ツツジの花を台無しにする超能力昆虫、ツツジトゲムネサルゾウムシ
東京では4月半ばごろから花が見頃になるツツジ。そのツツジの花がまだ蕾(つぼみ)の時に食害して花を台無しにする害虫(虫好きにとっては、春を告げる可愛いやつ)が、ツツジトゲムネサルゾウムシだ。
つまり、ツツジトゲムネサルゾウムシの見頃(わざわざ見に行く人は少ないと思うが)は、まだツツジが蕾の今だ。花が満開になる頃には、害をなした犯人は姿を消している。
ツツジの側も、為すすべもなく攻撃されているわけではない。ツツジの蕾は、触るのもおぞましいほどベタベタしている。ツツジの害虫の多く(ルリチュウウレンジとかツノヒゲボソゾウムシとか)は、このトリモチのようにネバネバ、ベタベタの「ツツジ昆虫トラップ」に捕らえられ、身動きが取れなくなって息絶える。台所の隅のトラップに引っかかったゴキブリの最期と同じだ。
このツツジ昆虫トラップの犠牲者たちを見て回るのも、虫好きにとって春の楽しみ(ちょっと悪趣味)の1つだ。
しかし、ツツジトゲムネサルゾウムシには、「ベタベタを物ともしない」という恐るべき特殊能力があって、このツツジの蕾の上を平気で歩き回り、何食わぬ顔で蕾を食害する。その上、蕾の中に産卵するというから、ツツジ側としては大迷惑だ。
ツツジの蕾の上で、楽しそうに交尾しているツツジトゲムネサルゾウムシのカップルもよく見かける。その姿はまるで、ツツジ・トラップの無能ぶりを嘲笑っているようだ。
都心の公園のツツジにも普通にいる虫なので、興味のある人(あまりいない)は、虫メガネを持って(写真で分かるように非常に小さいので)、拡大して見てほしい。トゲムネの名前の由来の胸部後方の棘は、拡大しないと絶対に分からない。
コツが分かるとこの虫を見つけるのは結構簡単。白っぽい蕾に、茶色の斑点(食痕)がたくさんあれば、やつらがいる証拠だ。
(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)