中国・河南省の大雨被害に台風6号周辺の雨の追い打ち
中国中部で大雨
令和3年(2021年)7月20日の中国中部のホーナン(河南)省の省都であるチェンチョウ(鄭州)では、日降水量が620ミリを超えています(図1)。
「計算上1000年に1度の記録的な大雨」といわれています。
河南省北側の省境を流れる黄河のすぐ北にある東西につらなる山脈に、太平洋高気圧からの暖かくて湿った空気が長時間にわたって同じ角度でぶつかり、同じ場所で地形性の豪雨が強まったと思われます(図2)。
7月の月降水量の平年値が140.3ミリですので、その4倍以上が1日で降りました。
また、20日16時の1時間雨量は201.6ミリと、これまで中国全土で降った1時間雨量の記録である198.5ミリを超えたという報道もありました。
日本での1時間雨量の記録は、平成11年(1999年)10月27日の千葉県・香取と、昭和57年(1982年)7月23日の長崎県・長浦岳の153ミリですので、今回のような強い雨は観測したことがありません。
ちなみに、日降水量の記録は、令和元年(2019年)10月12日の神奈川県・箱根の922.5ミリですので、日降水量ではこれを上回った雨を何回も観測したことがあります。
このような短時間に降った記録的な雨により、チェンチョウ(鄭州)市では、道路や建物が浸水して地下鉄に水が流れ込んでいます。
地下鉄の中に閉じ込められた乗客の腰から胸のところまで増水した姿や、必死の救助作業の映像を見た方も多いと思います。
また、チェンチョウ(鄭州)市の上流にあるダムが決壊する恐れが生じたことから、ダムの一部を爆破している映像もありました。
太平洋高気圧の西側が北上
令和3年(2021年)の夏の太平洋高気圧の特徴として、西側が北に上がっていることが挙げられます。
つまり、太平洋高気圧が西日本に張り出してくるのではなく、東日本から日本海に張り出しています。
太平洋高気圧の南側にある湿った空気は、例年のように西に進むのではなく、九州・沖縄を通って、東シナ海、中国大陸へ北西進する傾向が続いています。
このため7月10日には、鹿児島・宮崎・熊本各県の市町村に大雨特別警報が発表となるほどの大雨が降り、20日にはホーナン(河南)省での大雨です(図3)。
台風6号も、太平洋高気圧の南側にある湿った空気を同じように東シナ海から中国大陸に送り込もうとしています。
台風6号は向きを西に変え、上海付近に上陸する可能性が高くなりました(図4)。
台風は上陸後、熱帯低気圧に変わる予想ですが、これは、中心付近の最大風速が17メートル未満になるということで、雨が弱くなることを意味しません。
台風に伴う雨雲は北上し、大きな災害が発生したホーナン(河南)省で、再び大雨の可能性があります(図5)。
中国では、昨年は長江(揚子江)流域での大水害、今年は黄河流域の大水害と、大規模水害が相次いでいます。
日本も他人事ではありません。
記録的な大雨災害に対して、日頃からの準備が必要です。
来週は台風8号がオリンピック開催中の東京に接近してきますので、まずは、台風8号対策からです(図6)。
図1、図4、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。
図2の出典:筆者作成。
図3の出典:気象庁資料に筆者加筆。