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ハリケーン・ローラ、ルイジアナ州史上最強「カテゴリー4」で上陸

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
アメリカ南部に接近するハリケーン「ローラ」(出典: NASA)

「茨にトゲあり」と言いますが、美しい名前のハリケーンには注意が必要です。現地時間27日(木)未明、日本時間同日14時頃、ハリケーン「ローラ」が、ルイジアナ州南西部に州の観測史上最強の勢力で上陸しました。

ローラの上陸時の勢力は、中心気圧938hPa、最大風速(1分平均)67m/sの、ハリケーンの強さとしては上から2番目に強い「カテゴリー4」でした。

ルイジアナ州最強での上陸

2005年に同州を直撃し、1,800人の死者を出した「カトリーナ」の上陸時の最大風速は55m/sでした。つまりローラはカトリーナを上回る強さとなりました。

これまでにルイジアナ州に上陸した最強ハリケーンは、最大風速67m/sの1856年のハリケーンです。つまり、ローラはこれと並ぶ、州の観測史上もっとも強い勢力での上陸となったのです。

「生存不可能な高潮」

上陸後もしばらくは危険な高潮が続きます。

気象局は「生存不可能な高潮(Unsurvivable storm surge)」という、聞いたことのないような形容詞を用いてその怖さを警告しています。予想される潮位は最大6メートルに達します。これに高波が加わるのです。

さらに恐ろしいことに、ルイジアナ州の海岸線は、そのほとんどが3メートル以下で、場所によっては海抜ゼロメートル以下の地域もあります。このため海岸から65キロの範囲が、ことごとく浸水してしまう恐れが出ています。これが「生存不可能」と表現した理由です。

地元の警察は、「もし避難ができないならば、名前、住所、社会保障番号、近親者の名前を書いた紙を入れたビニール袋をポケットにしまってください」と、フェイスブックで呼びかけていたほどです。

ローラの記録

前述のようにローラは、カテゴリー4で上陸した、ルイジアナ州最強のハリケーンとなりました。

また風速で比較した場合、アメリカ本土に上陸した10本の指に入る最強ハリケーンでもあります。風速67m/s以上の強さで、過去にアメリカ48州に上陸した例は9つしかありません。

これほどの勢力のハリケーンが、深夜に、しかも満潮時に上陸してしまいました。避難ができないだけではなく、水位が恐ろしく高いときに嵐のピークが来てしまったのです。

数時間後、夜が明けたときに被害の全貌が明らかになるでしょう。残念ながら、目をふせたくなるような、壊滅的な光景が広がっていることが考えられます。

アメリカのハリケーンの強さランキング (Wikipediaの情報を元に筆者作成)
アメリカのハリケーンの強さランキング (Wikipediaの情報を元に筆者作成)

次はナナ

メキシコ湾を含む大西洋では、今年これまでに13個の熱帯低気圧(風速17m/s以上)が発生しています。しかもこの嵐の量産傾向は、今後も衰える兆しがありません。

次回のハリケーンに付けられる名前は「ナナ」です。再びかわいらしい名前が続きます。

ある研究では、ハリケーンに女性の名前が付くと人々が油断をして、被害が広がる傾向にあるそうです。特に女性名のハリケーンには油断禁物です。

2020年大西洋ハリケーンの名前リスト (筆者作成)
2020年大西洋ハリケーンの名前リスト (筆者作成)
  • 追記(8/30)

ローラによる死者は、ルイジアナ州とテキサス州で14人に上った。テレビ局の鉄塔が折れたり、40万世帯が停電に陥るなど被害が広がった。ただ幸いなことに、最大潮位は2.8メートルで予想を大きく下回った。その理由は、ハリケーンの中心が上陸前にやや東に移動したことで、カルカシュー運河という狭い水路に逆流する水量が予想よりも少なくなったことが挙げられる。この水路は都市であるレイクチャールズに直結しており、もし水位が上昇すれば被害はもっとも大きくなる可能性があった。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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