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旧統一教会の「法令に違反」には、民法は含まないとする主張を、文化庁は一蹴 解散命令請求に至った経緯

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影・修正

10月12日、盛山文部科学大臣は記者会見で、旧統一教会への解散命令請求を東京地方裁判所に申し立てることを発表しました。その後、立憲民主党を中心とする国対ヒアリングが行われ、被害者の思いや文化庁から解散命令請求に至った経緯などの話がありました。

立憲民主党の長妻昭議員は「本日、正式に解散命令請求の決定をしました。これが出たことも重要ですが、財産保全もあってしかるべきかと思っています。我々も特別措置法案の提出をして、すみやかに法律を実現してくことに注力をしていきたい」と話します。

被害者らの解散命令請求への思い

同党の山井和則議員は、今回の解散命令請求を受けての気持ちを、被害者家族の橋田達夫さん、中野容子さん(仮名)、旧統一教会の元2世信者である山本サエコさん(仮名)に尋ねました。

信者である元妻が1億円の献金をして、そのもとで育った長男を亡くされるという経験をした橋田達夫さんは話します。

「やっとここまできました。誹謗中傷を受けるなど、つらい思いをしながら。統一教会という団体は残してはいけないことを身をもって感じています。ありがとうございました」

宗教2世問題ネットワークの副代表を務める山本サエコさんは「不法行為を組織的、継続的に行ってきた団体に、やっと解散命令請求が出ました。しかしそれが出たからといって解決ではありません。解散命令が確定しても信教の自由はありますので、宗教団体としての活動は続けられます。私たち宗教2世が受けたような宗教虐待は教義に基づいて行われますので、今後も継続して、監視していかなければなりません」と、宗教2世の相談を受けている立場から話します。

信者であった母が1億円以上の献金をした後「損害賠償請求などを行わない」といった念書を書かされたために、返金裁判が1、2審で敗訴して、現在、最高裁に上告中の中野容子さんは「私と同じような献金被害者は多数いるはずです。今回の解散命令請求によって、今まで泣き寝入り状態だった被害者が一気に返還請求をする可能性もある」といいます。

被害者の声を聞き続けた弁護士の思い

全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)及び、全国統一教会被害対策弁護団の木村壮弁護士は「非常に重要な一歩を踏み出した」と感謝の気持ちを述べます。

「全国弁連は1987年に結成されまして、そこから統一教会の被害回復ということで活動をしてきております。文化庁の方には、30年以上前から、解散命令請求を繰り返し申し入れてきました。長い年月が経って悔やまれる部分もありますが、本当にありがたいと思っています」

さらに「昨年(立憲民主党の)小西洋之議員の質問を受けて、岸田総理が『民法の不法行為でも、解散命令請求はなしうる』と正しい解釈を示して頂きました。そこから1年近く準備に時間がかかりましたが、解散命令請求の理由をみますと、緻密な調査が行われたことがよくわかります。解散命令が出れば、今後の被害抑止の意味では大きな前進です。一方で、今後、財産散逸、隠匿される恐れが非常に高まっています。統一教会には、関連団体が山のようにあります。こうした団体に財産を移すことによって、実質、自分たちが持っている財産を確保しながら、かつ被害者からの損害賠償請求から逃れようとする。それがされかねないわけです」と危機感を募らせながら、財産保全の特別措置法の早期成立を望みます。

文化庁による解散命令請求の経緯の説明

その後、文化庁の山田宗務課長から解散命令請求についての説明がありました。

「昨年11月以降、報告徴収・質問権を実施しました。我々の方でも170人を超える被害者等の方々からお話を聞いて、今回の判断に至りました。民事判決で我々が承知しているもので32件、169人、昭和55年以降の被害の把握をしております。事実関係として問題だと思っているのは、主に『未証勧誘』という(宗教)法人名を告げずに勧誘をするものや『信者、ご家族に重大な不利益が被ることになる』というもの(因縁トーク)、それに金額も非常に高額です。認められた判決以外にも和解、示談を合わせますと1550人。物品販売や献金のマニュアル等を我々としても把握しております。全国的に同じような手法で、お金を集めており、(被害)規模が約204億円という形で、一人当たり約1300万円という高額な被害が出ていることも承知しています。そのやり方も家族に無断でとか、失業手当を献金したり、家族、親族も含めて多大な精神的な苦痛を強いるなど、様々な被害が出ています」

