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「イタい」「どん底に落ちたな」トランプ陣営、タイム誌の表紙のグレタさん画像をトランプ氏のにすげ替える

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
トランプ氏が表紙に! 写真:theguardianofdemocracy.com

 「とてもバカげている。グレタはアンガーマネジメント(怒りを抑えること)問題に取り組まなきゃならない。そして友達と古き良い映画を見に行ってこい! 落ち着け、グレタ、落ち着け!」

 トランプ氏はツイッターで、米誌「タイム」の「今年の人」に史上最年少で選ばれた16歳の環境活動家グレタ・トゥンベリさんをこう皮肉った。

 

 グレタさんも黙ってはいなかった。ツイッターの自己紹介文を「アンガーマネジメント問題に取り組んでいるティーンエージャー。今は、落ち着いて、友達と良い映画を鑑賞中」と変更して、トランプ氏に応酬したのだ。

 しかし、グレタさんを巡る話はこれ以外にもある。

 トランプ陣営の公式ツイッターアカウントの1つ、Trump War Roomが「タイム」の表紙に登場しているグレタさんの頭部画像を、フォトショップで、トランプ氏の頭部画像にすげ替えるという何とも大人げない操作を行って、批判を浴びているのだ。

 以下がその画像。グレタさんの小さな身体に、トランプ氏の頭部が乗せられているひどい画像だ。

 頭部がトランプ氏にすげ替えられた表紙には、トランプ氏の名前の下に「選挙公約を守る力」とあり、ツイートには「選挙公約を守るということでは、“今年の人”はただ1人しかいない」という大言壮語とともに、「好景気、記録的雇用創出、歴史的減税、アメリカ第一の貿易交渉、ISの破滅、壁建設」とトランプ氏が達成したと豪語しているところの公約が列記されている。

 当然のことながら、ツイッターでは、この頭部すげ替え表紙に対し、以下のような声が上がっている。

「悲しいことだ。アメリカの大統領のエゴはとても脆いから、自分が欲しがっている賞をもらった小さな女の子に嫉妬している」

「こんなイタいもの、見たことがない」

「“今年の人”なら、弾劾に値することなどしないぞ」

「トランプが果たしたこと。白人至上主義、人種差別、女性差別、腐敗、ホワイトハウスで金儲け、米国の憲法を破壊」

「アスペルガー症候群の16歳の少女を公然とあざけるとは気分が悪い。彼はどん底に落ちたな! 悲しいことだ!!」

 フェイクな「タイム」の表紙が作られたのは今回が初めてではない。米紙ワシントン・ポストの記者によると、トランプ氏所有の7箇所のゴルフクラブに、フォトショップで表紙をトランプ氏の画像に変えた「タイム」が飾られていたという。そのため、「タイム」は、加工された表紙の写真を外すようトランプ氏のゴルフクラブにリクエストした。

 フェイクニュースを批判するトランプ氏だが、「タイム」のフェイクカバーを作ることは手慣れていたということか。

 それにしても、過去に何度も「タイム」の表紙となり、2016年には“今年の人”にも選ばれたトランプ氏の今もなお続く「タイム」への執着には驚かされる。

 トランプ氏にインタビューしたという米紙ワシントン・ポストのエディターがこんなことを言っていた。

「トランプ氏のオフィスを訪ねた時、まず最初に、彼の記事が掲載されている世界中の雑誌がズラリと並んでいる部屋に案内されました。その時、トランプ氏は自分のエゴをコントロールできない人なんだなと感じました。彼ほど人々に“自分はすごい人間なんだ”と思わせようとしている人は他に思いつきません」

 メディアを通じて、人々に“すごい人間なんだ”と思わせたいトランプ氏。しかし、多くのメディアを敵に回している今となっては、頼みの綱は「タイム」のフェイクカバーしかないのかもしれない。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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