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近づく最接近 深夜に光り輝く半端ない存在感の赤い星は?

縣秀彦自然科学研究機構 国立天文台 准教授
今年の地球・火星の位置関係と火星の大きさ(提供:国立天文台天文情報センター)

この夏、火星が大接近

今年、注目の天体ショーといえば、火星大接近。15年ぶりの大接近です。最接近は7月31日。梅雨明けの晴れた晩は、深夜、赤く輝く火星を眺めてみましょう。

火星も地球も太陽のまわりを公転する太陽系の惑星です。地球は約2年2カ月ごとに地球の外側を公転している火星を追い越し、その際に地球と火星は最接近します。惑星の軌道、特に火星の軌道は少しつぶれた楕円形のため、接近の度合いは「小接近」、「中接近」、「大接近」に便宜上分けることが出来ます(ただ、その差に厳密な定義はありません)。今回は2003年以来の15年ぶりの大接近です。

提供:国立天文台天文情報センター
提供:国立天文台天文情報センター

2003年には火星と地球は5576万kmまで近づき、6万年ぶりの大接近と話題になりました。今回の最接近時(7月31日)の距離は5759万km、そして次回の接近(2020年)では6207万kmに近づきます。今回の大接近に近い次の大接近は、2035年9月の5691万kmです。

参照: 国立天文台 火星最接近一覧

西南戦争の末に西郷隆盛が自決した1877(明治10)年。火星はちょうど大接近(5630万km)となる年で、怪しげに赤く輝く火星を、当時の人々は「西郷星」と呼び、火星の表面に西郷の姿が見えるといううわさが絶えなかったといいます。

この大接近時に、イタリアでは天文学者スキャパレリが、直線状の構造が複数描かれた火星スケッチを残し、この構造をスキャパレリはイタリア語で水路を意味するcanaleと表現しましたが、運河canalと英語に誤訳されて伝えられ、米国のパーシバル・ローエルは火星に運河を建設するぐらいの高等な生物が住んでいると信じ込んでしまいました。今回はその時とほぼ同じぐらい火星は大接近するのです。

南の空、火星を探してみましょう(提供:国立天文台天文情報センター)
南の空、火星を探してみましょう(提供:国立天文台天文情報センター)

今回の大接近では、7月から9月頃までが観察しやすい時期です。見晴らしのよい場所で、南の方角を確認、低い位置に見える明るい4つの星を探しましょう。最も東(左)寄りの赤い星が火星、そして東から土星(黄)、さそり座のアンタレス(赤)、木星(白)です。

アンタレスはさそりの心臓の位置で赤く輝く恒星です。アンチ・アレース(火星に対抗するもの)がその名の由来とのこと。アレースは、ギリシャ語で火星や軍神を意味します(1等級)。

火星は、最接近時に-2.8等星に。毎週晴れたら見てみると、火星が星空の中を動いていく様子が分かります。今晩(7月10日)、すでに-2.4等の明るい輝きなので、夜10時過ぎに夜空を見上げるとすぐにその圧倒的な存在に気付かれることでしょう。

大接近の際の火星の視直径の変化(2003年) (提供:国立天文台天文情報センター)
大接近の際の火星の視直径の変化(2003年) (提供:国立天文台天文情報センター)

火星は寒い砂漠の星

太陽系の8惑星のうち、最も地球に環境が似ているといわれるのが火星です。今のところ、生命は見つかっていませんが、その可能性は否定されていません。ただし、これまでの探査の結果、火星人のような知的生命体は存在しないと結論づけられています。

観測条件が良い場合、地球から天体望遠鏡で火星を見ると、次のような特徴が分かります。

極冠 :白い部分。水の氷や二酸化炭素の氷(ドライアイス)などでできている。

赤茶けた表面:酸化鉄(赤さび) 表面の岩石や砂に多く含まれている。このせいで赤く見える。

ダストストーム(砂嵐)で表面の模様が見なくなることもしばしば。

大シルチス:逆三角形で、最も目立つ模様 黒い模様は凹凸のある地形部分。

2003年大接近時の火星 (国立天文台提供)
2003年大接近時の火星 (国立天文台提供)

梅雨明けが例年より早まった今年の夏。見ごたえのある火星観望も長い期間楽しめそうです。今から夏休みの計画の一つに加えてはいかがでしょう。

今回の火星大接近の詳しい解説は、国立天文台ほしぞら情報 火星が地球に最接近(2018年7月) をご覧ください。

また、火星についての詳しい解説は、日本天文学会インターネット版「天文学辞典」火星をご参照ください。

自然科学研究機構 国立天文台 准教授

1961年長野県大町市八坂生まれ(現在、信濃大町観光大使)。NHK高校講座、ラジオ深夜便にレギュラー出演中。国際天文学連合(IAU)国際普及室所属。国立天文台で天文教育と天文学の普及活動を担当。専門は天文教育(教育学博士)。「科学を文化に」、「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。

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