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楽天証券で「日本株の積立」始まる その狙いとは?

山口健太ITジャーナリスト
国内株式の積立が始まった(楽天証券のプレスリリースより、筆者撮影)

6月11日、楽天証券が国内株式やETFの積立サービスを新たに開始しました。

株式の積み立てというと難しそうに聞こえますが、どうやってそれを実現したのでしょうか。その仕組みや狙いを探ります。

国内株式やETFの積み立てが可能に

投資信託の積立では、楽天証券は「つみたてNISA」が好調で2023年4月に業界最多の300万口座を達成。ほかにも米国株や金・プラチナの積立サービスを提供しています。

そして今回、新たに始まるのが国内株式やETFの積立サービス「かぶツミ」です。

現在はスマートフォン用サイト(楽天証券の口座利用者向け)での提供となっていますが、パソコンでもスマホ用サイトを開くことで操作できるようになっています。

とはいえ、投資信託は毎月100円から積み立てられるのに対し、最低売買金額が大きい国内株式を積み立てるというのは難しく感じるところです。

たとえば楽天証券が例に挙げる「オリエンタルランド」の場合、2023年4月に株式を5分割したことで最低売買金額は約54万円(6月9日時点)に下がったものの、毎月あるいは毎週の積み立てにはまだ大きすぎる金額です。

そこでかぶツミでは、楽天証券の単元未満株取引(かぶミニ)を活用することで、1株(約5400円)から積み立てができるようになっています(ただし通常の単元株とは異なるコストがかかります)。

最低1株から積立可能(楽天証券のWebサイトより、筆者作成)
最低1株から積立可能(楽天証券のWebサイトより、筆者作成)

オリエンタルランドでは500株以上(または100株以上を3年以上)の所有により、株主優待として東京ディズニーランドなどの「1デーパスポート」がもらえます。これを狙って単元未満株をコツコツ積み立てていくといった使い方も、楽天証券では想定しているそうです。

なお、auカブコム証券による単元未満株の積立サービスは3000銘柄を取り扱うのに対し、楽天証券は1000銘柄とやや少なくなっています(追記:2023年7月3日からは1600銘柄超に拡大)。また、親会社である楽天グループの株式は対象外となっています(100株単位での積立は可能)。

もう1つ興味深いのは、これらを組み合わせて注文できるという点です。たとえば1株300円の株式の場合、100株の注文なら3万円、その次は200株で6万円となり、金額を細かく調整するのが難しいという問題があります。

そこでかぶツミでは、単元未満株取引に対応した銘柄については「123株」といった注文が可能となっています。この場合、通常の単元株100株の注文と単元未満株23株の注文が同時に作成される仕組みです。

端数がある場合、単元株と単元未満株の注文が同時に作成される(楽天証券のWebサイトより、筆者作成)
端数がある場合、単元株と単元未満株の注文が同時に作成される(楽天証券のWebサイトより、筆者作成)

指定した金額ぴったりで買える投資信託とは異なり、株式は買うたびに金額が変わる点には注意が必要ですが、この機能により毎月積み立てたい金額により近づけることができるわけです。

約定についても株式ならではの特徴があります。かぶツミでは「寄付・成行」の買い注文を作成してくれるものの、約定するかどうかはその日の相場次第となります。楽天証券によれば、約定しなかった場合は積立が実行されず、スキップになるとのことです。

一方、単元未満株については楽天証券が相手方となる相対取引になり、取り扱い銘柄の多くが大型株であることから、特別気配など特殊な状況を除けば、ほぼ問題なく約定しそうです。

いったん約定した後は普通に株式を買い付けた場合と同じように所有することになり、手数料やポイント還元、売却についても通常の国内株式と同じ扱いとなっています。

楽天証券ならではの強みとしては「ポイント」利用があります。投信積立のようにクレジットカード決済や楽天キャッシュは使えないものの、楽天の通常ポイントを買い付けに利用できます(期間限定ポイントは対象外)。

現時点では投資信託や米国株式がポイントアップの対象になる楽天の「SPU」にかぶツミは含まれていないものの、この点では楽天エコシステムとの連携に期待したいところです。

新NISAをフル活用できる

目下、日経平均株価がバブル後最高値を更新し続けるなど国内株式は盛り上がっており、新サービスの投入はタイムリーな印象を受けます。

ただ、長期の積立投資ではNISA制度を活用したいところです。かぶツミは現在の一般NISAに対応しており、2024年からの新NISAでは「成長投資枠」に対応する予定です。

成長投資枠は年間240万円の制限があるものの、単元未満株なら十分に活用できそうです。また、東証に上場しているETFも積立対象として魅力を感じます(ただし、成長投資枠では一部銘柄が対象外になる見込みです)。

新NISA獲得でライバルとなるSBI証券との比較では、米国株式の積立はSBIが先行したものの楽天が追い付き、国内株式の積み立てではSBIが未対応の中で楽天が先行する形になっています。

投信積立ではクレジットカード決済のポイント還元率を引き上げ、さらに今回のかぶツミで新NISAの成長投資枠もフル活用できるようになったという意味では、他のネット証券を一歩リードしたといえそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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