「平均寿命」の誤解と「平均余命」を確認する(2023年公開版)
厚生労働省から2023年7月に発表された2022年分の簡易生命表には、日本における平均寿命などが掲載されていた。その平均寿命そのものの定義と、平均余命について確認を行う。
次に掲載するのは、公開値を基にした平均寿命の推移。戦前は調査そのものが非定期、戦中は行われていなかったこともあり、グラフ上で直線となってしまう部分がいくつか生じている。また分かりやすいように、節目となる動きの部分に説明の吹き出しを加えている。
一番古いデータの1891~1898年では男性42.80年・女性44.30年。織田信長によるものが有名な、敦盛の一節「人間五十年」よりも短い。
以後、少しずつ近代化とともに上昇を見せるが、1921~1925年には大幅に減少してしまう。これは1918年から世界的に大流行したスペイン風邪、そして1923年に発生した関東大震災の影響を受けてのもの。以後、各方面の努力もあったが、戦前は緑の薄い破線で記した「50年ライン」を超すことはかなわなかった。そして戦後初となる1947年調査で、初めて男女とも平均寿命が50年を超えている。
戦後しばらくにおいては社会情勢・健康・食料事情の安定化、さらには「戦死」要素が事実上無くなったこともあり、大きな上昇傾向が見られる。しかし1950年代後半からは上昇傾向が緩やかになり、その流れのまま上昇している。
なお2011年ではやや大きな下落変動が確認できる。これは2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴うものである。戦前の関東大震災、戦後では1995年に発生した阪神淡路大震災でも似たような動きが確認できるが、大規模な自然災害は国全体の平均寿命にすら、明らかな影響を及ぼす事例といえる。2021年から2022年でも下落が起きているが、これは新型コロナウイルスの流行によるところが大きい。
そして本題となる「平均寿命」の定義について。「平均寿命」とは「各年における0歳児の平均余命」を指す。例えば2022年の女性の平均寿命は87.09年なので、「2022年に生まれた女性は、社会情勢などの大きな変化がない限り、平均的に87.09年生きられる」ことを意味する。「2022年時点で亡くなった女性の平均年齢が87.09歳」ではない。また「2022年時点で87歳の女性は、普通ならばこの1年間に亡くなってしまうだろう」との意味でもない。
サンプルとして2022年時点の、高齢者における平均余命(2022年時点でその歳において、平均的にあと何年生きられるか)をグラフ化する。
2022年の時点で80歳の女性は、今後さらに平均で12年近く生き続ける試算ができる。くれぐれもお間違えなきように。
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