星稜-履正社激突! 勝敗のポイントは?
センバツでは初日の第3試合にしばしば好カードが入る。記憶に新しいところでは、2012年の大阪桐蔭-花巻東(岩手)が挙げられる。藤浪晋太郎(阪神)から大谷翔平(エンゼルス)が本塁打を放ったあの試合(9-2で大阪桐蔭の勝ち)だ。ファンにとっては待ちに待った開幕とはいえ、開会式から観戦するとなれば、2試合終わったあとはさすがに長い。それでも、この星稜(石川)-履正社(大阪)の大一番は絶対に観戦することをお薦めする。
大阪のチームに勝たないと優勝できない
抽選会の日(15日)、拙文で、「決勝でもおかしくないような豪華な顔合わせ」と表現したが、筆者は秋の段階で、「打倒・星稜」の一番手は履正社だと思っていた。ライバル・大阪桐蔭に完勝し、左右の好投手と長打力のある打線のバランスが際立って良かったからだ。「星稜は、履正社を倒さないと優勝できない」と言った方が正確かもしれない。仮に大阪桐蔭が出ていても、このいずれかとは決勝までに必ず当たる。これまでから優勝を狙う強豪の前に立ちはだかったのは、ほとんどが大阪のチームだった。それほどまでに、甲子園では大阪のチームが強い。しかし、まさか初戦で激突するとは思ってもいなかった。
甲子園経験値ある奥川
初戦で当たると、甲子園での経験値がモノを言う。星稜は昨年の春夏を経験していて、エース・奥川恭伸(3年=タイトル写真)にとっては、3度目の大舞台となる。一方の履正社には、甲子園経験者がいない。この時点で、星稜にはアドバンテージがある。さらに、奥川は並の投手ではない。林和成監督(43)が、「全国レベルは奥川だけ」と謙遜したが、控えめな林監督の表現を正しく解釈すれば、「奥川は別格」ということである。8日に解禁された練習試合でも、順調な仕上がりを見せている。
奥川は順調な仕上がり
16日には近江(滋賀)と手合わせし、7回を5安打無失点に抑えた。ドラフト上位候補の有馬諒(3年=主将)や好打者の住谷湧也(3年)ら、昨夏甲子園8強の主力が残る近江は、出場校が対戦できる(補欠校は出場校と大会前に練習試合はできない)チームでは最強格だ。取材していないので深く言及しないが、序盤のピンチではギアを入れ替え、後続を断った。また、与四球もゼロで、投球内容にも奥川の特長がよく出ている。
つまり奥川は、無駄な四球を出さず、試合の要所で力を発揮できる「勝てる投手だ」ということだ。打線は、近江の左腕・林優樹(3年)に対し、4番・内山壮真(2年)の本塁打による1点に抑えられたが、チェンジアップを操る林レベルの投手をこの時期に打ち崩すのは容易ではない。いい当たりもあったようで、林監督もまったく心配していない。失点の計算できる奥川がいるので、本番では手堅い攻めに徹するだろう。
投手力で星稜に分
一方の履正社には、大きな不安材料がある。エース・清水大成(3年)が、8日の練習試合でライナーを左手に受け、万全の状態で臨めそうにないからだ。
15日の抽選会の段階で、岡田龍生監督(57)が、「何とか間に合うとは思う」と話していたが、球威、スタミナとも現状では未知数。同じ初戦で当たるにしても、初日だけは避けたかったに違いない。清水の状態によっては、秋の大阪桐蔭戦で完投勝ちした右腕の植木佑斗(3年)の先発もありうる。いずれにしても、投手力では星稜にかなりの分があり、履正社は、打線の援護が不可欠になる。奥川をどこまで攻略できるか。
履正社は本塁打期待
履正社の昨秋の公式戦チーム打率は、.309とそれほど高くないが、10試合で11本塁打の長打力が光る。特に小深田大地(2年)、井上広大(3年)の左右スラッガーは、一振りで流れを変える打撃が期待でき、下位打者にもフェンスオーバーする力がある。右打者の被打率が低い奥川だけに、勝負強い小深田が、左打席から快打を放ってチームに勢いをつけられるか。奥川から連打での得点は期待できないため、一発長打、特に本塁打で得点できれば、奥川にダメージを与えられる。
しつこく攻めたい履正社
試合は序盤で履正社が失点すると、奥川のペースになる。奥川はよほどのことがない限り、完投することになるので、履正社は中盤までしっかり守って、7回を迎える段階で2点差以内なら勝機も出てくる。そのためには、履正社打線が立ち上がりからしつこく攻めて、終盤のスタミナ切れにつけ込みたい。星稜は、序盤に得点して、奥川に余裕を持って投球させられれば、願ってもない展開となる。