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日本代表・稲垣啓太、スーパーラグビーからワールドカップへの道「能力に自信」【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
昨年11月8日のマオリ・オールブラックス戦時の稲垣。テーマは「初速の一歩」。(写真:伊藤真吾/アフロスポーツ)

日本代表の稲垣啓太が南半球最高峰であるスーパーラグビーでの挑戦1年目のシーズンを終え、帰国した。

新潟工業高校時代から大型プロップとして注目された稲垣は、関東学院大学のキャプテンを務めていた頃は関東大学リーグ戦の2部降格も、2013年度にパナソニック入り後は才能が開花した。大男が8対8でぶつかり合うスクラムを最前列左で組むなど、強さと重さが求められる左プロップを務めながら、豊富な運動量と知性を長所として台頭。国内最高峰のトップリーグではチーム最多の148回ものタックル数を記録し、優勝と新人賞獲得に喜んだ。翌14年には日本代表に初選出された。

今季はレベルズの一員として日本人プロップとしては初めてスーパーラグビーに挑戦。ジャパンの一員としては、いまも今秋のワールドカップイングランド大会を見据える。パナソニックのチームメイトでもある田中史朗からは「(スーパーラグビーのデビューは自信になると思う。日本のチームではリーダーになれる)」と評された。16年度からは、スーパーラグビーで日本拠点のチームが発足する。新チームからオファーを受け取る代表選手は多く、稲垣の進路にも注目が集まっている。

以下、一問一答(後半。前半はこちら)。

――来季のスーパーラグビー。どうなりますか。

「それは、僕の進退の話ですか? いくつかオファーはもらっていますけど、まだ決めていないですね。早ければ早いほど(オファーを出している)チームにとってはいいのでしょうけど、ワールドカップはワールドカップで専念したい。まだちょっと、考える時間もあるので、ゆっくり考えたいです」

――オファー。日本のチームとレベルズからは受けていると捉えていいですね。

「(肯定も否定もせず)日本のチームの話も聞きましたけど、まだ何も決まっていない状況(本人談)。まぁ、その辺は不安ではありますけど…」

――レベルズのシーズンで「納得いかない部分もあった」という思いもある。

「自分が劣っているという感じは全然なくて、それでも1試合しか出れていない。周りからは『1試合でも出れたのはすごい』といってもらえますけど、自分でそう思ったことはなくて。スタッフには聞きました。『なぜだ』と。要は、理解度なんでしょう。能力はある自信はあるけど、能力を行使できていない。それは腹立たしいことですし、悔しくて、納得がいかないですね。(チーム選びは)条件云々というものもあるんでしょうけど、この思いを…(晴らしたい)という気持ちもある」

――理解度。戦術などを把握し切れていないのでは、と、スタッフに思われている。それを解消したいというのが、来季以降への思いでしょうか。

「1年やって、ほぼ慣れてきた。次は最初からスムーズに入って行ける。ただ、日本チームとのアレもある。気持ちを優先したいという考えはありますけど、この先のことはどうなるかわからないです。わからない、ということにしておきます」

――「自分の能力に自信がある」「自分はこんなものではない」。常々、言っていますね。いつからそう確信しましたか。辛酸をなめた大学時代も思い続けてこられたのでしょうか。

「大学の時は、『能力に自信を持っていても、それが通用しないこともあるかもしれない』という感じです。上には上がいるって、よく言うじゃないですか。ただ、それがパナソニックに入って、通用したんです。そこで道筋がついた。(学生時代のような状況下でも)自信を持つことで、いい意識で取り組めています。考え方次第(前向きな考えを持つこと)で、目指していることが明確になることもある」

――日本代表には7月6日に合流の見込み。

「向こうでは荒々しくなりました。日本人はその点、優しいのかなと思う。僕ももともとその部分を課題にしていて、エディー(ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ)にそう指摘されていましたし」

――では、荒々しさのススメ。

「髪の毛を掴んででも、首を絞めてでも(接点で絡みつく)相手をはがす、と。(スーパーラグビーの舞台では)ずっとそういう環境に身を置いていましたから」

――ワールドカップ。

「短いスパンで試合が続きますから、色んなことが想定されます。南アフリカ代表との初戦(9月19日/ブライトン)。ここで最高のパフォーマンスができるかどうか。戦術のことはまだわからないですけど、手堅くやって勝てる相手ではない。僕個人としては、極端なことをした方がいいような気がします」

――2戦目以降は。

「先のことを考えるより、目先のことです」

――自分のプレーを世界に提出する。そういうワールドカップへの期待感はありますか。

「自分の能力を世界に見てもらうチャンスだとは思っています。ただ、それよりも結果を残さないと何も意味がないという思いが強いです。だからこそ、1発目の南アフリカ代表戦でどういうパフォーマンスをするかが大事になると思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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