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【アイスホッケー】廃部が決定した日本製紙クレインズの「これから」を考える<1>

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
釧路で生まれ育った佐藤博史コーチ(元CF)(Photo:Jiro Kato)

 昨年9月1日に開幕した「アジアリーグ アイスホッケー」は、昨夜の試合でレギュラーシーズンの全日程が終了しました。

 日本、韓国、ロシアの8チームが、それぞれ34試合を戦い終え、今月16日からは、上位5チームによるプレーオフが始まり、リーグ創設16季目の王座を争います。

▼クレインズは有終の美を飾ることができるか!?

 注目されるのは、何と言っても日本製紙クレインズ(旧十條製紙)の戦い!

 昨年12月19日に今季限りでの廃部を発表したことから、最後のシーズンに5季ぶりの王座へ返り咲き、有終の美を飾ることができるでしょうか?

 

 アイスホッケーファンに限らず、多くのスポーツファンが注目する中、今月16日から始まるプレーオフのファーストラウンドで、レギュラーシーズン5位の王子イーグルスと対戦。

 レギュラーシーズンの順位で上回る(4位)クレインズは、ホームアリーナ(釧路市・日本製紙アイスアリーナ)で、ベストオブ3(3回戦制2勝先勝)のファーストラウンドに臨み、セミファイナル進出を目指します。(プレーオフのスケジュールは、アジアリーグの公式サイトをご参照ください)

▼クレインズの「これから」を考える

 その一方で、多くのファンは、来季以降のクレインズの動向が気になっているに違いありません。

 そこで、クレインズの「これから」を考えてみましょう。

 まず何にも増して、針路を見定めなくてはならないのは、

釧路でアイスホッケーチームを残すのか?」

釧路のアイスホッケーチームを残すのか!」

ということ。

 書き記すと一文字だけの違いですが、二つの選択肢には大きな違いがあります。

▼10年前の出来事

 クレインズが今季終了後の廃部を発表した昨年の12月19日は、既に筆者の当サイトで紹介したとおりSEIBUプリンスラビッツが今季終了後の廃部を発表した日から、丁度10年後でした。

 SEIBUプリンスラビッツは、国土計画(のちにコクドと改称)に、西武鉄道が事実上吸収された形で誕生したチーム。

 当初はコクドの名前でアジアリーグに加盟していましたが、西武グループの再編に伴い2006年9月からチーム名を改めました

▼注目度はナンバーワン

 首都圏(西東京、横浜)にホームアリーナを構える唯一のチームとあって、注目度はナンバーワンでした。

 アイスホッケーを題材にしたドラマ「プライド」が放映された際には、身動きができないほどの観衆がスタンドに詰め掛け、普段は観客を入れることのないエリアを開放した試合もあったほど。

ドラマ「プライド」の効果で超満員となった新横浜スケートセンター(Photo:Jiro Kato)
ドラマ「プライド」の効果で超満員となった新横浜スケートセンター(Photo:Jiro Kato)

 しかし、「厳しい経営環境に直面し、様々な経営施策を講じている中、部(=プリンスラビッツ)の運営に係わる経費負担が過大となっているため」との理由で、2008年12月19日にシーズン終了後の活動終了(廃部)を発表。

 チームの引き受け先を、年度末(翌年3月31日)まで探したものの見つからず、「12月19日の廃部発表以来、引き受け先企業を探して参りましたが、本日をもって断念したことを、アジアリーグと、日本アイスホッケー連盟に報告させていただきました」と、小山内幹夫オーナー代行が、都内で開いた会見の席で発表

 

 25名の選手とチームスタッフ(監督、コーチ、マネージャーなど)が在籍していたチームの解散を決断しました。

▼引き受け先が見つからなかった最大の理由は?

「東京周辺だけでなく、遠方も含めて20~25社と交渉をさせていただきました。話を進めていく段階で、ホッケーはおもしろい! とは言ってもらえるのですが、『お客さんの数が平均1000人ちょっとでは厳しい』という意見が、いくつかありました」

 都内で開かれた会見の席で、小山内オーナー代行はチームの解散に至った理由を、目を潤ませながら打ち明けたのです。

チームの解散を発表した小山内幹夫オーナー代行(Photo:Jiro Kato)
チームの解散を発表した小山内幹夫オーナー代行(Photo:Jiro Kato)

▼釧路の観客数を伸ばすのか? それとも???

 「観客数が全て」ではないとは言え、チームを引き受けるか否かの大きな判断材料になるのは否めません。

 2003年11月にアジアリーグが発足して以来、釧路で開催された試合での最多観客数は5季前のプレーオフ・ファイナル第4戦で記録した「3120人」(タイトル写真)。

 クレインズが4度目の優勝にして、初めて釧路のファンの前で王座を勝ち取った試合でした。

 しかし、残念ながら近年は、アリーナレコードに及ぶほどの観客が詰め掛ける試合が見られなくなってしまい、今季のアジアリーグの釧路開催試合の観客数(リーグ発表)は、1試合平均「1158人」

 もっとも、この数字はクレインズに限ったことでなく、国内の4チームを見比べても、最も多い日光アイスバックスでさえ、1試合平均「1344人」。前述した「平均1000人ちょっとでは厳しい」という範疇に含まれる数字にとどまっています。

▼クレインズの針路は?

 廃部発表からほどなくして、氷都くしろにクレインズ存続を願う会が発足。

 クレインズに限らず、ライバルチームも含めた多くのファンたちが、チーム存続を願って各地で署名活動を行うなど、精力的な活動を続けています。

 冷え込みが厳しい中、連日手弁当で署名活動を行っているのには「頭が下がる」の一言です。

 しかし、、、もとい、だからこそ、あらためて問わなくてはならないのは、

釧路でアイスホッケーチームを残すのか?」

釧路のアイスホッケーチームを残すのか!」

 という点です。

 端的に言えば、「観客数」がチームを引き受けるか否かの大きな判断材料になっているのであれば、以前にアイスホッケーチームのホームタウンだった首都圏や札幌、大阪といった大都市に移るのが最善の策なのでは?

 さらに加えて、近年は東京オリンピック開催の影響もあり、新たなスポーツチームが次々に誕生して飽和状態に差し掛かっていると言えます。

 その中で、あくまでも「釧路でアイスホッケーチームを残す!」との旗印を掲げ続けるのであれば、「誰もが納得できる理由」を、もっともっと広く明示していくことが、求められるのではないでしょうか?

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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