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今年度先手番で17勝1敗の藤井聡太挑戦者(19)エースの相掛かり採用 竜王戦七番勝負第1局1日目終了

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月8日。東京都渋谷区・セルリアンタワー能楽堂において第34期竜王戦七番勝負第1局▲藤井聡太三冠(19歳)-△豊島将之竜王(31歳)戦1日目の対局がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 対局開始に先立つ振り駒の結果、先手番は藤井挑戦者と決まりました。

 藤井挑戦者の今年度成績は31勝6敗(0.838)。それだけでも驚くべきハイアベレージですが、さらに先手番に限ると、なんと17勝1敗(0.944)です。

 藤井挑戦者が前回先手番で敗れたのは6月29日・30日に指された王位戦七番勝負第1局▲藤井-△豊島戦でした。

 王位戦第1局のあと「藤井先手で8か月ぶりに負け」と言われたわけですが、そこからまた3か月以上、藤井三冠は先手番で負けてないことになります。

 叡王戦五番勝負最終第5局は振り駒で藤井先手に。結果は藤井勝ちで史上最年少三冠誕生となりました。

 叡王戦五番勝負は結果的に、全5局、すべて先手の側が勝ったことになります。

 本局、藤井挑戦者はほぼ負けなしの先手相掛かりを採用しました。

 盤上は難解な序中盤。盤外では豊島竜王が手堅く定跡どおりフルーツの盛り合わせを頼んだのに対して、藤井挑戦者が選んだ紫芋モンブラン・ハロウィン特別版が話題となりました。

 藤井挑戦者は飛車の動きで2歩を得て実利を得る一方、その飛車は歩越しで窮屈なポジションにいます。

 43手目。藤井挑戦者は▲6六金。7七にいた守りの金を、力強く6六へと押し上げます。相掛かりという戦型で▲6六金という符号が出るようになったのは、いかにも現代調という感があります。叡王戦最終局でも指された▲6六金は、藤井叡王誕生へとつながりました。

 ただし本局では現在のところ形勢はほぼ互角か、あるいは後手番の豊島竜王がわずかにペースをにぎっているのではないかとも見られています。

 18時。豊島竜王が44手目を封じることが決まり、立会人の中村修九段が声をかけます。

中村「それでは定刻となりましたので、次の手を封じてください」

 ここからも持ち時間が許す限り、いくらでも考えるのは自由です。豊島竜王はすぐに「封じます」とその意思を示しました。

 明日は朝9時に封じ手が開封され、2日目の対局が始まります。 

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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