普及台数は1.016台…自家用乗用車の世帯あたりの普及台数をさぐる(2024年版)
移動の道具として広く普及している自動車。家庭用はどこまで浸透しているのか。自家用乗用車(登録車と軽自動車。タクシーなどの事業用は除く)の世帯あたり普及台数の実情と推移を、財団法人自動車検査登録情報協会の公開資料から確認する。
次に示すのは公開されている値をすべて抽出し、グラフに収めたもの。世帯数は総務省が発表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態および世帯数」を参考にしている。
1975年以降自家用車の保有台数(総数)、世帯あたり普及台数、双方とも増加している。ところが1990年前後からは世帯あたり普及台数のカーブがやや急なものになる。バブル時代の旺盛な出費傾向の後押しで、自動車の購入意欲が増したものと考えられる。その後1996年にははじめて世帯あたり普及台数が1.00(言葉通り「一家に一台」)に。その後は景気後退局面もあり、保有台数・世帯あたり普及台数の伸び方は鈍化していく。
注目すべきは世紀の切り替わり、2001年前後以降の動き。保有台数・世帯あたり普及台数の伸びの鈍化は著しく、特に世帯あたり普及台数は2007年に初めて前年比マイナスを記録する。ところが2012年から2013年においては保有台数が前年比で大きく増加し、核家族化・一人暮らし世帯の増加による世帯数増加を超え、結果として世帯あたり普及台数はわずかながらも増加する結果となっている。
2007年からの減少傾向から転じ、その後数年間再び世帯あたり普及台数が上昇への動きを見せたのは「エコカー補助金効果による新車販売の好調さ」「世帯数伸び率の鈍化」(東日本大震災を直接・間接的要因とするものも含む)によるところが大きい。また2013年に限れば、景気回復感に伴う購買意欲の向上も一因だろう。
2014年以降の世帯あたり普及台数の減少は、世帯数の増加によるところが大きい。ここ数年前年比で1%未満にとどまっていた世帯数増加率が、2014年は2.49%と大幅に増加。一方で保有台数は1.18%の増加にとどまり(これでも前年の1.08%と比べれば上乗せされている)、結果として世帯あたり普及台数が減少したことになる。世帯数は総務省が発表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態および世帯数」が基だが、2014年から総務省側の発表において調査期日が従来の3月末から1月1日に変更されたこともあり、それが一因だと思われる。
直近の2024年では保有台数は前年比で1万8599台の増加(プラス0.03%)を示した一方で、世帯数は51万2823世帯の増加(プラス0.85%)を示す。結果として世帯あたり普及台数は減少する形となった。
世帯内構成人数の減少に伴う自家用乗用車の需要は(主に必要性が低い都心部で)低下している。実際、直近年となる2024年において、世帯あたり台数が1台未満の地域は北海道、千葉県、埼玉県、兵庫県、京都府、神奈川県、大阪府、東京都となっている。
短期的には世帯あたり保有台数・世帯あたり普及台数ともに漸増する機会があるかもしれないが、中期的には横ばい、さらには漸減の可能性は多分にあるものと考えられる。また、世帯構成人数の減少に伴い、軽自動車の比率はさらに高まるに違いない。
■関連記事:
【続・自動車は手が届きにくい存在になっているのか…可処分所得と自動車価格の関係(2023年公開版)】
(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。