雇用改革「生涯現役」に戦々恐々とする人たち
生涯現役時代の到来か
安倍首相は3日、日本経済新聞の取材に対し「生涯現役時代の雇用改革を断行したい」と発言しました。総裁選で勝った暁には、1年で生涯現役時代にふさわしい雇用制度を構築すると強調したのです。
「定年退職」という概念を撤廃し、生涯現役という雇用改革を進めていく。そうなった場合、日本企業の現場はいったいどうなっていくのでしょうか。
医療技術が猛スピードで進化し、寿命が延びること、そしてその結果「人生100年時代」に突入することは周知の通りです。にもかかわらず、いまだにピンと来ていない人がいることも事実。その代表格が「働かないおじさん」たちと言えるでしょう。
「働かないおじさん」とは?
昨今「働かないおじさん」という表現が、ちまたに溢れかえっています。50~60代の男性管理職で、30代~40代の社員よりも高給取りなのに、会社への貢献度が低い。貢献度が低いだけならともかく、貢献度ゼロの人であったり、部下の足を引っ張って実質貢献度マイナスの人。こういった方々を総称して「働かないおじさん」と呼ぶそうです。
「働かないおじさん」に共通している価値観は「逃げ切り」。いまだ旧来の「定年」という概念に固執し、「定年間近なオレを、あんまりこき使うなよ」的な考え方で日々ダラダラと仕事をしています。
「5-0」で負けているリーグ最下位のサッカーチームで、残り10秒の時間帯で足を止めてしまった選手たちのテンション――と表現すればわかりやすいでしょうか。そのようなテンションで、日々オフィスで過ごしているのです。
覇気もないし、誰かに貢献する気力もない。それどころか、成功の呪縛に囚われ、安っぽいプライドも持ち合わせている人もいます。
「俺は聞いてない」
「年寄りの話にも耳を傾けるもんだ」
と、組織統制の視点よりも、自分の承認欲求の視点にばかり意識を向けているベテラン社員は、組織の「お荷物」的な存在となっていくでしょう。
以前なら、「あと3年の我慢だ」「あと5年待てばいなくなる」と周囲も受け止めていたでしょうが、「生涯現役時代の雇用改革」が推進されれば、悠長なことは言ってられません。
「まだご自身にバリューがあるか、マーケットに問うていただきたい」
現役の経営幹部はそう考えることでしょう。世代など関係がありません。現代において正しいマーケットバリューを維持できているかどうか、すべての人が問われる時代になったのです。
企業側としては、そのほうが都合がいい。マーケットバリューの高い人を雇用し、バリューに適正な報酬を支払えばいいからです。
このように、生涯現役時代の雇用改革が断行されれば、戦々恐々とする人は多くいることでしょう。「人生100年時代」という表現にピンとこない人も、さすがに「生涯現役時代」という言葉には反応せざるを得ないからです。