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盗塁王3度と首位打者1度のスピードスターが、今年5度目のマイナーリーグ契約

宇根夏樹ベースボール・ライター
ディー・ストレンジ-ゴードン Sep 13, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ディー・ストレンジ-ゴードンが、ワシントン・ナショナルズとマイナーリーグ契約を交わしたようだ。ESPNのジェフ・パッサンが、そう報じている。

 ストレンジ-ゴードンは、スピードスターだ。通算333盗塁を記録し、2014年(64盗塁)と2015年(58盗塁)、2017年(60盗塁)は、ナ・リーグの盗塁王を獲得した。2014年は両リーグ最多の三塁打12本を打ち、2015年はナ・リーグ1位の打率.333に加え、二塁手としてゴールドグラブも手にした。

 だが、パワーはなく、シーズン本塁打は5本に達したことがない。その上、ストレンジ-ゴードンは、早打ちのフリー・スウィンガーだ。首位打者を獲得した2014年も、出塁率はリーグ17位の.359に過ぎなかった。出塁率.350以上は、このシーズンだけ。通算打率が.286であるのに対し、出塁率は.319だ。来年4月には、34歳となる。

 2017年のオフのトレードで、ストレンジ-ゴードンは、3人と交換にマイアミ・マーリンズからシアトル・マリナーズへ移った。そこからの打率と出塁率は、2018年が141試合で.268と.288、2019年が117試合で.275と.304、2020年は33試合で.200と.268だった。2016年1月に交わした5年5000万ドル(2016~20年)の延長契約には、年俸1400万ドル(2021年)の球団オプションがついていたが、マリナーズはこれを破棄し、ストレンジ-ゴードンに解約金の100万ドルを払った。

 FAになったストレンジ-ゴードンは、今年2月にマイナーリーグ契約でシンシナティ・レッズに入団した。続いて、4月にミルウォーキー・ブルワーズ、5月にシカゴ・カブス、7月にピッツバーグ・パイレーツとマイナーリーグ契約を交わした。どの球団でもメジャーリーグには昇格できず、他で機会を掴もうとして自ら退団することも多かったが、成績も振るわなかった。3球団のAAAで計54試合に出場し、打率.248と出塁率.288に終わった。今回のナショナルズ入団は、今シーズンではなく来シーズンに向けたものだが、今年5度目のマイナーリーグ契約ということになる。

 ナショナルズが二塁のレギュラーとして想定しているのは、ロックアウトに入る前に1年400万ドルで迎え入れたセイザー・ヘルナンデスか、今シーズンがメジャーリーグ2年目だったルイス・ガルシアだろう。遊撃の筆頭候補は、元・東京ヤクルト・スワローズのアルシデス・エスコバーだ。大物やトップ・プロスペクトが揃っているわけではない。レギュラーはともかく、控えのミドル・インフィルダーとしてなら、ストレンジ-ゴードンにも開幕ロースター入りのチャンスは――もちろん、スプリング・トレーニングで結果を残すことが前提だが――ありそうな気がする。だからこそ、ストレンジ-ゴードンは、ナショナルズと契約したのかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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