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業者の犬猫を「保護」してビジネス? 「取材拒否」だった団体が答えた

太田匡彦朝日新聞記者
もらわれる機会を待つ繁殖引退犬たち(筆者撮影、写真と本文とは直接関係ありません)

 犬猫の「殺処分ゼロ」を目指す取り組みが浸透し、ペットを飼おうという際に保護犬や保護猫を選択肢に入れる動きが広まっています。一方で業者が繁殖に使っていた犬猫などを巡り、「下請け愛護」や「保護ビジネス」などと批判される活動も出てきています。昨年から今年にかけてこの問題について取材し、いくつか記事を書いてきました。

 そんななか、2022年12月9日付の記事を書くにあたって「取材拒否」だった動物保護団体が、今年に入って取材に応じました。一連の取材を通じて、ペット業界と動物保護団体の双方の側から「保護ビジネス」の代表的な存在として名前があがった団体です。

 取材に応じたのは同団体の理事。1月中旬の午後、東京・広尾の雑居ビル内にある事務所でおよそ1時間、話を聞きました。

「営業」が全国のブリーダーを訪問

 まず譲渡後に重い病気などが発覚するケースについて、理事はこう答えました。

 「シェルターでわかる範囲の健康状態は把握したうえでお渡ししている。協力してもらっている何人かの獣医師がシェルターに週2、3日来て視診、触診、聴診を行う。精密検査まではできないので、そういう(譲渡後に重い病気などが発覚する)ようなことも起こりえると説明したうえで、里親さんを募っている」

 「(重い病気が発覚して)そのために治療費がかかったりというのは、個別に対応しているというのが現状。治療費が少なからずかかるという場合にはうちのほうでできる範囲で、寄付金としていただいた分を基準に負担をする。もしくは譲渡自体を取りやめ、再度うちのほうで里親さんを募集する。ケース・バイ・ケースで対応している」

 また、譲渡の窓口となる提携動物病院に、繁殖業者から直接「健康状態があまりにひどい」犬や猫が送られてくるという件については、こう説明します。

 「現在2割くらいは、シェルターを経由せずに(繁殖業者などから)直接、里親さんのもとに(犬猫が)行っている。その際に(譲渡の窓口となる)サポート動物病院で、視診、触診、聴診の健康確認をしてもらっている。病気に気付いたら、そのことを里親さんに説明し、里親さんには(病気を)治療などすることも含めて飼育してもらうというのが基本になる。(説明を聞いて譲渡希望者が)飼えないとなれば、押しつける必要もないので、譲渡を取りやめる」

 シェルターは現在、東京・大阪・福岡の3カ所にあり、あわせて約130匹を保管できる能力があるといいます。繁殖業者などのもとにいる犬猫は基本的にこれらのシェルターに送られてきて、そこで1週間から10日ほどスタッフが面倒を見ているうちに、譲渡先が決まるそうです。

 同団体では、繁殖業者のもとにいる犬猫を集めるため、大手求人サイトで「ブリーダー営業」を募るなどしていて、「ブリーダーさんのところを(営業担当者が)訪問して『できるだけ早めに引退させてあげてもらえませんか』『その子たちに里親さんを見つけるサポートをするので』というのをやっている。現状8~10人のチームで、兼務している人間もいる。関東、近畿あと九州のブリーダーを行ける範囲で回っている」(理事)。

 また、団体が運営する飼い主募集サイトで犬猫の情報だけを紹介し、シェルターに収容することなく繁殖業者などから直接、新たな飼い主のもとへと譲渡される犬猫もいます。その割合は順次減っていて、福岡に3カ所目のシェルターを設立した2022年3月以降は「だいたい2割」というのが理事の説明です。

「保護ビジネス」の指摘にどう答えるのか

 一方で、「保護ビジネス」という指摘にはどうこたえるのでしょうか。そもそも同団体の東京都内にあるシェルターは一般社団法人として運営しているが、第1種動物取扱業(販売・保管・貸出し・訓練)の登録をしている(23年1月4日時点)。このことについてただすと、

