シン・ゴジラ(第4形態)のフィギュアが立体商標登録へ
今年の4月に「東宝、シン・ゴジラ(第4形態)のフィギュアの立体商標登録ならず」という記事を書いています。シン・ゴジラの立体商標登録が指定商品「縫いぐるみ、アクションフィギュア、その他のおもちゃ、人形」について拒絶査定となり、不服審判でも覆らなかったというお話です。
この審判の審決取消訴訟において、10月30日に審決を取り消す判決がありました(判決文)。すなわち、ほぼ確実に、シン・ゴジラ(第4形態)のフィギュア(タイトル画像参照)が指定商品「縫いぐるみ、アクションフィギュア、その他のおもちゃ、人形」についても登録されることになります(文具等その他の商品については既に登録されています)。
一般に、商品の形態そのものを立体商標登録することはきわめてハードルが高く、長年の使用によってほとんどの消費者が「この形状と言えばあの会社」と思うような高い認知度を得られていることとを立証しなければなりません。いわゆる「使用による識別性」という概念です。きのこの山、たけのこの里、カシオのGショック、ホンダのスーパーカブ等々、このパターンの立体商標が登録されるとメーカーも積極的にプレスリリースを出したりしますが、それは、商標登録されたことがまさに商品の高い認知度の証しであるからです。
さて、ゴジラについて言えば、どう見ても日本の消費者において(というか世界的に)相当の認知度があると思うのですが、なぜか、審査でも審判でも使用による識別性が否定されていました。
審査段階では、使用による識別性を立証するための十分な証拠が提出されていなかったこと(ゴジラが有名なのは明らかだから楽勝と思っていたのでしょうか)、そして、審判段階では、商品の販売期間(7年)が短い、市場シェアー情報が提出されていない、売上18億円の根拠が提出されていない、等の理由により、やはり使用による識別性の獲得が否定されていました。
審決取消訴訟で大きく変わったのは、シン・ゴジラはオリジナルのゴジラとは、形状は同一ではないものの、両者をまったく別物と考えるのは適切でなく、ゴジラシリーズ全体がシン・ゴジラの消費者の認識に及ぼす影響を考慮すべきとした点です。そして、それを前提に使用による識別性が獲得されたと判断されました。
さらに、被告(特許庁)の反論については、「使用商品が掲載された雑誌の種類が少ない、書籍や展示即売会の来場者は限定されている、ゴジラ像の恒常的設置は東京都内の4か所にとどまる、本件アンケートには本願商標の立体的形状と原告との関連についての質問がないなど、原告の主張立証の逐一を論難するが、ゴジラ・キャラクターの圧倒的な認知度の前では些末な問題にすぎず、上記(2)の判断(注:使用による識別性を獲得したということ)を左右するものとはいえない。」として退けています(太字は栗原による)。太字部分がちょっと判決文としては珍しい芝居ぽい言葉使い(通常なら「きわめて高い認知度を参酌すれば些末な問題」とでも書くでしょう)で、裁判官の「ゴジラの認知度を認めなくてどうするんだ」という強い意思が感じられる気がします。
個人的には納得できる結果です。