労働時間短縮につながる、超一流の「すぐ知る」技術
私は企業の現場に入り込んで、目標を絶対達成させるコンサルタントです。目標を「絶対達成」してもらうわけですから、クライアント企業の皆さんには、行動や思考のスピードを極限まで高めてもらわなければなりません。行動をするのに時間がかかったり、正しい解決策を知るのに遠回りしていては話にならない。
知りたいことを「すぐ知る」ためには、「問い」のレベルを上げることです。「問い」の深さと言いましょうか。「問い」のレベルを深く掘り下げてから、自分に問い掛けたり、誰かに質問したり、インターネットで検索することです。「問い」のレベルが浅いとどうなるか? 例を挙げてみましょう。
「労働時間を削減したい。どうしたらいいんだろう?」
とてもレベルの浅い「問い」です。時短や業務効率化のエキスパートの方に聞いてみましょう。「当社はなかなか残業がなくなりません。どうしたらいいですか?」と。このような浅い質問をすれば、浅い答えしか返ってきません。「そうですねェ。まずは業務の棚卸し等してみてはいかがですか? 重複している業務が見つかるかもしれませんよ」などと。
浅い「問い」をする人は、子どもや初心者と間違われます。
「プロ野球選手になるには、どうすればいいの?」
「そうだねェ。毎日一所懸命、練習すればきっと君もプロ野球選手になれるよ」
「うん! がんばる!」
……こんなやり取りと同じです。労働時間を短縮するのに業務棚卸をする、役割分担を確認する、だなんて、誰でも想像がつくことです。こんな返答をエキスパートからもらっても意味がありません。しかし「問い」のレベルが浅すぎるため、知りたい答えを引き出すことができないのです。
「問い」のレベルを上げるには、知りたい物事の階層を下へ下へと掘ることです。
「労働時間をもっと減らすために業務の棚卸しをしようと考えていますが、そのときに気を付けるべきポイントは何ですか?」
先ほどのプロ野球選手になりたい人の質問で言うと、たとえばこうなります。
「プロ野球選手になるには、どんな高校へ行くと近道ですか?」
さらに階層を下に掘ると、以下のようになります。
「労働時間削減のために業務棚卸しをしようと考えていますが、棚卸しをする期間について質問があります。1週間単位がいいのか、それとも1ヶ月単位がいいのか、いかがでしょうか?」
「プロ野球選手になるには、どんな高校へ行くべきか悩んでいます。現段階で甲子園に出られるような強豪校へ行くべきか。それともプロ野球選手のOBをたくさん輩出している高校に絞るべきか。どうでしょうか?」
このような「問い」を投げかければ、本当に知りたいことをすぐ知ることができるでしょう。
「期間は1週間程度でいいと思います。それよりも、どの季節で業務棚卸をすべきか、こっちのほうが重要ですね」
「プロ野球選手になるには、高校を選ぶことよりももっと大事なことがあります。それはですね……」
相手の「問い」のレベルが高いので、尋ねられた側も真剣に返答しなければならないと思います。「そういうことなら、私よりももっと詳しい者を紹介しましょうか」などと、言ってくれる場合もあるでしょう。このほうがよりスピーディに正しい答えを「知る」ことができます。いっぽうで、レベルの低い、大ざっぱな質問をしていると、何度も質問を重ねなければなりませんし、本当に知りたい答えにたどり着かないときもあります。
「問い」のレベルを上げるためには、日頃から考える習慣を身に着けることです。考える習慣がない人は「問い」の精度が低いため、堂々巡りを繰り返し、感情的になることが多いのです。
「労働時間を削減するといったって、どうしたらいいんだ? どんなに考えても全然わからない。誰か教えてくれよ。いっこうに残業が減らない」
「どんなに実力があっても、プロ野球選手になんてなれっこない。運がなければダメだ。世の中そうなってる」
超一流の人は、知りたいことを知るための技術を持っています。しかもその「知る」スピードが速い。「問い」のレベルを上げて「すぐ知る」技術を身につけましょう。