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「その119番、本当に緊急ですか?」 全国各地で救急医療が危機的状況

倉原優呼吸器内科医
(写真:イメージマート)

全国各地で救急医療が記録的逼迫に陥っています。急病や事故などで救急車を要請しても、なかなか到着しない・搬送されないという事態が多数発生しており、もはや「社会全体で救急医療を守るべき段階」に来ています。

第7波の逼迫水準が迫る

総務省消防庁によると、12月12日~18日の1週間の救急搬送困難事案が、新型コロナ第7波以来の6,000件超えに到達したとのことです(1)。

東京消防庁から、救急車の出動率が95%を超えていると報告されています。非常編成の救急車を加えて運用しているものの、到着するまでかなり時間がかかる事案もあるようです。

東京都における、救急隊による5つの医療機関への受入要請または選定開始から20分以上経過しても搬送先が決定しない事案、すなわち「東京ルール」は12月18日に300件を超えており、もっとも逼迫した第7波の水準がすぐそこまで迫っています(図1)。

図1. 12月20日時点の東京ルール(参考資料2をもとに筆者作成)
図1. 12月20日時点の東京ルール(参考資料2をもとに筆者作成)

令和3年度における救急搬送例の約半数が軽症であることから、東京消防庁は「その119、本当に緊急ですか?」というウェブサイトで、「コロナ禍で大変な今こそ救急車の適正使用に協力をお願いします」と啓発しています。

社会全体で救急医療を守るべき段階

もちろん、緊急性が高いと思って救急車を呼んでいるわけなので、要請のすべてが適切でないとは思いません。ただ、病院に行く手段がないなどの理由で救急車を呼んでしまう高齢者も少なくありません。

時間的余裕がありそうで、救急車を呼ぶか迷ったときには、東京都が公開している救急受診ガイドや、自治体の所定の相談窓口、「救急安心センター(#7119)」、「子ども医療電話相談(#8000)」(厚生労働省サイトはこちら)などの活用を検討してください(図2)。

図2. 「救急安心センター」と「子ども医療電話相談」(筆者作成)
図2. 「救急安心センター」と「子ども医療電話相談」(筆者作成)

地域によっては「#7119」もなかなか対応できないことがあり、国民一人ひとりが本当に必要な人へ医療をつなぐ意識が必要です。「社会全体で救急医療を守るべき段階」に来ています。

まとめ

今後さらに救急医療が逼迫すると、複数の自治体から「医療非常事態宣言」が発出されるかもしれません。

帰省や旅行の自粛要請までは行わないとしても、自治体ごとに追加の対策が講じられる可能性があります。

年末年始は人と会う機会が増えるため、さらなる感染拡大が懸念されます。基本的な感染対策だけでなく、新型コロナワクチンは国・地域レベルで有効な武器の1つなので、接種を検討ください。

(参考)

(1) 各消防本部からの救急搬送困難事案に係る状況調査(抽出)の結果(R4.12/12(月)~R4.12/18(日)分)(URL:https://www.fdma.go.jp/disaster/coronavirus/items/coronavirus_kekka.pdf

(2) 救急医療の東京ルールの適用件数(URL:https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/cards/number-of-tokyo-rules-applied/

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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