 「もともと(19年12月に活動を始めるにあたり)東京都とやり取りしたところ『第1種の登録をしておけば、譲渡も全部カバーできるのでひとつで大丈夫ですよ』と説明を受けたので、第1種で登録した。ただ『譲渡活動でなぜ1種なのか』という疑問を抱かれたこともあり、誤解を与えているところもあるのだろうということで、東京都に第2種の届け出をして22年の年末に受理されている。1種についてはどこかのタイミングで返上する予定だ」

 「(営利活動は行っておらず)非営利活動です。譲渡です。対価をもらっていないので、販売(をしている)という認識はない。グレーゾーンという認識はぜんぜんない。第2種の事業者として譲渡活動をしているということ」

 だが同団体では、不妊・去勢手術やワクチン接種、ノミ・ダニの駆除、血液検査などの実費や輸送費に加えて、10万円前後の寄付を、譲渡を希望する飼い主に「お願い」しています。実質的な販売行為と言えるのではないでしょうか。理事はこう答えました。

 「(10万円前後の寄付金が)特に高いという認識はない。(ホームページにある個体ごとの寄付金額は)目安として示している。その金額を寄付しなくても譲渡を受けられる場合もある。ケース・バイ・ケース。審査し、譲渡先として適当かどうかはうちのほうで判断させてもらう。寄付金の金額含めて、内容によっては譲渡しない場合も当然ある」

 「(譲渡希望者に提示している寄付金の額は)活動するにあたって必要な費用。維持していくために必要な費用として『これくらいの額をお願いできませんか?』とお願いしている」

 また飼い主が譲渡を受ける際、「月額2、3千円かかる会員サービス」への加入を求められたという証言も複数あったことから、この件についても確認しました。

 「(別法人が提供する)ペット関連サービスを会員制にしている。譲渡をする時に一緒に(加入を)お願いしている。加入は義務ではない。あくまでお願いして入っていただく。加入する人はまあ一部。半分(が加入する)とかそういう感じではない」

理事「もうかる事業ではない」と説明

 動物保護団体は犬猫を譲渡する際、一般的に、それまでにかかった実費を請求します。その額は普通、2~6万円程度です。この団体のように実費とは別に、10万円前後の寄付を「お願い」するというのは異例と言えます。「会員サービス」への加入を促す事例もあまり聞きません。保護犬、保護猫の譲渡活動によって利益をあげているのではないか――と考えたくもなります。改めて確認すると、理事は「もうかる事業ではない」と言います。では団体としての収支の状況を開示するつもりはないか、尋ねました。

 理事は、19年12月から21年1月については株式会社として譲渡活動をしてきて、21年2月から一般社団法人で事業を行っていると説明しつつ「株式会社時代の決算報告書はあるが、売上高や利益を公表する予定はない。(一般社団法人としての)第1期(21年12月期)の決算公告については対応できていなかった。第2期(22年12月期)からきちんとやろうという話をしていて、(決算公告を)準備しているところ」としました。

 取材の日から1カ月ほど経った2月半ば、理事からメールが来ました。そこには「携帯電話や不動産契約などを参考に、契約書締結の前に重要事項説明を行う手順を加えるよう、システム構築を進めており、近日導入予定です」「より丁寧な説明を行い、迎えていただいたのちのトラブルを未然に防ぎたいと考えています」などと書かれていました。

朝日新聞記者

1976年東京都生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当した後、AERA編集部在籍中の08年に犬の殺処分問題の取材を始めた。15年、朝日新聞のペット面「ペットとともに」(朝刊に毎月掲載)およびペット情報発信サイト「sippo」の立ち上げに携わった。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』『「奴隷」になった犬、そして猫』(いずれも朝日新聞出版)などがある。

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