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充実・永瀬拓矢王座(29)A級開幕戦を制す! 難敵・豊島将之九段(32)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月9日。東京・将棋会館において第81期A級順位戦1回戦▲永瀬拓矢王座(29歳)-△豊島将之九段(32歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は23時20分に終局。結果は93手で永瀬王座の勝ちとなりました。注目の開幕戦を制し、永瀬王座は幸先のよいスタートとなりました。

 両者の通算対戦成績はこれで豊島9勝、永瀬10勝となりました。

永瀬王座、相掛かりで勝利

 タイトルホルダーで、現在は序列3位の永瀬王座。現在は棋聖戦五番勝負で藤井聡太棋聖に挑戦中で、第1局は千日手2回の死闘の末に勝っています。

 一方、豊島九段は昨年、藤井現五冠に叡王、竜王のタイトルを奪われて現在は無冠。しかし王位戦で2年連続の挑戦を決め、これから藤井王位と七番勝負を戦うところです。王座戦でもベスト4まで勝ち進んでおり、ファンからはタイトル復帰が望まれています。

 渡辺明名人への挑戦権を争う今期A級順位戦。新参加・藤井五冠の戦いぶりが大変に注目されますが、永瀬王座、豊島九段も当然、優勝候補に数えられるところでしょう。

 本局は永瀬王座先手で相掛かりに。豊島九段が「縦歩取り」の揺さぶりをかけたのが用意の作戦だったようで、ほどなく前例のない進行となりました。

 互いに中段に飛車を配しての中盤戦。力のこもった攻防が見応えがありました。

 永瀬王座は飛角交換に持ち込み、手にした飛を豊島陣に打ち込みます。そこで優位を確立し、一気に豊島玉を受けなしに。最後、永瀬玉に詰みはない一方で、豊島玉は受けのない形。豊島九段が投了して、注目の開幕戦が終わりました。

 豊島九段は敗れてしまいましたが、まだまだ先の長いリーグ戦。これから巻き返す余地は十分にあります。

 A級1回戦の今後の日程は以下の通りです。

6月17日

▲斎藤慎太郎八段-△菅井竜也八段

▲佐藤天彦九段-△稲葉陽八段

▲広瀬章人八段-△糸谷哲郎八段

6月22日

▲藤井聡太竜王-△佐藤康光九段

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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