではありません)(参照記事(英文))。この判事は立法論的な解決策を否定はしていないようですが、動物が著作権者となり得るような法律改正をすると、ライセンスをどうするか等々ややこしいことこの上ないのではないかと思います。
サルが著作権者になり得ないという意見はまあ予測の範囲内として、興味深いのは、この訴訟がサルを原告としているにもかかわらず「原告適格なし」として門前払い(却下)にならなかった点です。前記事にも書きましたが、日本ではともかく、米国ではあり得ないことではないようです。