高校中退者の4人に1人 別の高校への入学を希望
高校中退者の25%は、別の高校への入学を希望
小中学生の不登校児童の増加に対して、さまざまな選択肢を作っていこうとする流れができています。「登校できるように支援をする」時代から、多様な選択肢、環境を作っていくことは、社会的にも重要なテーマです。
中学校時代、不登校であったり、学校という場でうまくいかなかった若者の受け皿として、普通課程とは異なるカリキュラムを持つ高校ができ、通信制高校を選択する若者も増えました。
いま、育て上げネットでは高校の中での活動や、通信制高校に通う生徒の職業体験などを通じて、高校との連携をしています。先生方は、生徒の卒業後の進路だけでなく、中途退学について「何とか力になりたい」と言われます。
さまざまな事情を抱える生徒、その背景にある課題を理解している先生方だからこそ、中途退学という選択が必ずしも生徒自身のためになるとは言えないのではないか。その後の進路や生活を心配して、できるだけ中途退学をしなくていいよう努力と配慮をされています。
文部科学省の『令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題にい関する調査結果』では、小・中学校における不登校の児童生徒数は24万2940人と9年連続で増加し過去最多となったことがわかりました。
事由別中途退学者数も公開しており、最も大きな中退理由は「学校生活・学業不適応」(30.5%)となっています。次に大きいのが「別の高校への入学を希望」(25.2%)です。これらは重なる部分があると思いますが、単一回答形式となっているため解釈の余地はありそうです。
現在、在籍している高校を離れる理由はさまざまであっても、その4人に1人が高校生活を継続したい。そのために別の高校へ入学することを希望しています。転校を経験された方のなかで、小中学校時代であれば保護者が次の学校を選択するということもあったかと思いますが、高校生の場合はどのように高校を探し、意思決定をするのでしょうか。
在籍している(いた)学校の先生や保護者と相談を重ねることが多いと思われますが、先生や保護者が必ずしも他の学校の情報を持っているとも限りません。
公立・私立を問わない 行政が主催の合同学校相談会
別の学校に入学したいが、いろいろな情報を若者や保護者、先生だけで把握するのは簡単ではない。そのような声もあり、東京都立川市では、立川市が主催、国立市・国分寺市・昭島市の3市が協力して、毎年「定時制・通信制高校等合同学校説明会」を開催しています。
立川・近隣市の14校が参加し、それぞれの学校の話をまとめて聞くことができるのが特徴です。各校は相談ブースを設置し、先生や在校生からの話を聞いたり、パンフレットや冊子を持ち帰ることができます。
2022年度は二度開催し、約400名の若者や保護者、学校の教員、若者や子どもたちを支援するNPOなどの支援者が集まりました。来場者のなかには中学に行くことができず、卒業後に自分が進学できる道があるのかわからないという参加者がいました。
あるフリースクールの先生は、「子どもの進路のためにさまざまな学校を回る時間を取ることができないため、公立・私立の両方の学校情報を取り、関係者と話ができる機会になる」と来場理由を教えてくれました。
関係者によると、来場者から最も評価が高かったのが、中退等を経験し、別の高校に入学を決めた学生による話で、中学校時代のこと、いまの学校への入学を決めた理由、現在の高校生活について語られました。
進学先だけではない情報提供と相談機会
来場者の中には中退をした、中退を決めている若者もいれば、迷っている若者もいます。また、中退理由が「問題行動等」(2.5%)、「経済的理由による」(1.4%)ということもあり、必ずしも次の進路を探している、探すことができる状況や環境ばかりではないようです。
そのため、この相談会では、社会福祉協議会も参加し、受験や高校生活における教育費の補助制度など経済的なサポートについての情報提供をしています。また、学校生活のみならず、日常生活を含めた心のケアの在り方について、東京西法務少年支援センターによる話も設定されています。
昨年の相談会を運営した関係者は、来場者や会場の雰囲気をこのように話します。
さまざまな高校の先生や在校生の方々と一緒になって作っている説明会で、毎年とてもあたたかい雰囲気を作れています。昨年度も、「在校生の生の声が聴けてとても参考になった」「先生と直接いろいろな話ができて、今後の進路を親子で考える機会になった」といったコメントをいただきました。気になる学校がある方だけではなく、どのような進路が存在するのかに関心ある方々にも来ていただければと思っています。
10代後半の若者は、学生という道を選ぶことも、就職など「働く」道を選ぶことも、選択肢に入りやすく、在籍する高校を中退するにあたって、その先の進路も分かれてきます。安全かつ安心できる環境で、十分な情報を保護者や先生とともに獲得できる機会が、全国でも広がることを願います。