旧統一教会側の「法令に違反」には、民法は含まないという主張について

旧統一教会側は宗教法人法81条の1項1号の「法令に違反」には、民法は含まず、刑法違反のみとの主張をしています。

それに対して文化庁は「旧統一教会は『民法が入りません』とおっしゃっているのですが、もともと民法由来の宗教法人ですから、法人格を与えられています。民法で法人というものを認めましょうとなっており、その特別法として宗教法人法ができているので、法律に民法を排除する規定がないにもかかわらず『民法が入らないとするはずはない』ことを申し上げています」とします。

さらに「(宗教法人としての)目的を著しく逸脱している行為で、これは宗教活動というよりも、むしろ財産的利得を目的としてやっている部分があるのではないか。これは単に信者個人がやったのではなくて、宗教法人の行為」と文化庁は認識しているとのことです。

さらに「教義の良し悪しについて、我々は申し上げていません。しかし教義を通じた行為によって被害が生じており、現象面からみると、組織としてやっているだろうと。結果、お金はどこにいっているのかといえば、法人に帰属しています。本部から各教会に指示が出されている。献金や物品販売が多かったりすると表彰されたりしている。それは教会として勧めていることではないかと。全国各地で被害がみられますが、全国で画一的な方法でやっていることは、組織性を裏付けるもので、法人として解散命令が命じられるべき」ものとしています。

財産の利得目的が、国によって暴かれた

木村弁護士は「我々もずっと財産の利得目的であると裁判でも訴えてきました。宗教団体ゆえに、財産利得が目的と断定するまでには、難しかったと思いますが、実態からみれば財産ばかりですから。その実態に目を向けて、それを裏付ける資料を集めて申し立てをして頂いていることは、すばらしい」と話します。

これまで旧統一教会は、信者らに「信教の自由」を叫ばせながら、アンタッチャブルな状況で、多額のお金集めの活動をさせてきました。これはある意味、宗教団体の仮面をつけて、財産の利得目的の行為をさせてきたといえます。しかし国は多くの被害者などから聞き取りを行い、40年間、教団がかぶり続けてきた仮面を一気に剥がした。それが解散命令請求だと思っています。

宗教法人法の81項の1項2号も加わった理由

ヒアリングでは、共産党の宮本徹議員が「今回、宗教法人法の81項の1項1号だけでなく、2号も加えていました」と、その理由について尋ねました。私も1項2号前段が解散事由に加わることを会見後の説明で知り、驚いたところでしたので、とても聞きたい内容でした。

旧統一教会への解散命令請求 被害者の声だけは絶対に消すことはできない 国民の声が後押しをした(Yafooニュースエキスパート)

「2号については、オウム真理教の時も明覚寺の時も、1号と2号前段のセットで解散命令の事由にあげられています。1号の要件を満たす事実がたくさん集まりました。我々も1号を中心に考えていたわけですが、集めてみると、どうも宗教活動がメインというより、財産の利得を目的としている部分があるではないかと。それは法人格を与えて、保護すべきものではないということで、1号と合わせて2号も解散命令事由に加えることに致しました」(文化庁)

これは、旧統一教会の活動の実態をしっかりと把握したからみえてきたことといえます。

最後に長妻議員は「プレッシャーのなかで(文化庁に)敬意を表します。小西議員が1年前に国会で首相に質問する前日に(長妻議員が)質問した時には、『刑法がなければ(解散命令請求は)だめです。民法は認められません』とおっしゃられていました。我々がかねて主張していた『民法も含まれる』ことが明確になった。ありがたいことですが、全国弁連は、かなり前から解散命令請求を求めていた。政府がもっと早く『民法も含まれる』という見解を初めから持っていれば、早く解散命令請求のプロセスが進んだのではないかが、悔やまれるわけです。一夜にして『民法も含まれる』となりましたが、それまで刑法でないと(だめだ)を維持していた。なぜ、そういうことが起こったのか、検証をお願いしたい」と話します。

ようやく解散命令事由に「民法が含まれる」ということになり、解散命令に向けて動き出しました。しかし旧統一教会が財産を隠し続けて、解散命令後もこれまでと同じような活動を継続したら、意味がなくなります。それをさせないためにも、被害者救済にもつながる財産保全の議論が早急に求められます。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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