北朝鮮「韓流見たら厳罰」は本当だった! 　衝撃の公開裁判動画が公開される　韓国ではどう見た？

ライター

1/24(水) 10:30

19日、韓国の統一問題研究シンクタンク「SAND南北コリア研究所」が北朝鮮内部の衝撃的動画を公開し、大きな話題となっている。韓国内の「KBS」「SBS」ほか主要メディアが報じ、さらにイギリスBBC、日本のTBSなどが報じた。

「首都であらゆる反社会主義、非社会主義現象を一掃するための闘争をさらに強化しよう」

というタイトルの北朝鮮内部の映像資料。

朝鮮中央テレビのニュース映像などではなく、内部向けの思想系の教育映像である点に価値がある。同研究所が独自ルートから入手した。

北朝鮮当局が2020年12月に制定した「反動思想文化排斥法」の実施過程で摘発された事例を集めている。2022年に撮影されたと推測される動画を基に、「平壌で韓国の音楽や映像物を秘密裏に閲覧したらどうなるのか」が、恐怖系のBGMや威圧するようなナレーションとともに示されたものだ。

動画では見せしめとばかりに、韓国の音楽を広場で流した中学生に「12年労働教化刑」、また平壌で「傀儡（韓国）のイントネーションを真似る由々しき事態」などが起きていると指摘。また後半部分では、膝下のズボンとサンダル姿の女性を「精神状態が心配」「首都平壌にふさわしくない」などと批判している。

韓国メディア「北での韓国文化の浸透が急速に進んでいる」　

韓国では10年以上前から「中朝国境地帯などから韓流コンテンツが北朝鮮に流入している」という話はつとに有名。こっそりと見た人が処罰されるという話も間接的に伝えられてきた。今回の映像は改めて処罰される姿が本当だった、という点を示している。

この映像を韓国メディアはどう報じたのか。JTBCの公式YouTubeチャンネルでは75万回再生を記録。以下のタイトルでニュース動画が掲載された。

「こうしたらダメなんですか？　反論する北朝鮮MZ世代　vs 南朝鮮の傀儡文化に染まった…　韓国のドラマを見た10代のふたりが重労働刑」

シンプルに元動画を編集し、字幕をつけた内容だ。コメント欄には韓国の視聴者からのこういった意見が寄せられている。

「この時代にこんな国が存在する事実に胸が痛むし、驚く」

「どんなに苦しくても、大韓民国に生まれたことが幸運でもあると思う」

「どんなに強い規制も人間の自由意志と文化は防ぐことができない」

いっぽう、SBSのアカウントでは10万回の再生を記録。「『韓国ドラマを見た罪』で12年の刑を科した北朝鮮の金正恩政権が本当に恐れているものとは？」という題目のニュース動画だ。

何を恐れているのか。

このニュース動画では、冒頭で今月15日に平壌の万寿台議事堂で行われた最高人民会議での金正恩朝鮮労働党総書記の演説の様子を伝えた。「大韓民国（テハンミングック）」という言葉を直接口にした異例の事態が起きたのだ。さらに「主敵」「（韓国との）戦争の準備がある」という金委員長のコメントも。

キャスターがこうまとめた。

「『戦争を仕掛ける』と先に宣言することは実際の戦争では不利になる。これが分かっているはずなのにそういうことをするのは、金正恩が焦っているからではないか」

この背景に「北朝鮮での韓流コンテンツ（音楽・ドラマ・映画）」の急速な浸透がある、との見立てをしている。

その証として近年北朝鮮で「反動思想文化排撃法」「平壌文化語保護法」が制定されていることを挙げている。

前者はアメリカ・韓国・日本などの映画や歌、絵などを見たり、保管したり流入・流布する行為を行った人たちを厳しい罰に処する法律と記している。日本のコンテンツも禁止の対象なのだ。

このニュース動画に対して、韓国のユーザーからこういったコメントが入った。

「あちらがそうすればするほど、外来文化を広めていこう」

「北朝鮮の新生代たちの心が（韓国に対して）開かれていることにとても感謝します。一日も早くひとつになって再び立ち上がってほしいです。金正恩には未来がありません。韓国とともに経済大国、軍事大国になる道は厳しいですが、決して不可能ではありません。共に夢を見ましょう」

「時代が変わってるのに一体何してるの？　あきれる」

「ドラマを観るのが罪だなんて‥」

韓国の一般ユーザーの反応は「心からの同情」と「あきれた」というもの、半々というところだ。いっぽう「KBS」は関連ニュースを「銃より強い韓流ドラマ　北朝鮮のMZ世代にとって韓国とは？」という見出しで報じた。

今回の「内部動画スクープ」の張本人、SAND南北コリア研究所所長のチェ・ギョンヒ氏（東京大学博士）はこうコメントしている。

「韓国の文化は北朝鮮の住民にとって共感しやすい文化。それに憧れ、韓国の文化が北の人たちの深くに内在していくことは、金正恩の権威が相対的に下がらざるを得なくなります。北の住民たちから認められなくなっていくということです」

（了）