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育休復帰1カ月、GW明けをスッキリ迎えるために~本人/配偶者/同僚&上司が出来ること

治部れんげ東京科学大学リベラルアーツ研究教育院准教授、ジャーナリスト
実際に赤ちゃんを抱っこして仕事は無理ですが「在宅勤務のイメージ」はこんな感じです(写真:アフロ)

みなさま、連休はどんな風に過ごしますか? 連休明けの5月は、気持ちの良い季節ですが、気分が落ち込みやすい季節でもあります。特に4月に育休から復帰した方は、本格化する両立生活の中で、予想外の事態に戸惑っているかもしれません。

仕事と子ども、それぞれについて、育休復帰1カ月に、よくある悩みと対処法についてまとめました。連休中に読んで、今後の働き方や育児を見直すヒントにしてください。

また、職場に育休復帰直後の人がいる、という方ができることも書きました。

1.体力的にしんどい

4月は復帰の緊張、久々の職場、子どもの慣らし保育であっという間に過ぎたという方が多いのではないでしょうか。連休に一息ついてゆっくり休んだ後は、とりわけ、仕事と育児の両立が大変に思えるかもしれません。

「これはちょっと無理だな」と思ったら、自分の身体を最優先にしてください。連休は無理に出かけず、ひたすら寝る、美容院に行くなどして、体力と気力を養いましょう。特に4月の平日を「ワンオペ育児」で頑張った方は、連休は家事を配偶者にやってもらっていいと思います。

「休む」と言っても、乳児がいたら育児を完全に休むのは不可能です。例えば授乳と寝かしつけなど「自分でなければ絶対ダメなこと3つ」だけ選び、他はやらずに過ごしてみてください。大人の分の食事は買ってくるか外食ですませた上で、掃除洗濯は配偶者にやってもらう…。こうすることで、あなたが普段、どれほど大変か、配偶者にも伝わるでしょう。

私が取材したケースに、平日保育園の送りは夫、お迎えは妻という家庭がありました。夫は深夜残業を外せない職種ですが、料理は好き。一方、妻は定時退社できるけれど料理はちょっと億劫というタイプでした。この夫は週末料理を作りだめして冷凍。平日、妻はお迎え&帰宅後に味噌汁だけ作れば食事の支度が整うので楽と言っていました。

どうしても平日の帰宅が遅い場合も、こんな風に時間差をつけた分担はできると思います。4月まで1カ月はいわば両立の試用期間。うまくいかないところがあるなら、やり方を見直しましょう。「女性だから」「母親だから」自分がやらなきゃ、と思い詰めるのは持続可能ではありませんから。

2.せっかく復帰したのに仕事がつまらない

時短勤務で復帰したママからよく聞く声です。復帰後に異動したり、出産前より負担が軽い職種に変わったりすることはあります。勤務先や上司の配慮もありそうですが、本人の希望と違うなら、改善した方がいいでしょう。

まずは本人が、仕事内容のどこが不満なのか、何をどう変えれば改善されるのか、よく考えてください。

かつて取材したある女性は、大企業勤務で外国語も堪能。2人の子どもを育てながら時短勤務で働いていましたが、退職に踏み切りました。彼女が本当にやりたかったのは、隣の部署の仕事。でも、時短勤務で異動を希望するのは図々しいと思われる…本当の希望を会社に伝えないまま職場を離れてしまいました。

もし、この女性が「思った以上に両立がスムーズにできているので、もう少し仕事の量を増やせます」とか「配慮していただきありがたいのですが、実はこちらの仕事をしたいんです」と本心を言えたなら…。会社は貴重な人材を失わずにすんだかもしれません。

子育てしながら働いている女性は、必要以上に自分に制限を設けてしまうこともあります。「子どもがいるから●●できない」と決めつけず、状況に応じて判断し、できることを増やしていく、という発想が大事だと思います。

職場の同僚や上司ができることもたくさんあります。同じ育休復帰後のママでも、体力や家事育児分担の状況は異なります。近年は、パパの方が家事育児をたくさんやっている例もあります。上の世代と比べると「共働きは当たり前」と思っている男性も増えています。

その人の職務に必要なことは何か。どうしても残業が避けられないのはどの時期か。その時期はお迎えなど夜の育児を配偶者ができるのか。個々人が自分の事情を言いやすい雰囲気を作ることが大事です。さらに、育休復帰した人(大抵はママ)だけでなく、その配偶者にも配慮があると、なお良いと思います。

