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ワールド・シリーズなら見られるか!? 50-50大谷翔平の“あの姿”

横尾弘一野球ジャーナリスト
9月19日のマーリンズ戦、大谷翔平は3本塁打2盗塁で史上初の50-50を達成。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

「もうこれ以上の衝撃はない」

 そう思うファンに新たな衝撃的シーンを見せている大谷翔平が、サヨナラ満塁本塁打で史上6人目の40-40(40本塁打・40盗塁)を達成したのは8月23日のタンパベイ・レイズ戦だ。そして、数字が前人未到の50-50まで伸ばせるかという注目の中で1か月間プレーし、ついにその時がやって来る。

 9月19日のマイアミ・マーリンズ戦を48本塁打49盗塁で迎えた大谷は、第1打席で二塁打を放つと三盗を決め、まずは盗塁を50の大台に乗せる。続く2回表に盗塁を51まで伸ばすと、6回表の第4打席で右中間へ文句なしの2ランアーチを架け、本塁打も49として王手をかける。

 世界中のファンやメディアが、「50本目はいつ」と想像する暇もなく、続く7回表にはレフトへ2ラン本塁打を運び、信じられない記録をあまりにもあっさりと達成してしまう。そして、9回表には会心の3ラン本塁打。超一流選手でもなかなかできない6打数6安打、3本塁打10打点2盗塁の大活躍で50-50に花を添え、同時にロサンゼルス・ドジャースのポスト・シーズン進出も確定した。

「一生忘れられない日になるんじゃないか」

 常に「ワールド・シリーズで勝ちたい」と公言している大谷だからこそ、自身の偉業がチームの節目に重なったことをそう表現する。そんな大谷は、まだ私たちが見ていない衝撃のシーンを演じてくれそうな気がする。

ワールド・ベースボール・クラシック決勝の起用法なら

 今季の大谷は、投手としてのリハビリ中だ。幸いにも右ヒジの回復具合は順調なようで、デーブ・ロバーツ監督もリップサービス気味ながら「今季中に登板する可能性はゼロではない」と語っている。そんな中、ドジャースでは投手陣の戦列離脱が続いており、戦力面ではワールド・チャンピオンへの道が万全とは言えない。

 大谷が、ワールド・シリーズに登板する可能性はあるのか。バカげた話題のように思えるが、1イニング限定のリリーフなら、と考えたりしてしまう。

 大谷が北海道日本ハムへ入団し、投打の二刀流で成長を目指すとされた時、多くの評論家が無理だと切り捨てた。落合博満ら少数派が、「誰もできないことをやるのがプロ。ぜひ挑戦してほしい」とエールを送りつつ、「他の選手の最低2倍は練習しなければいけない」と激励した。その際、現実的に二刀流を成功させる方法として挙げられていたのが、レギュラー野手とリリーフ投手での両立だった。

「スタメンで野手としてプレーし、リードした9回にストッパーとして登板する。いつ投球練習するかという課題はあるが、その起用法が現実的だろう」

 そう評されていたが、大谷はそんな周囲の見方を遥かに上回るスピードとスケールで成熟を続け、2016年には投手として10勝、打者では22本塁打をマーク。2018年からは舞台をメジャー・リーグへ移し、さらに進化を続けているのは周知の通りだ。先発ローテーション投手とレギュラー野手という究極の二刀流を実践し、2022年には先発投手が指名打者を兼務できる『大谷ルール』まで制定されている。

2023年のワールド・ベースボール・クラシック決勝でリリーフ登板する大谷翔平。今季のワールド・シリーズでも、こんなシーンが見られるか。
2023年のワールド・ベースボール・クラシック決勝でリリーフ登板する大谷翔平。今季のワールド・シリーズでも、こんなシーンが見られるか。写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ただ、ドジャースがワールド・チャンピオンに近づくにつれ、私たちは大谷の“あの姿”を思い出すだろう。そう、2023年のワールド・ベースボール・クラシック決勝だ。三番・指名打者でスタメン出場した大谷は、アメリカと息詰まる接戦を繰り広げながら終盤になるとブルペンにも足を運び、1点リードの9回表に登板し、優勝の瞬間を演出した。

 現地時間11月2日(予定)、ワールド・シリーズ第7戦。勝ったほうがチャンピオンになる一戦で、1点リードの9回、復活登板でドジャースを勝利に導く――今季の大谷なら、そんな離れ業すら演じてしまいそうな気がする。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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