現代の農業の問題・課題を解決するには?
※最初にお伝えしておきますが、
今回の記事の内容は現実的では無い考え、理屈も含まれています。
極端な考えではありますが、そこから現実的な方法を考えるキッカケになればと思い書いてみました。
『作り過ぎ』という問題を解決するには
遅くなりましたが前回の記事
現代の農業の問題は『〇〇過ぎ』
この続きを書いていきます。
『減らす』という単純なことが出来ない理由
作り過ぎなら生産量を減らせば良い。非常にシンプルな解決策です。
しかし、この簡単な事が出来ない複雑な理由が、食糧生産が仕事という小さな枠ではなく、現代では地域や国を超えた巨大なビジネスになっていることにあります。
現代の物流は海も国境も越えて繋がっています。
そしてその繋がりでビジネスを展開する大きな企業があり、一企業だけでなく国策として国の都合・事情も関わってきて非常に大きく複雑な仕組みになっています。
誰かが作る量を減らしても、その分他の誰かが作った物が流通するだけで、
誰の収入が減って誰が儲かるのかだけということです。
それが現代では更にタチの悪いことに、価格が下がってでもとにかく沢山売らなければならない状況、あるいはとにかく沢山安く作って他の人(国や地域)の顧客を奪ってでも売って稼ぐということが常態化していますし、国民が飢えたり、環境を悪化させてでも輸出を優先して外貨を稼ぐということさえ行われています。
その結果が、
現代は100億人分以上(120億人分以上とも言われています)の食糧を作っているのに、
国連世界食糧計画(WFP)などの報告書によると世界人口の1割にあたる最大8億1100万人が飢餓に苦しんでいるとされている状況です。
有り余っているから安くて豊かな食生活を送れる
1度上がった生活レベルを下げるのは難しい。
食べ物以外のこと全般に言えるのですが、便利で快適な現代の生活が日々大量の資源消費によって成り立っていることは、当たり前のことになりすぎていて、多くの人は意識することさえ無いと思います。
現代の安定して多様な食生活を送り、食べることを楽しむことが出来るのは、食品が安定的に大量に生産されているおかげです。
食糧は余るほどにあるから安価に買うことが出来る。食糧の供給が減れば価格は上がり消費者の生活を圧迫します。
それに現代では上述したように複雑で大きなビジネスになっていることもあり『先物取引』のように、実物の商品のやりとりだけでなく、投資の対象にすらなっていて、農業と食の問題を更に複雑にしています。
現実的ではないけど即効性の解決案
これらの理由で、作りすぎた物を減らすというシンプルな事ができません。
仮に、世界中の国々に強制できる権限での生産と分配の調整を行い、先進諸国の人々の食生活の制限を伴えば、現在の飢餓問題は完全に解決するし、環境負荷もいまよりずっと減らして持続可能な社会にしていけます。
でもそんなことは出来ません。多くの人は自分が一番大切で次いで家族や恋人、友人知人と優先順位があり、顔も知らない他国の人の為に、ある程度の寄付や支援は出来ても、自分の生活まで犠牲にすることはできません。
現実的ではないけど国内での解決案
世界レベルでの話となると、不可能にも程があるので範囲を国内で考えてみます。
農産物の輸出入を減らす。
…これも貿易摩擦やらなんやらで実現はきわめて難しいですがそれはひとまず置いといて、
海外からの食糧が入ってこなくなれば、国内での食糧が不足して値段が上がります。
農産物の価格が上がれば農家が儲かるようになり、そうなれば農家も増えます。
これもシンプルな話で、儲かるならやる人は増えるし、食糧の輸入を減らせば食糧自給率は上がります。後継者不足問題も自給率が低いという問題も解決します。
以前、クラブハウスで慣行農法の農家さんたちに
『有機農法についてどう思いますか?』という質問が出たときに、
『儲かるならやります!』と言っている農家さんがいらして、それが本質だと感じました。
儲かるなら自然に広がっていくんです。有機農産物の生産を拡大したいなら買い取り価格を3倍にすれば、2050年までに25%なんてこと言わず、数年で一気に増えるでしょうね。
3倍の値段では一般的には売れないのでその差額分を税金で補填するなどの必要はあります。
減らす事が難しいならせめて増やさない
もう少し現実的な話をするなら『新規就農者を無闇に増やさない』ことだと思います。
日本の農業従事者の平均年齢は65歳以上と超高齢化していて、後継者不足が深刻だと言われていますが、そもそもなぜ後継者不足になるのか?
