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シリーズの山場を制するのは藤井聡太竜王か? 佐々木勇気挑戦者か? 竜王戦七番勝負第5局始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月27日・28日。和歌山県和歌山市・和歌山城ホールにおいて、第37期竜王戦七番勝負第5局▲藤井聡太竜王(22歳)-△佐々木勇気八段(30歳)戦がおこなわれます。棋譜は公式ページをご覧ください。


 27日9時、対局開始。先手の藤井竜王はまず飛車先の歩を伸ばします。対して佐々木八段は角筋を止め、いわゆる「雁木」(がんぎ)の形に組みました。研究十二分をうかがわせる選択です。

 10時を過ぎた現在、藤井竜王は21手目を考慮中。もし速攻を仕掛けると、一気に激しい進行となりそうです。

 竜王戦七番勝負は持ち時間各8時間の2日制。対局は1日目9時に始まり、指し掛けを経て、通例では2日目の夕方から夜にかけて終局となります。

七番勝負でカド番に追い込まれたことがない藤井竜王

 両者のこれまでの通算対戦成績は藤井6勝、佐々木4勝です。



 第4局は佐々木八段が完勝を収めました。



 藤井竜王はこれまで登場した七番勝負をすべて制してきました。そのうち、2敗を喫したことは2度あります。

 

 1度目は2021年度の竜王戦七番勝負。広瀬章人九段を挑戦者に迎えたときでした。このときは藤井竜王が3勝1敗と先行したあと、広瀬九段が1勝を返しています。


 2度目は2021年度の王将戦七番勝負。羽生善治九段を挑戦者に迎えたときでした。第4局まで交互に勝利をあげ、第5局を迎えた時点で2勝2敗でした。

 王将戦第5局▲藤井王将-△羽生挑戦者戦は、藤井王将先手で横歩取りに。途中で藤井王将がリードを奪うも、羽生挑戦者が追い込んで、勝敗不明の終盤となりました。最後は藤井王将がギリギリのところで競り勝ち、羽生玉をきれいに詰ませて、からくも勝利を得ています。この天王山を制した藤井王将が続く第6局も制して、防衛に結びつけました。

 そして本シリーズ。藤井竜王は王将戦以来2度目となる、2勝2敗での第5局を迎えました。

 もし佐々木八段が勝てば、藤井竜王は七番勝負では初めてカド番に追い込まれることになります。

年度後半戦進行中


 藤井竜王の今年度成績は22勝8敗(勝率0.733)です。


 竜王戦第4局から第5局までの間に対局はありませんでした。


 佐々木八段の今年度成績は22勝10敗(勝率0.688)です。

 王将戦リーグではすでに陥落が決まっていたものの、最終戦で羽生善治九段に勝っています。


 王将戦は25日にプレーオフがおこなわれ、永瀬拓矢九段が西田拓也五段に勝って、藤井王将への挑戦権を獲得しています。


 永瀬九段は終局後のインタビューで、竜王戦についても尋ねられていました。


永瀬「すごい、なんていうか、悪手が多い質問ですね(笑)。ぱっと見、悪手だらけなんですけど。どうすればいいですか。私は最善を指す自信がないんですけど。待ってください」


 そう前置きしたあとで、次のように語っていました。

永瀬「佐々木勇気さんが2勝2敗で、私の予想をくつがえした。私の意見なんで、いいと思うんですけど。私の予想はくつがえしてきたという」

 永瀬九段は「藤井竜王が4勝1敗で防衛」(『将棋世界』2024年11月号73p)と予想していました。

永瀬「佐々木勇気さんも満足しないことを願うばかりですけど。はい、いま、佐々木勇気さんが竜王戦を戦われていまして、そのあと私が王将戦で挑戦しますので。佐々木勇気さんにはとことんがんばもらいたいなとは思います(笑)」


将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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