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悪質業者に教育機会を ペットパーク流通協会長 上原勝三さん

太田匡彦朝日新聞記者
子犬・子猫が取引されているペットオークション=太田匡彦撮影

 子犬・子猫のオークション(競り市)である「関東ペットパーク」を立ち上げたのは1995年です。マスコミが火を付けたペットブームにより、ペットを飼うことが「当たり前」の時代になりつつありました。小売店で、10万~20万円の単価で数が売れる商品というのはなかなかなく、ホームセンターや百貨店などがこぞってペットショップをテナントに入れるようになっていました。

 いまではブリーダー(繁殖業者)、オークション、ペットショップの3者による、日本独特の生体販売のシステムができあがっています。

子犬・子猫が取引されているオークション(競り市)=埼玉県の関東ペットパーク(以下同)、太田匡彦撮影
子犬・子猫が取引されているオークション(競り市)=埼玉県の関東ペットパーク(以下同)、太田匡彦撮影
関東ペットパークでは1日で600~700匹の子犬・子猫が売買されるという=太田匡彦撮影
関東ペットパークでは1日で600~700匹の子犬・子猫が売買されるという=太田匡彦撮影

 この中で問題を起こしているのは多くの場合、2000年代半ば以降、オークションでの取引価格がそれまでの倍程度に上がり始めたのを見て新規参入してきたブリーダーの限られた一部です。限られたスペースの中でなるべく多くの子犬・子猫をつくろうとし、何段にも重ねたケージの中で劣悪な飼育をしています。犬猫を適正に飼育するための勉強や取り組みを、自発的にはしようとしません。

 こうした問題業者への対応は、これまで作り上げてきた、日本独特の生体販売システムの中でこそ解決できます。ブリーダーは横のつながりが希薄なので、特にオークションが果たす役割は大きいです。14年に14カ所のオークションで「ペットパーク流通協会」を立ち上げ、状況改善に取り組んでいます。

繁殖業者が出品した子犬・子猫は、ペットショップのバイヤーによって次々に落札されていく=太田匡彦(いずれも撮影許可を得て撮影しています。画像の一部を加工しています)
繁殖業者が出品した子犬・子猫は、ペットショップのバイヤーによって次々に落札されていく=太田匡彦(いずれも撮影許可を得て撮影しています。画像の一部を加工しています)
出品されたスコティッシュフォールドの子猫。高値がついてすぐに落札された=太田匡彦撮影
出品されたスコティッシュフォールドの子猫。高値がついてすぐに落札された=太田匡彦撮影
秋田犬など大型犬の出品も少なくない。甲信越地方から子犬・子猫を運んでくる繁殖業者もいる=太田匡彦撮影
秋田犬など大型犬の出品も少なくない。甲信越地方から子犬・子猫を運んでくる繁殖業者もいる=太田匡彦撮影

 私のところでは、保険会社やペットフード会社、製薬会社などの協力を得て、出入りするブリーダーに勉強する機会を提供し、遺伝性疾患や感染症への対策ができているかどうかチェックしています。また、ケージに入れっぱなしではなく、犬や猫が自由に動き回れるように「平飼い」するほうが、繁殖効率が上がることなども教えています。平飼い飼育をしているブリーダーが出品する子犬・子猫のほうが発育や質がよいため、明らかにオークションでの評価が高く、いい価格がつきやすいことも伝えます。問題業者を排除するのではなくあえて受け入れ、オークションが教育機能を担うのです。この数年でブリーダー全体の質はかなり向上した自負があります。

 ただ、いまのやり方が未来永劫(えいごう)続くとは思っていません。業界全体として、さらに変わっていく努力をしないといけません。求めるものを、量から質へと転換していくことが何より必要です。

遺伝性疾患や感染症への対策を積極的に進め、問題業者の教育にも取り組む上原勝三さん=太田匡彦撮影
遺伝性疾患や感染症への対策を積極的に進め、問題業者の教育にも取り組む上原勝三さん=太田匡彦撮影

(2019年6月2日付朝日新聞朝刊のフォーラム面のうち上原勝三さんの談話部分を再掲しました。すべての記事とアンケート結果はこちらからお読みいただけます)

朝日新聞記者

1976年東京都生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当した後、AERA編集部在籍中の08年に犬の殺処分問題の取材を始めた。15年、朝日新聞のペット面「ペットとともに」(朝刊に毎月掲載)およびペット情報発信サイト「sippo」の立ち上げに携わった。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』『「奴隷」になった犬、そして猫』(いずれも朝日新聞出版)などがある。

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