小室哲哉、歌う。ソロによるピアノコンサートが持つ意義。2016年のプロデュースワークへの展望とは?
音楽家、小室哲哉による活動が活発化している。2015年春、TM NETWORK30周年プロジェクトを終え、夏からスタートしたglobe20周年プロジェクトへ突入した小室哲哉は、2016年はどこへ向かっていくのか?
そのヒントは、年末に国内主要都市をツアーしているソロとして初のディナーショー・ライブにあるのかもしれない。タイトルで提示したコンセプトは『PIANO BIOGRAPHY』。いわゆる90年代、国民的大ヒットとなったTKヒット曲をピアノによるアレンジでプレイするステージ。昨今の、国民的ヒット曲が生まれづらくなったといわれる多様化した音楽シーンにおいて、ヒット感覚を取り戻すべく、自身のメロディーの記録=バイオグラフィーの再検証に取り組んだ小室哲哉の最新ワークス。小室哲哉研究をライフワークとする筆者は、ヒルトン東京お台場の会場に、客席にまぎれ“潜伏”してみた。
会場には、小室哲哉の熱狂的なファンはもちろん、TKヒット曲を思春期に体験したであろうカップルの姿も多くみられた。なるほど、音楽の楽しみ方はライブハウスやコンサート・ホールだけではないというワケだ。歌舞伎や演劇、クラシックを楽しむように、大人が非日常を求め、ポップミュージックを楽しむ場というのは、あらためて需要がありそうだ。
数年前、セリーヌ・ディオン、マイケル・ブーブレ、ホイットニー・ヒューストなどをプロデュースした世界的な音楽プロデューサーのデイヴィッド・フォスターが、自身のヒット曲をトリビュートするスペシャルなコンサートが世界的に話題となっていた。こういった趣向あるコンサートを小室哲哉でも観てみたいなと思った。願わくば、安室奈美恵、篠原涼子、坂本龍一、H Jungle with t、trf、globeなどが参加した1995年におこなわれた小室哲哉オーガナイズによるフェス『95 TK DANCE CAMP』の再演だ。
そんなプロジェクトへの助走のようにも感じられる今回の小室哲哉によるピアノ・コンサートは、高松、東京公演を終え、残りは名古屋、福岡、大阪公演を残すばかり(チケット販売中)。しかもクリスマス前後というプレミアムなタイミングだ。なお、このピアノコンサート・シリーズは、毎回、選曲に凝りまくり、毎度セットリストが異なるという。そんな要望に応えるべく敏腕ギタリストにはTMN時代の盟友、葛城哲哉を迎え、東京公演には坂本美雨がスペシャル・ゲストなヴォーカリストとして数曲参加していた。
<小室哲哉 ピアノコンサート 2015 スケジュール>
小室哲哉『ピアノコンサート&ディナー』
2015年12月8日(火)
高松市 JR ホテルクレメント高松 3F「飛天の間」
出演:小室哲哉、葛城哲哉
小室哲哉『PIANO BIOGRAPHY』
2015年12月18日(金)
東京 ヒルトン東京お台場「ペガサス」
出演:小室哲哉、葛城哲哉 スペシャルゲスト:坂本美雨
小室哲哉『クリスマスピアノコンサート&ディナー』
2015年12月23日(水・祝)
名古屋市 キャッスルプラザ名古屋 4F「鳳凰の間」
出演:小室哲哉、葛城哲哉
小室哲哉『PIANO BIOGRAPHY』
2015年12月24日(木)
福岡市 ホテル日航福岡「都久志の間」
出演:小室哲哉、葛城哲哉
小室哲哉『PIANO BIOGRAPHY』
2015年12月25日(金)
大阪市 ホテル日航大阪「鶴の間」
出演:小室哲哉、葛城哲哉
東京公演のセットリストは、100分で10数曲+メドレーという内容だった。小室自身もMCで話していたが、ついついサービス精神からトークが長引き、長丁場になりがちだという。参考までにセットリストも明記しておこう。注目すべきは、1990年に公開された角川映画の大作『天と地と HEVEN AND EARTH』の主題歌や、TMNのクリスマスソング「DREAMS OF CHRISTMAS」を小室哲哉が歌唱したことだ。さらに、ゲスト・ヴォーカリストとして迎えた坂本美雨によるTKヒット曲の歌唱「I’m proud」、「GET WILD」、「My Revolution」もレアだった。自らのヒストリーを振り返ることの少ない、小室哲哉による自身の記録=バイオグラフィーの再検証。そんな貴重なる機会を垣間みれたピアノコンサートだった。公演後、出口でオーディエンスをひとりずつ握手しながら見送るというスタイルも斬新だった。なかには感動のあまり、涙するファンもいたようだ。
<小室哲哉『PIANO BIOGRAPHY』@ヒルトン東京お台場 セットリスト>
DEPARTURES
〜MC〜
I’m proud feat. 坂本美雨
The Rose feat. 坂本美雨
〜MC〜
TK Solo(ヒット・メドレー) 〜 天と地と HEVEN AND EARTH
〜MC〜
葛城哲哉 Guiter Solo 〜 愛しさと せつなさと 心強さと 〜 Time to count down
CAROL組曲
DREAMS OF CHRISTMAS feat. 葛城哲哉
GET WILD feat. 坂本美雨
Precious Memories feat. 坂本美雨
My Revolution feat. 坂本美雨
LIGHTS OUT
注目は、400万枚をセールスしたglobeの1stアルバム『globe』に収録されたジャジーなテイストを持つ大人のバラード、「Precious Memories」の坂本美雨によるカバー(globeカバーアルバム『#globe20th』にも収録)。そして、ピアノによるラストナンバー「LIGHTS OUT」を聴けたことだ。NHK Eテレで放送された、漫画家・浦沢直樹と共演した『ミュージックポートレイト』でも語っていた、小室自身思い入れの強いナンバーだ。大人でも楽しめるTK曲の幅の広さを感じられる選曲だ。
Twitterでのファンとのやりとりにおける発言から、小室哲哉の2016年は、プロデュースワークが増えることを明言している。すでに、今夏大規模におこなっていたオーディションなどで次世代アーティストの発掘に成功しているのだろうか? ピアノコンサートで歴史的名曲を生で体感することができた奇跡的ライブに感謝しながら、来年の活動に注目していきたい。