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西日本を中心に今冬最強の寒気が南下 北陸西部では大雪に警戒

饒村曜気象予報士
佐渡沖の低気圧に伴う雲と日本海西部に広がる寒気の雲(1月7日15時)

西高東低の冬型の気圧配置

 令和3年(2021年)1月7日は日本海で低気圧が急速に発達し、この低気圧の後面(西側)から非常に冷たい寒気が南下してきました(図1)。

図1 地上天気図(左:1月7日15時)と予想天気図(右:1月8日9時の予想)
図1 地上天気図(左:1月7日15時)と予想天気図(右:1月8日9時の予想)

 気象衛星画像では、佐渡沖に低気圧の渦巻きの雲があり、その西側の日本海西部には、強い寒気の吹き出しを示す筋状の雲があります(タイトル画像参照)。

 日本海の発達中の低気圧は、8日には北日本の東海上に進み、日本付近は西高東低の冬型の気圧配置となります。

 「西高東低の気圧配置」は、冬に多い気圧配置なので、「冬型の気圧配置」とも言いますが、大きく分けて「押し」と「引き」があります。

 シベリア高気圧が強いために等圧線の間隔が狭まり、押し出されるように季節風が吹く場合が「押し」で、長続きする持続型です。

 これに対し、日本の東海上の低気圧が発達したために等圧線が狭まり、引き込まれるように季節風が吹く場合が「引き」で、各地に暴風や大雪をもたらす反面、この荒天は一時的なもので、瞬発型です。

 今回の「西高東低の気圧配置」は、「引き」とみられます

 このため、1月7日は、北日本から西日本では雪を伴った非常に強い風が吹き、暴風雪や暴風、高波、大雪となりましたが、1月8日になると、西日本から等圧線の間隔が広くなり、暴風雪や暴風も収まってくる見込みです。

日本海側の大雪

 1月8日になると暴風雪や暴風は収まってくるといっても、西高東低の気圧配置は続きますので、日本海側の大雪は続きます。

 風が強い場合の大雪は山地に雪が多い山雪型ですが、暴風が収まった場合の大雪は、平野部でも大雪となる里雪型となる可能性があります。

 里雪型は、人口が多い平野部での大雪で、影響が大きい大雪ですので、風が弱くなったからといって油断できません。

 1月8日から9日の48時間予想降雪量は、北日本の日本海側から北陸、西日本の日本海側で60cmを超え、特に北陸西部(福井・石川・富山の各県)では2mを超す大雪の可能性があります(図2)。

図2 48時間予想降雪量(1月8~9日)
図2 48時間予想降雪量(1月8~9日)

 日本海側の地方では、表層雪崩(新雪雪崩)など、雪に対して厳重な警戒が必要です。

 また、普段は雪の少ない九州や四国、紀伊半島でも10cm以上の積雪が予想されていますので、雪に対して警戒が必要です。

今冬3回目の強い寒気の南下

 日本列島に南下する寒気の目安として、上空約5500mの気温が使われます。

 上空約5500mの気温が氷点下30度以下なら強い寒気、氷点下36度以下なら非常に強い寒気で大雪の可能性もあります。

 令和2から3年(2020から2021年)の冬は、これまで、2回強い寒気が南下しています。

 1回目は12月14日頃から南下したもので、日本海側を中心に大雪となり、群馬県みなかみ町藤原では12月15日16時から17日16時までの48時間に199cmも降るなど、日本海側を中心に記録的な大雪となっています。

 集中豪雪の影響で、新潟・群馬県境の関越自動車道では、16日夜からの交通障害で1000台以上の車が立ち往生したことから、新潟県では自衛隊に災害派遣を要請しています(後に2000台以上の車が立ち往生していたことが判明)。

 2回目は年末年始の強い寒気の南下で、西日本にも寒気が下りてきましたので、北日本の日本海側や北陸だけでなく、山陰地方まで大雪となり、鳥取県大山では12月30日から31日の2日間に104cmの降雪がありました。

