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日本代表エディー・ジョーンズ、対イングランド代表に大敗も「いい方向」。なぜ?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(筆者撮影)

 ラグビー日本代表は6月22日、東京・国立競技場でイングランド代表に17―52と敗れた。

 序盤にテンポのよい展開からチャンスを作るも、相手の巧みなモール防御、自軍のミスにより逸機。その後、向こうのタックル、単騎での突進に苦しんだ。

 試合後、日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチがリーチ マイケルキャプテンとともに会見。2人は何やら小声で会話をしながら入室し、マイクを持てば前向きに総括した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「まずは非常に残念な結果で悔しく思います。ただ内容を考えてみると、鑑みると、現状と目標といった意味で非常に大きな糧を得られた。

 プラスの面。イングランド代表とセットプレーで十分に競り合えた面があったこと。ジャパンとしてのステップアップです。

 アタックはいい方向に進んでいます。ただチャンスを活かしきれなかったのは今後の課題です。

 本日は8名が新しくジャパンとしてのキャップを得ました。非常に素晴らしいこと。若手の学びといった観点からも大きな糧。残念だが、エフォートは申し分ない。選手がやりたいプレースタイルを体現する姿もたくさん見られた。今後、4年間のプロジェクトのだいたい10日目だと鑑みると、非常にいい方向に行っている

 隣に座るリーチのように、ロールモデルとして自分たちのやりたいプレー、目指すことを体現してくれる選手がいることは幸運。スポンサーさんから頂いたエナジードリンクを飲んで、今後も頑張っていって欲しいです」

 戦前の世界ランクでは、イングランド代表が日本代表より7つ上の5位。昨秋のワールドカップフランス大会での直接対決時も、イングランド代表が34―12で勝っている。同大会では日本代表が予選プールで敗退したのに対しイングランド代表は3位。

 敗れた日本代表にとってこの一戦は、約9年ぶりに再登板したエディー・ジョーンズヘッドコーチ体制下にあって初陣。辞退者や負傷者の続出もあり、ワールドカップ経験者は登録メンバー23名中9名だった。

 かたやイングランド代表は、スティーブ・ボーズウィックヘッドコーチが就いて2年目。以後のニュージーランド遠征に備え、23名中14名をフランス大会組とした。

——後半に相手のペースになった。

「新しいスタイルを試みるには、どうしてもキャパシティ(許容量)という問題がつきまとう。フィジカルでもメンタルでも同様です。現状は、まだそこが追いついていない。これは決して不自然ではなく当たり前のこと。ここは試合ごとに伸びる部分です。スピードも、精度も伸びる。最初の15分はイングランド代表に圧力をかけられていた。自分たちのアタックがどういうものかを示せた。

 どうキャパシティを伸ばすか。練習あるのみ。今後もハードトレーニングを続けながらメンタル、フィジカルのキャパシティを成長させたい」

——効果的だった攻めについて。

「きょうは、次のプレーに繋げるためのセカンドマンのプレー(接点での2人目の寄り)がなかなか遂行できていなかった。それはイングランド代表のディフェンスが強固で、圧力を受けたから。その分、ダイレクトなプレー(スクラムハーフ周辺での突進)が多かった。それは選手のフィールド上の判断。うまくいっている部分もありました。今後はよりペースを上げてバラエティのあるアタックができればいいが、それは練習でプレーヤーの連携を深めれば生まれている」

——先発フロントローは3名中2人がノンキャップでしたが。

「(日本語で)素晴らしい。いま10日目で、新しいスクラム。勉強ね。(以後はおもに英語で)オーウェン・フランクスは約3週間前に選手を引退したばかり。彼らはよい関係性を構築していて、うまくいっていた局面もあった。(右プロップの)竹内柊平は今季のリーグワンで2部の試合に出ていて、(リザーブの右プロップである) 為房慶次朗は(途中加入の新人のため)先発は1度。つまり若い、それほどキャリアのない選手が、強敵のイングランド代表を相手に素晴らしい経験を積めたと言えます。まだ今回メンバー外ですが、森山(飛翔)は帝京大学の2年生。今朝6時半からジムに行って汗を流しています。成長の見込める選手がおり、それぞれ世界でベストになろうとしているので育てがいがある。

 日本はスクラムで劣勢になるという印象を持たれがちですが、きょうはパワフルなスクラムを示せた(一時反則を取られながら、高さなどを微修正して好プッシュも披露できた)。それができればラインアウトもうまくいく。いいプラットフォームができれば、それは超速ラグビーにもつながる」

 これでチームは一旦、解散。ここからメンバーを一部、入れ替え、JAPAN XV名義で6月29日、7月6日の対マオリ・オールブラックス2連戦に臨む。

「(おもに日本語で)いつも、目的は勝つこと。でも、いま、日本のラグビーは、選手層が薄い。リーグワンでプレーする日本人は全体の約53パーセント。少ない! 次のレベルの選手を育成しなくてはならない。マオリ戦の目的は勝つこと。そして、控えの選手、成長します。2027年のワールドカップオーストラリア大会までには、各ポジションでタレントのある選手が3人ずつ。それが、トップ4になるには必要不可欠です」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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