男子バレー世界選手権、キューバ戦へ。カギはサーブ。日本代表で「最も嫌なサーブを打つ選手」とは
勝敗のカギを握るサーブ
バレーボールの勝敗はサーブで決まると言っても過言ではない。
東京五輪、ネーションズリーグで男子バレー日本代表が見せた戦いは、まさにそれを証明するものだった。
平均身長だけを見れば決して優位ではない日本が、主導権を握るためにもまずはサーブで攻めること。ミスを恐れるのではなく、リスクを負っても攻める。その姿勢が徹底されてきたことが、近年の好成績につながった。
特に“ビッグサーバー”と呼ばれる、1本のサーブで流れを引き寄せ、どんな劣勢からも跳ね返す力を持った選手の存在は大きく、日本代表では主将の石川祐希や西田有志がまさにビッグサーバーと呼ばれ、ネーションズリーグでも全体の2位、3位にランクインする効果を発揮した。
特に2019年のワールドカップ、カナダ戦の終盤にリリーフサーバーとして登場し、5本のサービスエースという圧巻のパフォーマンスを発揮した西田は「サーブが最大の武器」とみられることも多いが、実際日本代表で共にプレーする選手たちは、自チームのサーブ力をどう見るのか。サーブレシーブを担う3人の選手に聞いた。
「23対23でサーブ順が回ってきたら『嫌だな』と思う選手」
まずリベロの小川智大が「一番嫌」と答えたのが、セッターの関田誠大だ。
石川や西田のように強烈なジャンプサーブではないが、的確にコースとターゲットを狙い、相手の守備を崩して連続得点につなげるチャンスをつくる。小川曰く「1本ではなく何本も同じ質のいいサーブを打ち続けられることがすごいし、受け手としては最も嫌」と言うように、関田のサーブは世界選手権のカタール、ブラジル戦でも大きな武器となった。
ではアウトサイドヒッターはどう見るか。昨年の東京五輪に出場した大塚達宣、髙橋藍は共に同じ名前を挙げた。石川だ。
髙橋はこう言う。
「西田選手のサーブは海外トップレベルで、体重が乗ったベストサーブはコースにいても取れない。ものすごく威力です。でも、石川選手のサーブは圧だけでなく回転や捻り、『ここに来る』というコースに入って正面にいても取れない。あの微妙な調整力はすごいと思うし、試合の中でどれだけ調子が悪くても1本のサーブ、サービスエースですべて帳消しにするぐらい、勝負所で放つサーブがすごい。もしも自分が相手チームで23対23という場面で祐希さんのサーブが回ってきたら、素直に『嫌だな』と間違いなく思います」
大塚も同様に、石川のサーブが「最も取りづらい」と述べ、同時にもう1人の名を挙げた。
「僕は祐希さんと同じか、それ以上に(宮浦)健人さんのサーブが嫌。サウスポーで独自の回転、手元でグイッと曲がるあのサーブは健人さんしか打てないんじゃないか、と思う独特なもので、最強でもある。(西田)有志さん、祐希さん、健人さん、まさに世界トップレベルのサーバーが3人もいる日本は、サーブが走ればどんな相手にも負けないと、自分もその中にいるからこそより強く感じています」
1次リーグ最終戦で対峙するキューバは、身体能力に優れた選手が揃い、ベストな状況で攻撃させれば、手も足も出ない状況に陥りかねない。だが裏を返せば、サーブで攻め、相手の攻撃を絞らせれば日本がここまで磨いてきたブロック&レシーブで切り返し、西田、石川の攻撃でブレイクを重ねるチャンスは高くなるはずだ。
間もなく始まる大一番、日本のサーブがキューバに対してどれだけ効果を発するか。関田、石川、そして大塚が「独特で最強」と称賛する宮浦のサーブが勝負所でどんなパフォーマンスを見せるか。注目だ。