 そして、今回は3回目の強い寒気の南下で、特徴は西日本中心の南下です(図3)。

図3 上空約5500mの気温分布の予想(上は1月8日夜、下は1月9日夜)
図3 上空約5500mの気温分布の予想(上は1月8日夜、下は1月9日夜)

 氷点下36度線の南下に着目すると、今回の3回目は、東日本では12月14日頃からの1回目、年末年始の2期目とほぼ同じ緯度までの南下です。

 しかし、西日本では1回目より2回目、2回目より3回目のほうが、より低緯度まで南下しています。

 つまり、寒気南下で特に警戒が必要なのは西日本です。

 そして、氷点下42度以下という非常に強い寒気は足早に北日本を通過しますが、大雪の目安となる氷点下36度以下の強い寒気はなかなか北上しません。

 全国的に気温が低い日が続きます。

 図4は、全国の冬日(最低気温が0度未満)と真冬日(最高気温が0度未満)の観測地点数をグラフ化したものです。

図4 全国の冬日と真冬日の観測地点数(12月1日から1月7日)
図4 全国の冬日と真冬日の観測地点数(12月1日から1月7日)

 1月8日は、冬日、真冬日とも、今冬最多の観測をするかもしれません。

 寒さに対して注意が必要です。

東京と福岡の気温の推移

 東日本の代表である東京の最高気温と最低気温の推移をみると、強い寒気の南下の影響は、1回目が一番大きく、3回目は、2回目と同程度のものと予想されています(図5)。

図5 東京の最高気温と最低気温(1月8日から14日は気象庁、1月15日から23日はウェザーマップの予報)
図5 東京の最高気温と最低気温(1月8日から14日は気象庁、1月15日から23日はウェザーマップの予報)

 これに対し、西日本の代表である福岡の最高気温と最低気温の推移をみると、強い寒気の南下影響は、1回目より2回目、2回目より3回目のほうが大きくなる予想です(図6)。

図6 福岡の最高気温と最低気温(1月8日から14日は気象庁、1月15日から23日はウェザーマップの予報)
図6 福岡の最高気温と最低気温(1月8日から14日は気象庁、1月15日から23日はウェザーマップの予報)

 ただ、この強い寒気の南下は長続きせず、東京も福岡も来週になると最高気温・最低気温ともに平年を上回ってきます。

西高東低の気圧配置のときの風向

 日本付近が西高東低の気圧配置となると、北西の季節風が強まるということがよく言われます。

 しかし、西高東低の気圧配置が強まったとき、全国一斉に北西の風が強まるわけではありません。

 冬型の気圧配置が強まると北陸地方を中心とした日本海側では北西の風が吹き大雪となりますが、北西の季節風は、本州を通過するときに地形の影響を受け、局地的に特定の風向となることがあります。

 例えば、静岡県浜松では日本アルプスの巨大な山塊をこえることができずに回り込んで西風になります。

 さらに、和歌山市付近でも東西にのびる紀ノ川沿いに西風となります。

 また、西高東低の気圧配置のときの風は、大きく見れば、本州付近で北西の風で通過したあと、向きを北から北東に変え、南西諸島へは北東の風となって吹き出しています。

 つまり、西高東低の気圧配置が続くと、日本海側の地方は北西の風が吹きますが、太平洋側の一部の地方では地形の影響で風向が変わることがあります。

 また、奄美大島や沖縄諸島など南西諸島では、北から北東の風により波の高い状態が続き、離島では強風と波浪のため船舶が欠航して、生活物資の輸送に影響が出ることがあります。

 同じ西高東低の気圧配置であっても、各地の風向は異なります。

 日本はそれだけ気象が複雑ですが、その分、きめ細かい注警報や天気予報が行われています。

 最新の気象情報の入手に努め、警戒してください。

タイトル画像、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図4の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図5、図6の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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