活況呈す音楽ストリーミング、アマゾンも単体サービス準備中
海外の通信社やメディアの報道によると、米アマゾン・ドットコムは、米アップルや英スポティファイが提供しているような、月額制の音楽ストリーミングサービスを立ち上げるべく、現在その準備を進めているという。
3カ月後にも新サービス開始か
この話題を最初に伝えた英ロイター通信によると、その料金は1カ月9.99ドルと、競合大手と同じになる見通し。
アマゾンはこの新サービスを今年の夏の終わり頃か秋口にも始める予定で、現在レコードレーベルと楽曲配信に必要なライセンス契約をまとめている段階だと、ロイター通信は伝えている。
そしてこれにより同社は、デジタルコンテンツやeコマースのワンストップ・ショップを目指すのだという。そうした目的のもと、包括的な音楽サービスは同社にとって不可欠だと米メディアのザ・バージなどが伝えている。
同社は現在、有料の会員制プログラム「プライム(Prime)」の特典の1つとして、「Prime Music」と呼ぶ追加料金なしの聴き放題音楽ストリーミング配信サービスを提供している。だが新サービスはこれとは異なり、完全な単体サービスになるのだという。
というのも現在Prime Musicで配信している楽曲の数は約100万曲。これに対しアップルやスポティファイの楽曲数は3000万曲以上と大きな差がある。
アマゾンの新サービスはこれらライバルのサービスに直接対抗するものになると、ロイター通信は伝えている。
また新サービスは、アマゾンが現在米国で販売している音声アシスタント機器「Echo(エコー)」のサービス拡充を自前で行うことにもつながると指摘されている。
このEchoは、アマゾンの音声アシスタントサービス「Alexa(アレクサ)」を利用できるスピーカー型機器。ニュースを流したり、情報を調べたりと様々なことができるが、Prime Musicやスポティファイの音楽サービスも利用できる。
ところが前述のとおりPrime Musicとスポティファイではその配信楽曲数に大きな開きがある。
つまりアマゾンは現在、スポティファイなどのライバルに大きく依存しながら、自社機器で提供する音楽配信サービスの拡充を図っていると、ザ・バージの記事は伝えている。
Primeプログラムの拡大
一方で、アマゾンの新たな音楽サービスは、Primeプログラムの販促に向けた取り組みとも伝えられている。同社は今年4月、米国で提供しているPrimeに、新たな料金プランを追加した。
Primeの同国における料金プランはそれまで、年額99ドルの1つだけだったが、これに月額10.99ドルのプランを設け、併せて映画やテレビドラマが見放題になる「Primeビデオ」のみが利用できる月額8.99ドルのプランも用意した。
これにより、Primeは合計3つの料金プランが設けられたが、今回の報道が正しければ、今後はこれに音楽専用のPrimeが加わり、消費者の選択肢が広がることになる。
こうして同社が単体サービスを設けるのは、デジタルコンテンツの提供企業としてライバルに真っ向から対抗する狙いがあるからだと言われている。
例えばビデオストリーミング配信サービスの市場ではPrimeビデオのみが利用できる月額プランで、米ネットフリックス(Netflix)や米フールー(Hulu)などのライバルに対抗した。
米音楽販売、ストリーミングが最大シェアに
先頃、全米レコード協会(RIAA)がまとめた統計によると、昨年1年間における同国の音楽販売の形態別売上高シェアは、ストリーミングサービスが34.3%を占め、これにダウンロード販売の34.0%、物理メディア販売の28.8%と続いた。
ストリーミングサービスの売上高がほかの販売形態の売上高を上回り、同時に最大シェアとなったのは初めてのこと。これは、消費者の音楽の楽しみ方に大きな変化が表れていることを示していると言われている。
アマゾンがこの分野のサービス拡充を図る背景には、こうした消費者の嗜好の変化もあるようだ。
(JBpress:2016年6月14日号に掲載/原題「アマゾン、今度は音楽配信でライバルと直接対決か アップルやスポティファイと競合するサービスを準備中」)