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寒冷低気圧で3日連続の大気不安定 大気が不安定となる条件は上空に寒気が入っているだけではない

饒村曜気象予報士
雷雨(提供:AFRC_092/イメージマート)

ゴールデンウィークの天気

 令和3年(2021年)のゴールデンウィークは、上空に5月としては非常に強い寒気が南下したため大気が不安定となりました。

 このため、各地で積乱雲が発達し、局地的な強い雨や落雷、竜巻等の突風が相次ぐゴールデンウィークとなっています。

図1 地上天気図と上空5500メートル付近の寒気(5月2日21時)
図1 地上天気図と上空5500メートル付近の寒気(5月2日21時)

 図1の、上空5500メートル付近で氷点下24度以下という強い寒気は、寒冷低気圧に伴って南下してきたものです。

 寒冷低気圧は、動きが遅いという特徴に加え、構造が変化しにくいという特徴があります。

 このため、寒冷低気圧に伴う雷は、続くことが多く、諺の「雷3日」というのは、このときの天気をさしていたと考えられます。

 5月3日も、寒冷低気圧が弱まりながら東進しているといっても、まだ、関東から東北地方を通過したわけではありません(図2)。

図2 上空5500メートル付近の寒気の予想(5月3日9時)
図2 上空5500メートル付近の寒気の予想(5月3日9時)

 関東・北陸から東北地方は、日中の強い日差しによって大気下層が温められるため、午後からは大気がより不安定となり、積乱雲が発達して雷が発生する確率が高くなります(図3)。

図3 発雷確率(5月3日昼過ぎ)
図3 発雷確率(5月3日昼過ぎ)

4つの条件

 大気が不安定となる条件は4つあります。

 上空に寒気が入ってくる場合が良く知られていますが、これだけではありません。

 また、下層に暖気流入の場合と、下層に水蒸気が多く流入する場合も大気が不安定となります。

 水蒸気は大気の温度が高くないと多くを含むことはできませんので、水蒸気が多く流入する場合は、暖湿気が流入する場合と言い換えることができます。

 さらに、上空に乾いた空気(乾気)が入ってくるときも大気が不安定となります。

 上層が乾燥している空気が上昇すると、100メートルにつき約1度の割合で気温が下がりますが、下層が湿っている空気が上昇すると、水蒸気が飽和して水滴に変わるため熱を放出しますので、気温が下がる割合は100メートルにつき約0.5度となります。

 このため、上層が乾き下層が湿っている空気が一緒に上昇すると、下層の方がより気温が下がり、上層に寒気が入ってきた場合と同じような現象になるからです。

 なお、気象予報士試験では、寒気流入では問題が簡単になるため、乾気流入の問題の方が多く出題されています。

 この大気が不安定となる4つの条件のうち、1つでもあれば大気が不安定となるのですが、複数あれば、より大気が不安定となります。

 ゴールデンウィーク中の大気不安定は、上層に寒気流入と下層に暖気流入が主な要因と考えられます。

 日射で地面が暖められると、大気がすぐに不安定となり、積乱雲が発達します。

 5月3日の憲法記念日も、晴れていても、お出かけは雷雨や突風に注意が必要です。

図1、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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