韓国"処理水視察団" 「自国でも"正体"が明かされていない」 韓国左派系メディアが猛然と指摘
韓国から福島第一原発の処理水放出関連の視察団が来日している。21日から5泊6日で現地視察などの日程を消化し、韓国内での報告を行うという。
これが韓国でどう見られているのか。
やはりというべきか。尹錫悦大統領が日本の岸田政権と同意して進めているこのプロジェクト、韓国内では左派野党サイドから強い反発が出ている。同派系メディアの「オーマイニュース」は「(同視察団が)日本でメディアからかくれんぼするように逃げている」とし、じつは「視察団長以外の構成員が韓国でも明らかにされていない」点を伝えている。
韓国での「日本原発問題」の根深さ
「何をやっても批判のための批判はあるでしょう」
今月7日に韓国ソウルで開かれた日韓首脳会談がライブ中継された際、「聯合ニュースTV」のコメンテーターがこんな発言をしていた。
2022年5月10日に発足した右派尹政権。前左派政権からの「対日政策転換」の一環として行われたのが今回の「処理水視察団派遣」だ。
背景には「左派からの反発への対応」という面がある。
「尹政権の対日政策が『急進的すぎる』という意見はやはり韓国では根強いんです。政権誕生から1年を機に国内大手世論調査会社が共同で行った世論調査では『韓日首脳会談の評価』は『肯定的評価』が36%にとどまった。そういった中、尹政権側は「原発推進派」ですから、今回の視察団派遣の推進は『対立陣営への配慮』という面が強いものです」(韓国大手紙の元デスク)
筆者自身もこの言語を使って取材活動を続ける中、韓国内での日本の原発問題の「根深さ」について感じるところがある。
2011年の東日本大震災からその後の原発事故へ。結果出てきた「処理水」への関心。これは対日関連の諸問題として「領土問題」「徴用工問題」「慰安婦問題」「ホワイト国除外」と並んで話題に挙がってきたものだった。
あくまで韓国の反対陣営(おもに左派野党支持層)の主張を切り取って伝えるのなら、こういったことになる。
「日本側でも客観的事実が伝えられていないのだから、自分たちが指摘すべきもの」
重ねて、あくまで韓国の主張を切り取るなら、ということだ。
そういった枠組みの中で、韓国左派としては対立する右派陣営の大統領が「日本と組んで不透明な検査を行う」というところ。かなり厳しい視点からの批判が飛び出した。
21人の団員のうち公開されたのは「団長のみ」
左派系メディア「オーマイニュース」は22日にこういった批判を加えている。
「(韓国)政府が派遣した福島第一原発の処理水視察団が日本で公式スケジュールを開始した。しかし、視察団がメディア露出を極度に避けていると指摘されている。韓国公営放送(KBS)のジ・ジョンイク特派員の報道によると、23日、日本外務省に到着した視察団は、取材陣の接近を徹底的に避けた」
オープンな視察ではない。そういう目を向けているのだ。視察団がメディアから"逃れる"様子を「かくれんぼ」と評しながらこう伝えた。
「取材陣がバスに接近すると移動し、記者たちと追跡戦を繰り広げた。視察団を乗せたバスは、取材陣を避けながら、日本外務省内に入っていった。記者たちはその様子を遠くから見守るしかなかった」
さらに韓国でもこの視察団の「正体」が知らされていない点を紹介している。
「視察団は、韓国原子力安全技術院(KINS)の原発・放射線専門家19人と韓国海洋科学技術院(KIOST)の海洋環境放射能専門家など合計21人。この中でメディアに姿を現したのは柳国熙団長(以下写真)だけ。視察団は視察業務が妨害されるとして、名簿も公開していない。柳団長はメディア露出を避ける理由について質問されると、『専門家たちが視察に集中するため』と説明した」
調査の透明性が左派野党にとっては指摘すべき点、というところか。
韓国の与野党は、得票率0.7ポイント差で決着のついた2022年3月9日の大統領選以降もし烈な競争を続けている。
5月8日から3日間、韓国大手世論調査会社3社が合同で行った世論調査の結果では、尹大統領の職務遂行に対する肯定評価はわずか36%だった。
一方、来年4月の韓国総選挙についての質問では「現政権の基盤となる右派与党に力を与えるべき」という意見(44%)と、「権力を監視するために左派野党に力を与えるべき」という意見(43%)が激しく競い合っている状況にある。