タブレット市場はこのまま萎んでいくのか?
先ごろ、米アップルは、価格据え置きながら、プロセッサー性能などを向上させ、新たにスタイラスペン「Apple Pencil」を使えるようにした新型「iPad」(第6世代)を発売した。
だが、タブレット端末の市場は、世界的な低迷が続いている。果たして、新端末によって、この市場は回復するのだろうか。
- 第6世代iPadで教育分野の強化を図るアップル。同社は教育市場でグーグルとマイクロソフトの後塵を拝している(インフォグラフィックス出典:ドイツStatista)
大半を占めるスレート型が大幅減
米国の市場調査会社IDCによると、昨年(2017年)1年間におけるタブレット端末の世界出荷台数は、1億6350万台で、前年から6.5%減少した。
このうち、「スレート型」(“板状”の意)と呼ばれる従来型端末の出荷台数は、1億4170万台で、前年比7.6%減と、大きく落ち込んだ。
一方、iPad ProやSurface Proに代表される、「デタッチャブル型」(純正オプションの着脱式キーボードが用意され、ノートPCのようにも使える)は、前年比で1.6%増加した。
また、昨年10〜12月期に限って見ると、スレート型は前年割れが続いたのに対し、デタッチャブル型は、10.3%増加した。
年末商戦時期に、2桁成長を達成したデタッチャブル型。しかし、その台数はスレート型の15%程度と少ない。タブレット市場は今後もスレート型の落ち込みとともに縮小していくのかもしれない。
iPad、ようやくプラスに回復
ただ、状況はメーカーによって、まちまちと言えそうだ。
IDCによると、昨年1年間のメーカー別出荷台数ランキングは、(1)アップル、(2)韓国サムスン電子、(3)米アマゾン・ドットコム、(4)中国ファーウェイ(華為技術)、(5)中国レノボ・グループ(聯想集団)の順。
このうち、首位のアップルは、4380万台で、前年から3%増加。これは、同社が開示している販売台数実績と一致する。
iPadの販売台数は、昨年1〜3月期時点で、13四半期連続の前年割れを記録。翌四半期の4〜6月期にプラス回復した。
年間ベースで見ると、2013年の7400万台をピークに、6300万台、5000万台、4300万台と、3年間右肩下がりが続き、ここに来て、ようやく減少に歯止めがかかった。
ビジネスツールやクリエイティブツールとしての使い勝手を向上させたiPad Proが、寄与したと見られている。
サムスンは2桁減
一方、サムスンの昨年1年間の出荷台数は、2490万台で、前年から6.4%減少。10〜12月期で見ると、前年同期比13.0%減と大きく減少した。
IDCによると、その要因は、スレート型製品の急激な落ち込み。サムスンもデタッチャブル型製品が好調のメーカー。しかし、スレート型の急減が、全体に重くのしかかったと、IDCは指摘している。
アマゾンの伸びは驚異的
興味深いのは、アマゾンの出荷台数だ。同社の年間出荷台数は、1670万台で、前年比38.0%増。10〜12月期では、前年同期比50.3%増と、驚異的に伸びた。
アマゾンのFireタブレットは、いずれのモデルもスレート型。しかしながら同社は、大幅値引きという独自の戦略で、台数を伸ばしている。
アマゾンは米国などで、スマートスピーカー「Amazon Echo」の音声アシスタントサービス「アレクサ(Alexa)」を、Fireタブレットでも提供している。
こうした施策も、アマゾンの成功の要因になったと、IDCは分析している。
- (参考・関連記事)「アップル、タブレットの人気を盛り返せるか?(小久保重信) -Yahoo!ニュース個人」
(このコラムは「JBpress」2018年2月23日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)