なぜバルサはオーバメヤン獲得を決めたのか?シャビの算段と補強の矛盾...拭えない迷走感。
フットボールの世界で、補強が重要なのは、言うまでもない。
バルセロナは今冬の移籍市場で活発な動きを見せた。ダニ・アウベス、フェラン・トーレス、アダマ・トラオレの獲得を決め、さらにマーケット最終日にピエール=エメリク・オーバメヤンを確保した。
すでにメディカルチェックを終えたとされるオーバメヤンに関しては、あとはバルセロナからの公式発表を待つだけだ。
■補強の重要性
無論、補強は重要だ。だがバルセロナのそれは、疑問符が付く類のものとなっている。
アンス・ファティの負傷、ウスマン・デンベレの契約延長問題で、前線の枚数は減った。それでも、ルーク・デ・ヨング、メンフィス・デパイ、マルティン・ブライスワイトがいる。加えて、フェラン・ジュグラ、エズ・アブデ、イリアス・アコマックといったカンテラーノが出てきている。
ここに、フェラン・トーレス、アダマ、オーバメヤンが加わる。一方で、冬の新加入選手については、ヨーロッパリーグで登録できるのは3名のみ。計画的な補強だと見るのは難しい。
「バルサは最高の時期を迎えている選手を獲得する。そして、『今だ』と思うタイミングがくるまで、その選手を売ることはない」
これはかつてチキ・ベギリスタインが残した言葉だ。当時のバルセロナは、ベギリスタインが補強を担当して、ペップ・グアルディオラ監督が指揮を執るというバランスで成り立っていた。現在、この2人がタッグを組むマンチェスター・シティが強いのは、決して偶然ではない。
ペップとべギリスタインがフォーカスしていたのは、カンテラと補強をミックスさせたチームビルディングだ。リオネル・メッシ、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケッツという自家栽培のタレントに、ティエリ・アンリ、ダビド・ビジャ、アレクシス・サンチェス、ハビエル・マスチェラーノといった補強選手を加えるという手法だった。
あの頃のバルセロナにおいても、補強の失敗はあった。ズラタン・イブラヒモビッチ、ディミトロ・チグリンスキ、適応できずにバルセロナを去った選手は存在する。だが、確固たるフィロソフィーが揺らぐことはなかった。
■カンテラーノの成長に蓋する可能性
オーバメヤンの獲得自体が悪いわけではない。だが、32歳のストライカーの到着で、カンテラーノの成長が蓋をされてしまえば、問題だ。
また、オーバメヤンは規律違反を理由にミケル・アルテタ監督の信頼を失い、アーセナルでキャプテンマークを剥奪され、出場機会を失った。バルセロナで規範の問題を抱え、最終的には契約延長を行わず売却候補にされたデンベレの代役として、オーバメヤンをチョイスするところには矛盾がある。
「多くの人が携わってきたロングスパンの仕事の成果だ。彼らは5年から6年にわたり(コーチやスタッフの)言葉を聞いて、成長してきた。それは我々の大きな価値であり、小さな宝石だ」とはバルセロナ時代のグアルディオラ監督の言葉である。
「7人から8人のセカンドチームの選手を組み込んで、良いパフォーマンスをするののは簡単ではない」
「全員が参加してきた。それは大きな誇りだ。これまでの仕事が証明されていると思う。こういったところに、気を配らなければいけない。いま、クラブは若い選手たちの契約更新に動いている。彼らが大きなプロジェクトの一部だと理解しているからだ」
これはグアルディオラ監督の言葉だ。
バルセロナはオーバメヤンの獲得を決めた。アーセナルとの契約解除を行ったオーバメヤンに関しては、移籍市場最終日までに全てを完了させる必要がなかった。
一方で、バルセロナはイニャキ・ペーニャがレンタルでガラタサライに移籍している。デンベレの売却とオーバメヤンの獲得が騒がれる中、ひっそりとカンテラーノが一人チームからいなくなった。どちらに焦点を当てるかーーそこが定まらない限り、復権は望めない。