『儲からない、食っていけないから』です。
なぜ儲からないのか?については前回の記事や上述したとおりです。
何度も言いますが、儲かるならやる人は勝手に増えます。
志ややりがいだけで続けて行くにはあまりにも厳しいから、増えずに減るんです。
じゃあ、なんで行政は助成金を出してまで新規就農者を増やそうとしているのかは、
また別の記事で考察しようと思いますが、
言い換えるなら助成金出さないとやる人が増えない職業ということでもあります。
農業は3つのタイプに分けて考える
農業への関わり方は大きく3タイプに分けて考えてどれをするか選ぶのが良いと思っていて、それが食い物にされてしまう新規就農者を増やさないということにも繋がります。
(食べ物を作る仕事なのに食っていけないとか、食い物にされるというのは皮肉な話です…)
①安価に安定的に大量生産して市場・飲食店・加工用需要を支える慣行農業
②高級食材を生産する職人気質の農業
③自給用の農産物を栽培する有機農業
この3つをはっきりさせずに農業を始めてしまうのがマズイです。
③の自然農のような有機農業は市場に出荷する薄利多売の大量生産には圧倒的に不向きですが、お金を掛けずに楽しみながらやるには向いていますし、自給用には十分な量を栽培できます。
逆に①の大量生産を行う慣行農業は売上げは大きく出来ますが、初期投資に数百万から数千万、毎年の運営にも数百万円というコストが掛ります。ベンチャー企業興すよりお金掛ります。
②は販売単価を上げることで①ほどお金を掛けずに大量に生産しなくても出来るけれど、販売方法やマーケティングに工夫が必要ですし、それだけの品質の農産物を作る技術も必要になります。
この3つのタイプをどのように混ぜたら自分のやりたい農業になるのかを考えてみると良いと思います。
ポジショントークのようになりますが、私は環境負荷の小さいやり方で、自給的農業をする人が増えて日常に食べる野菜は自分たちで栽培して、栽培が難しいものや、外食・加工食品には慣行農業の農産物を利用し、贈答用や美味しいものを食べたい時には高級農産物を利用するというようになれば、今よりも良い農業の形になるんじゃないかなぁと思っています。
作りすぎても無駄にならない農法もある
効率的な大量生産には不向きですが、自然農・自然農法といわれる無農薬・無肥料を中心とした農法であれば、自然環境への負荷は小さく、持続的な農業が可能です。
例えば、作りすぎたとしてもそれはそのまま畑の土に還すことで土地から過剰な養分を持ち出さずに済み、むしろ土が豊かになります。
持ち出す物はなるべく最小限にとどめて、投入する資材や手間も最小限にする。
究極的には種蒔きすらせず、野菜が自分から生えてくる『自然生え』という状態になれば、必要な管理は草刈りだけで済みます。
この農法は、放っておいても植物が茂る気候と土壌がある地域でしか行えませんが、幸いなことに日本の人が居住している地域の多くではその条件に合っています。
そして、幸か不幸か、こういった自然農を行うのに適した中山間地域や狭小農地は現在、耕作放棄になりつつあります。
成長から成熟へ
自給的農業を行いたい人が中山間地域やその近くに移住して自然農を中心とした農業を行う。
そういう人が増えれば、耕作放棄地問題、過疎化、里山や森林、土地環境の保全、など中山間地域の問題だけでなく、食糧自給率の向上にもなり、それは海外からの輸入に頼らない、外国の資源を収奪しないという、自国にも他国の環境にも良いことにつながります。
但し、お金を介した繋がりが減るのでGDPは下がります。
『経済成長』という言葉が呪いのように言われ続けていますが、人間としての本質的な豊かさと持続性を追求する『経済成熟』に移行すべき時だと思います。