また「あなたが復帰してくれてよかった」と伝えることは、大きな励みになります。育休復帰1カ月くらいの時期は、心が揺れている人もいます。毎朝子どもを預ける時に泣かれて、気になりつつ出社してきた時、職場で自分が必要とされている、と感じられたら「もう少し頑張ってみよう」と思えるはずです。

3.子どもがしょっちゅう熱を出す

核家族の共働きでいちばんきついのは、子どもの急な発熱です。特に連休明けのように仕事が溜まっている時期に、段取りを考えて朝起きたら子どもの体温が38℃…となれば焦るでしょう。「あれをキャンセルして、こっちは延期して」と、子どもの体調を心配する前に、仕事のことが心配になってしまうかもしれません。

私は2人分の子育て経験しかありませんが、ここは「そういうもの」と腹をくくるしかない、と思っています。小さな子どもはしょっちゅう発熱して免疫を獲得していくもの。だから、親のスケジュールも計画通りに進まない…。実は今、下の子が発熱して3日目の週末で、月曜の予定はどうなるかな、やっぱりダメかな、と半ばあきらめつつこの原稿を書いています。

働きながらの子育ても10年近くなり、良い意味で「あきらめ」がつくようになりました。振り返ってみると、いちばん大変だったのは上の子が0歳、1歳、2歳頃。一方で当時の写真を見ると、ただ可愛いだけで「何があんなに大変だったんだろう…」と不思議に思うほど。今では、小学生になった子どもと一緒に、公園や電車で赤ちゃんを見るたび「可愛いね」と言ってあやしています。

4.職場や園で話し相手を見つける

配偶者や職場の同僚・上司とは直接話しづらいという場合、同じ立場の働くママやパパなら話ができるかもしれません。

もし、職場に共働き子育て中の人がいたら、ちょっと勇気を出してランチに誘ってみる。同じ職場でなくても、あの人も育休から復帰したばかりらしい、という噂があったら、ちょっと話しかけてみる。

「先週、熱が出ちゃって保育園1日しか行けなくて」「うちもそういう頃があった!」というやり取りができたとたん、相手との距離が縮まると思います。

また、最初のうちは朝、子どもを預けたら駅に向かって走り、夕方、子どもを迎えに行ったら家(またはスーパー)に向かって走るのが当たり前かもしれません。少し余裕ができたら、特に帰り道が一緒になるお母さんやお父さん、おじいちゃん・おばあちゃんと話をしてみてください。

数年前になりますが、子どもがひとつ年上のお姉さんと一緒に帰ると、すごくはしゃいでいたことを覚えています。園で習った歌を歌い、いつも同じ階段から飛び降りて笑う日々は宝物のように大事なものでした。子どもの様子を見ながら、お母さんと一緒にちょこっと仕事の話をしたり、忙しいお父さんの話を聞いたりしていると「みんな、それぞれ違う形で頑張っているんだなあ」と思い励まされました。

5.助けてくれるのは子どもがいる人だけではない

最後にお伝えしたいのは、子育てしながら働く大変さは立場の違う人にも分かってもらえる、ということです。

私は会社員時代、2回の出産・産休・育休を経験しました。妊娠の報告をした上司は、子どもがいる人もいない人もいましたが、いずれも「おめでとう」の後「いつから休んでいつ戻ってくる?」と聞いてくれました。復帰直後、訳が分からない状態の中、本来なら私がやるべき仕事を代わってくれた先輩もいます。

今思うと、上司・先輩の仕事の範囲を超えてサポートしてくれたと思います。DINKSの上司や独身の同僚にも助けてもらったことは数えきれません。私だったら、違う立場の人にこういう風に親切にできたか、分かりません。ありがたかった、と思います。

働くママ同士、パパ同士は確かに分かりあえることが多いかもしれません。でも、あなたが働きながら親を続けようとする時、助けてくれるのは子どもがいる人だけではない、ということも、心の片隅で覚えておいていただけたら、と思います。

東京科学大学リベラルアーツ研究教育院准教授、ジャーナリスト

1997年一橋大学法学部卒業後、日経BP社で16年間、経済誌記者。2006年~07年ミシガン大学フルブライト客員研究員。2014年からフリージャーナリスト。2018年一橋大学大学院経営学修士。2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、国際女性会議WAW!国内アドバイザー、東京都男女平等参画審議会委員、豊島区男女共同参画推進会議会長など男女平等関係の公職多数。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館新書)、『ジェンダーで見るヒットドラマ』(光文社新書)などがある。

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