あなたの会社に「会社の妖精さん」はいますか?
「会社の妖精さん」って、不思議な響きですね。この言葉を聞いて、あなたはどんな存在を思い浮かべますか?
社員の皆から愛されているキュートで小悪魔のような女性社員でしょうか?それとも、実は会社の命運を握っているコロボックルのような小さな神さま?
実は、「会社の妖精さん」とは、定年間近のシニア社員のことを指した言葉なのです。朝は、きっちり出社するのだけども、いつの間にか席を離れ、気がつくと会社からいなくなってしまう。そんなシニア社員の存在を揶揄して名付けられたのが、「会社の妖精さん」というニックネームです。
このネーミングは、11月12日の朝日新聞「老後レス時代 エイジングニッポン」で紹介されていたものです。大手メーカーの若手社員が、同僚の50代社員を指して名付けたものです。
彼は、若い頃は、海外の工場移転や新機械導入で活躍していたものの、50歳を過ぎて事務部門に配置転換。かつては必要なかったPCの操作に苦慮し、「ひとさし指の一本指打法」を駆使する。しかし、「エア残業」も疑われている悲しい定年間近の社員なのです。
若手社員からすれば、彼の存在は、「仕事へのやる気もなく、ただ定年を待つだけに見える。会社は解雇もできず、他に移すポジションもない。若手はストレスがたまる」ものになっています。
もしかすると、大手企業では、こういった扱いを受けているシニア社員は少なからずいるのではないでしょうか?これは、本人にとっても不幸なことですし、同時に若手社員の士気をも下げてしまうことにもなりかねません。いずれにしても会社にとって由々しき問題でしょう。
近年このような社員が増加していることにはいくつかの理由が考えられます。ひとつは急激な社会構造の変化や就労環境変化の影響です。そうした環境の変化になかなかついて行けないシニア社員が増えているのです。
それに加え、定年後の再雇用社員の増加も影響を及ぼしているものと考えられます。改正高齢者雇用法の影響もあり、60代以上の就労率は、近年上昇傾向にあります。2018年時点での60〜64歳の就労率は81.8%(男性)、56.8%(女性)であり、総就業者数に占める高齢就業者の割合も2018年で12.9%とこれも上昇傾向にあります。(労働力調査)
一般的には、現在シニア社員の存在は会社にとってどちらかと言えばお荷物な存在として受け止められています。会社のヒエラルキー構造を保つためには、中高年社員はむしろじゃま。そのために企業は早期退職制度の導入などを行い、企業年齢の若返りを図ろうとしました。
しかし、日本は既に人口減少社会となっています。中高年齢人材の労働生産性をいかに高めるかという視点を持たずして、「会社の妖精さん」の存在を放置しておけば、早晩企業全体の生産性も失われていくことになってしまうでしょう。
そうならないためにも、今後重要となってくるのが「中高年社員の学び直し」です。かつてOJTにより多くのスキルを磨いてきた中高年社員ですが、第4次産業革命が進行するとも言われる昨今、かつて得たスキルは錆び付いてしまっているものも数多くあるでしょう。人生100年時代が唱えられる昨今、そのための意識改革と実践が、会社、本人ともに求められる時代になってきたと言えるでしょう。