【大阪市】画壇の悪魔派、北野恒富の絵を見に行こう!「中之島美術館」大阪の日本画展、4月2日まで
開館1周年記念特別展「大阪の日本画」展、もう見ましたか?
今、大阪の近代美術館「大阪中之島美術館」で、開館1周年記念特別展「大阪の日本画」展が開催されています。4月2日まで。
本展では北野恒富など大阪の日本画が、約160点展示されています(展示内容は前期と後期にわかれていますけど)。筆者も見てきましたので、感想を交えながら、ご紹介したいと思います。
そもそも「大阪の日本画」って何?
大阪の日本画をテーマにした展覧会自体、初めてなのですが、京都や東京の日本画と何が違う? そう思ってしまいますね。
大阪と言えば、何しろ「お笑い」「食い倒れ」くらいしか思い浮かびません。
しかし、そこは日本画、なんとも美しいのです。大阪をテーマにした作品や大阪に住まいを構えて活躍した画家たちが大勢いて、その名画を鑑賞することができますよ。
過去に類を見ない大規模な展覧会で、近代大阪を代表する3人の巨匠――北野恒富、菅楯彦、矢野橋村と、それぞれの門下生の作品が展示されています。
この巨匠3人は「人物画」「風俗画」「新南画」と描くジャンルは異なりますが、大阪の街で育まれた作品を描き、大阪の文化の発展に尽力し、大正から昭和にかけて一時代を牽引しました。
大阪に暮らすことで、大阪らしい日本画を創作して活躍したのです。
有名な北野恒富について、簡単に紹介しておきます。
北野恒富は現在の石川県金沢市に生まれました。
明治30年に上阪、新聞挿絵やポスター制作の仕事をしながら、本格的に日本画を学びました。明治43年、第4回文部省美術展覧会に初入選。恒富の描く人物は、妖艶かつ退廃的な雰囲気をもち、京都の画家たちから「画壇の悪魔派」と揶揄されましたが、顔を綺麗に描いた美人画とは異なり、人の内面を画面全体で描出しています。
とりわけ着物の模様に工夫を凝らし、絵の物語性も暗示するなど、市井の感覚を敏感に感じ取りながら、描き方や人物の表現などを巧みに変えていきました。
大阪画壇の組織化をはかり、のちに大阪画壇のリーダーと目されるようになりました。
北野恒富はなぜ「画壇の悪魔派」と呼ばれたのか?
「画壇の悪魔派」――。
なんとも強烈なネーミングですね。
これについては、大正7年に発表された「北野恒富さんに物申さん」という記事のなかで、京都画壇のある人たちが「悪魔派」と呼んでいる、と紹介されているのですが……。
なぜ悪魔派なのか?
女の絵に廃頽の気分がほのめいている、からだそうです。
確かに、その日本画を見と、そんな印象を受けますね。
6章構成で見どころは多岐にわたる
本展は、明治から昭和に至る近代大阪の日本画に光をあて、作品が生まれた背景にも目を向けることで、個々の作品の魅力や画壇のあり方をより深く知ることができます。そして今につながる大阪の街の文化を浮き彫りにしています。
6章構成になっていますが、それにしても、日本画って素晴らしい。美しい!
同展のポスターにもなっている絵画「宝恵籠(ほえかご)」は、北野恒富の代表作。毎年正月10日に大阪で賑やかに行われる「十日戎」の駕籠行列に乗る若い舞妓が、柔らかく明るい画風で描かれています。伏し目がちな眼差しが悪魔派?なのか。でも、キリッとした表情で、商いの町に生きる女性の意志の強さが出ているのではないでしょうか。
北野恒富の画風は、京都の画壇からは認められてはいましたが、「画壇の悪魔派」と揶揄されていたそうですから、それがどんな絵か、自分の目で確かめてはいかがでしょうか。
また、大阪を代表する祭り「天神祭」の様子を描いた作品もあります。貴重な資料とも言えるでしょう。
素晴らしい大阪の日本画が勢ぞろい。心に残る作品も多いですよ。
なお、4月1日には、講演会もありますので、興味ある方は足を運んではどうでしょうか。
講演会「大阪の日本画をみる」
開催日時 2023年4月1日(土) 14:00 – 15:30(開場 13:30)
登壇者林野雅人氏(大阪中之島美術館 主任学芸員)
会場1階ホール
定員150名
参加費無料 *本展覧会観覧券(利用後の半券可)が必要です。
大阪の日本画展
◆会期:~4月2日(日)まで
◆会 場:大阪中之島美術館(大阪市北区中之島4-3-1)
◆観覧料:一般1700円、高大生1000円、中学生以下無料
◆問い合わせ 06-6479-0550(代表)