ひきこもりを英語で表現するとhikikomori
本日、学生からインタビューを受けているときに、何となく話題になったのだが、「ひきこもり」を英語で表現するとどうなるのか。
「hikikomori」である。
それまでは、"social withdrawal"と訳されているのを目にしたのだが、どうも米国ではこの言葉をあまり聞かないらしく、「ひきこもり」という”状態”を示す表現を英訳したものではないかと、米国の取材クルーの方に言われたことがある。心理学や精神医学など専門領域では違うのかもしれないが。
一時、日本でも話題になったが、2010年の夏に、イギリスの辞書 Oxford Dictionary of Englishにおいて、「hikikomori」という単語がそのまま掲載されたことがマニアックな業界内で話題になった。
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Definition of hikikomori in English
noun (plural same)
[mass noun]
(in Japan) the abnormal avoidance of social contact, typically by adolescent males.
[count noun]a person who avoids social contact.
Origin:Japanese, literally'staying indoors, (social) withdrawal'
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日本語にすると、「社会との接点を極端(異常なほど)に避けることで、通常は思春期の男性に起こる」といった意味になる。なお、このhikikomoriの語源を持つ日本では、定義が確定されているわけではなく、以下のようなものが主に活用されている。
「さまざまな要因によって社会的な参加の場面がせばまり、就労や就学などの自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態」
・厚生労働科学研究「思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究」
「さまざまな要因の結果として、社会的参加(義務教育を含む、就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交友など)を回避し、原則的には6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態。(他者と関わらない形での外出をしている場合も含む)
・精神科医斎藤環氏「社会的ひきこもり―終わらない思春期(PHP新書)」
「20代後半までに問題化し、6ヶ月以上、自宅にひきこもって社会参加しない状態が持続しており、ほかの精神障害がその第一の原因とは考えにくいもの」
日本ではいまだ「ひきこもり」の定義で、社会的に合意/確定されたものは見られていないものの、その「状態」を指し示す言葉は海を渡り、少なくとも英国に渡った。
ひきこもり(状態/現象)とは何か。ひきこもる、ということはどういうことなのかは、さまざまな専門家や研究者が調査研究を行っている。ネットで調べるだけでたくさんの文献を見つけられるほど、日本ではメジャーな”状態を示す言葉”となった。それでもなお、状態を示すだけのこの言葉は、「ひきこもり」という人間像があるかのごとく定着している。
こちらは定義ではないが、斎藤環氏は「社会的ひきこもりは診断名ではない。これを臨床単位とみなすことは出来ない。それは不登校が臨床単位ではないのとほぼ同じ理由からである。それは一つの状態像であり、問題群である。」と話している。
そもそも「ひきこもり(状態)」は”(社会)問題なのか”というテーマは、マニアックな業界にも根強く残り、各スタンスによって、ひきこもり(状態)に対するアプローチが異なっている。ただし、そのマニアックな領域がさらに細分化し、大きなビジョンすら立たない状況が続いている。
「ひきこもり(状態)」にあり、かつ、その(状態)を変えたいと願う個人が、独力ではなく第三者機関を活用したいとき、いまの状況は必ずしも困っているひとのためにはなっていないということであり、「ひきこもり(状態)」の個人が多数いることを社会的な問題と捉え、理解者や協力者を増やしたいと望むことすら期待しづらい状況である。
今後、(社会的)ひきこもりという言葉はどこに向かうのだろうか。
一般社団法人officeドーナツトーク代表の田中俊英さんはこんなことを書かれている。
※「ひきこもり」の定義を追っていくと、あることに気がつく。定義使用者が自ら設定しない限りにおいて「年齢」が記されていないのだ。つまり、上記の定義に併せて考えた場合、過疎地域や外出が難しい高齢者が入る可能性が出てくる。状態像を示す言葉なので当然かもしれないが、「ひきこもりの中高年化」という言葉の前提には、ひきこもり=若者の問題、があることになるが、そもそも定義としては年齢を限定していない。