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有事の際に「韓国を占領、平定する」訓練に明け暮れる北朝鮮

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
人民軍戦車装甲兵連隊の訓練(朝鮮中央通信から)

 昨日(3月24日)は日曜日にもかかわらず金正恩(キム・ジョンウン)総書記は朝鮮人民軍の近衛ソウル柳京守第105戦車師団と直属第1戦車装甲歩兵連隊を視察していた。

 近衛ソウル柳京守第105戦車師団は今月13日に行われた人民軍戦車兵大連合部隊間の対抗訓練で優勝した戦車師団である。

 金総書記の視察にはいつものように軍のトップ3である砲兵局出身の朴正天(パク・ジョンチョン)党中央軍事委員会副委員長と強純男(カン・スンナム)国防相、それに李永吉(リ・ヨンギル)現総参謀長が随行していた。

 今朝の朝鮮中央通信の報道によると、金総書記は呉炳哲(オ・ビョンチョル)師団長(上将)から師団の攻撃および防御作戦計画に対する報告を受けた後、戦闘文書を検討しながら師団管下連合部隊の作戦戦闘任務と戦闘訓練方向について指示を与えていた。師団の部屋の壁にはモザイクのかかった作戦地図などが掲げられていた。

 この後、師団直属第1戦車装甲歩兵連隊が金総書記の立ち会い下、「障害物を克服し、強固な防御界線を一気に突破する訓練」(朝鮮中央通信)を行った。

 韓国軍は近衛ソウル柳京守第105戦車師団が1950年の朝鮮戦争でソウルに一番乗りし、韓国の中央庁舎に北朝鮮の国旗をはためかせた戦車部隊であることから神経を尖らしている。

 特に金総書記が昨年12月の党中央委員総会での報告で「有事の際に核戦力を含む全ての物理的手段と力量を動員して南朝鮮の全領土を平定するための大事変の準備に引き続き拍車をかけなければならない」と発言したのを皮切りに今年も1月8日に軍需工場を視察した際に「大韓民国が我が国家を相手にあえて武力使用を企図しようとしたり、我々の主権と安全を脅かそうとしたりするなら、そのような機会が与えられるなら、躊躇することなく手中の全ての手段と力量を総動員して大韓民国を完全に焦土化せよ」と発言し、さらに1月15日に開かれた最高人民会議での演説でも「朝鮮半島で戦争が起こる場合には、大韓民国を完全に占領、平定、収復し、共和国領域に編入させる問題を反映することも重要である」と強調していたことから今年は例年以上に警戒感を募らせている。

 北朝鮮が韓国を「最も危険な第一の敵国、不変の主敵」と規定し、「有事の際に大韓民国の領土を占領、平定することを国是として決定している」(金総書記の2月8日の人民軍創建76周年国防省での演説)からである。

 不気味なのは、米韓合同軍事演習には毎年ミサイルを発射して対抗していたが、今年は明らかにその対応が異なっていることだ。

 米韓合同軍事演習が3月4日に始まると、北朝鮮は6日に前線に配置されている「重要任務遂行部隊」による訓練を行った。配信された写真の何枚かに軍事境界線を突破し、韓国の仮想歩哨所を攻撃している写真が含まれていた。

 続いて7日には大連合部隊の砲撃訓練が2日間にわたって行われた。狙いはソウルなど首都圏であることは明白だ。

 実際に「朝鮮中央通信」は「敵の首都を打撃圏内に置いて戦争抑止の重大な軍事的任務を遂行している国境線付近の長距離砲兵区分隊の威力示威射撃で始まった」と伝えていた。

 そして、13日には戦車部隊の訓練を行った。訓練には「世界で一番」と金総書記が誇っている新型戦車も登場していた。人民軍はいざ開戦となった場合、韓国よりも2倍も多い戦車(4100両)を押し立てて進軍、南下することになっている。

 加えて、15日には空挺部隊(落下傘部隊)による訓練も行われた。敵地に上陸し、敵の主要軍事対象物を一気に占領するための訓練だった。

 さらに、18日には砲兵部隊による超大型放射砲(600mm)発射訓練が行われた。

 放射砲とは多連装ロケットを指すが、北朝鮮は事実上、短距離弾道ミサイルに近いこの超大型放射砲を同時に6発発射してみせた。

 超大型放射砲の最大射程距離は380kmで、平壌から発射されれば、忠清南道渓龍の陸海空軍本部に、黄海道から発射されれば、慶尚北道ソンジュにあるTHAAD基地も射程圏に入ることから後方基地を含め韓国の基地を叩くための訓練であったことは明らかだ。

 北朝鮮の一連の軍事訓練が「大韓民国を完全に占領、平定する」(金総書記)作戦計画に則って行っていることがわかる。

(参考資料:米韓合同軍事演習に対抗し北朝鮮が金総書記立ち会いの下、「南侵訓練」も)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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