旧統一教会への解散命令請求 被害者の声だけは絶対に消すことはできない 国民の声が後押しをした
10月12日、盛山正仁文部科学大臣は会見を開きました。
「宗教法人世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)への解散命令請求は相当であるとの(宗教法人審議会の委員)全会一致のご意見でありました。明日以降、準備ができましたら、東京地方裁判所に対して、解散命令請求を行いたい」
これにより1980年代から40年以上にわたり、旧統一教会により引き起こされてきた霊感商法や高額献金という甚大な被害が、二度と生まれないようにするための道が開かれました。
その後、文化庁より、解散命令請求の判断に至った経緯や理由の説明もありました。長年、元信者として教団の内情を見てきて、今回の会見で、非常に重要だと思うところを、自らの体験を踏まえて話したいと思います。
170名を超える被害者からのヒアリング
「解散命令事由は、宗教法人法に厳格に定められており、その事由に該当するかどうかの判断をするにあたっては、法人の活動にかかる実態把握、具体的な証拠の積み上げが不可欠でした。7回にわたる報告徴収・質問権を行使のほか、全国霊感商法対策弁護士連絡会や、被害者の方々からの情報の収集を丁寧に進めてまいりました。たとえば、被害者の情報収集では、170名を超える全国の被害者の方々から、個別の経緯や被害状況を伺うなどしてきましたが、長期間にわたり被害を受けられている場合、ご自身の気持ちの整理に丁寧に向き合う必要があり、文化庁として心情に最大限配慮しながら、行ってまいりました」(盛山大臣)
会見を聞いて思うことは、国が被害事実を深刻に受けとめて、詳細な調査を行ったという事実です。「心情に最大限配慮しながら」とありますが、全国の被害者から、個別の経緯や状況をヒアリングすることは、容易ではないと思っています。
一方で、この調査事実は、不都合な真実を隠し続けようとする教団にとって、不法行為の実態が暴かれることになり、教団にとっては大きな打撃になると思います。
不都合な真実を隠し続けて40年。しかし被害者の声だけは絶対に消せない
信者時代に、私が所属した支部のなかで経験したことに「文(ふみ)の日」があります。
これは教団の外部に漏れてはいけない重要書類をシュレッダーにかけるなどして消去する日です。1990年代は、ファックスで教団の上層部から指示などが次々に送られてきていました。
教団内では各地区で献金や伝道の実績を競わせていますが、そうした書類がもし外部に流出すれば、大変な問題になりますので、定期的に日を決めて消去するように指示されていたのです。私もずっとシュレッダーの前に立ち続けて、ひたすらに裁断を手伝った記憶があります。
旧統一教会は自分たちにとって、不都合な証拠を隠すことに余念がありません。これまで教団側はこうした対策を施してきたために、被害がどのように生み出されてきたのかの実態が、なかなか把握されずにきました。
しかしどんなに証拠を消そうとしても、元信者や被害者の実体験の声だけは絶対に消すことはできません。国は全国の被害者へのヒアリングという大きな一歩を踏み出しました。その結実が、文化庁による解散命令請求だと考えています。
「タワー長」の言葉が、自然に出てくる文化庁の会見
大臣の会見後に行われた説明でも、随所に文化庁がしっかりと情報を収集して、解散命令請求の判断にいたったのか。それがよくわかる部分がありました。
その一つに、ごく自然に文化庁の担当者から「タワー長」という、教団の内部用語が出てきたことがあります。
「物品販売をする時、タワー室といわれる部屋には、タワー長といわれる人たちがおり、(信者らの)報告をうけながら、指示を出していた事実関係も把握しています」
タワー長とは、勧誘現場にいる中心的な人物のことです。教団の関連施設に誰かを連れこんだ時には、必ず勧誘してきた信者は、タワー長なる人物に報告・連絡・相談をして、その指示を仰がなければなりません。
それは伝道の現場だけではなく、物品販売でも行われていました。
文化庁の担当者から、この「タワー長」という、特殊言葉がごく自然に出てくるところに、いかに被害者の情報を収集、分析して、解散命令の事由になる証拠を積み上げてきたのかがわかります。
宗教法人法の第81条1項2号にも該当するとの見解に、さらに驚く
解散命令事由の説明で、宗教法人法81条1項1号「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」だけでなく、2号についても該当するとの見解が出された時、元信者として、文化庁の旧統一教会への問題の理解の深さに、驚きを禁じ得ませんでした。
1項1号は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」としており、大臣からも「旧統一教会は遅くとも昭和55年(1980年)頃から長期間にわたり、継続的に多数の方に対して、相手方の自由な意思決定に制限を加え、相手方の正常な判断が妨げられる状態で献金や物品の購入をさせて、多くの方に多額の損害を被らせて、親族を含む、多くの方々の生活の平穏を害する行為を行いました」と話しており、甚大な被害が出ていますので、こちらが該当するのは当然だと考えていました。さらに文化庁は1項2号も該当する判断を示しました。
宗教団体の目的を著しく逸脱した行為に該当する
宗教法人法の第81条1項2号前段の解散事由には「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」とあります。
文化庁は「宗教法人が公益法人である理由は、宗教的活動によって不特定多数者に精神的安定等を与えて、社会に貢献すると期待されていることにあります。しかし旧統一教会の行為は、財産的利得を目的として、献金の獲得や、物品販売にあたり、多くの方を不安や困惑に陥れて、その親族を含む、多くの方々に財産的、精神的犠牲を余儀なくさせ、生活の平穏を害するものでした。従って、これらの行為は、宗教法人の目的を著しく逸脱するものであり、宗教法人法81条1項2号に定める、解散命令事由に該当する」としています。
また、信者に対して信者の良心よりも、宗教法人の利益を図ることを優先し、その命令の善悪、法適合性や道徳的観点からの判断を禁止するような指導がみられることも指摘して、旧統一教会の利益を優先することになった結果、多数の信者が献金などの行為を実践したと考えられ、その結果、多数の財産的被害が発生したとしています。
多くの被害者、元1世信者、元2世信者の声が届いた
まさにこれは、被害者、元1世信者、元2世信者の声が届いた結果であると思いました。
これまで、被害者や内部の実情を知る元信者らは「本来宗教とは、人生や生活、家族関係などに悩む人の心を救うといった行為をすべきはずなのに、他人の悩みに付けこむようにして、裁判所が不法行為と認めるような勧誘活動や献金行為をしてきた。これは、公益性を持つ宗教団体としてあるまじき姿ではないか」と訴えてきました。この点にも文化庁は踏み込んだわけで、非常に納得できるものです。
盛山文科大臣、文化庁担当者からの、解散命令請求の事由に該当するという話を聞きながら、元信者としても重要だと考えることが網羅されており、非常に胸が熱くなる思いがしました。
これは被害者をうけた人たちが、過去の辛い体験などを乗り越えて声を上げてくれた結果であるとともに、弁護士らが教団からの徹底した攻撃にも負けずに、被害者救済に取り組んでくれたことが大きな力になっています。
しかし何よりまったく動かなかった国を解散命令請求へと突き動かしたのは、甚大な被害を生み出してきた旧統一教会の行為に対して、許してはいけないという思いを持つ、国民の声だと思います。
本日(13日)、文部科学省は、東京地裁に対し旧統一教会の解散命令の請求をしました。
教団の長年の不法行為の数々を国が認めて、被害者をこれ以上生まないための大事な一歩が踏み出せたことに、改めて多くの方に感謝をしたいと思います。