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現棋界四強の一角・藤井聡太三冠(19)日本シリーズで初のベスト4進出! 千田翔太七段(27)に快勝

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月25日。東京・シャトーアメーバにおいて第42回将棋日本シリーズ・JTプロ公式戦2回戦▲藤井聡太三冠(19歳)-△千田翔太七段(27歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 15時34分に始まった対局は16時48分に終局。結果は113手で藤井三冠の勝ちとなりました。

 藤井三冠はこれで初のベスト4進出です。今期ベスト4はタイトルホルダー4人、いわゆる現棋界「四強」の揃い踏みとなりました。

 準決勝の対戦は以下の通りとなります。

10月16日

豊島将之JT杯覇者(竜王)-渡辺明名人

11月3日

藤井聡太三冠-永瀬拓矢王座

 藤井三冠の今年度成績は28勝6敗(勝率0.824)となりました。

藤井三冠、攻めをつなげて押し切る

 対局開始前、両対局者は次のように意気込みを語っていました。

藤井「JT杯は封じ手があるなど特色の多い棋戦なので、これまでの経験を活かして戦えればというふうに思っています」

千田「初めての出場ということもありまして、ほどよい緊張感で臨めると思っております。その緊張感を活かして戦いたいと思います」

 振り駒の結果、先手は藤井三冠に。藤井三冠はグラスに注がれた冷たい緑茶を飲んだあと、初手、飛車先の歩を一つ前に進めました。

 互いに飛車先を伸ばしあった後、5手目、藤井三冠は角の横に金を上がります。これは相掛かりの立ち上がりです。ただしそこからがいかにも、複雑をきわめる現代調。序盤の繊細な駆け引きの末に角交換となり、いつの間にか角換わり腰掛銀の定跡形へと合流していました。

 43手目。駒組の段階で藤井三冠が封じ手をして、次の一手問題として出題されました。例年の日本シリーズであれば、全国各地で公開対局としておこなわれていますが、本局はコロナ禍のため、スタジオでの対局。次の一手予想もネットを通じておこなわれました。

 43手目。藤井三冠は玉を入城して堅い陣形を築きます。対して千田七段はバランス重視の構えで待ちました。

 45手目。藤井三冠は桂を跳ね、先攻していきます。両者ともに研究十分の進行と思われます。

藤井「こちらが攻めていく展開になって。途中は少し攻めが細いというところもあったかな、と思うんですけど」

 形勢はほぼ互角に推移しての69手目。藤井三冠は2筋、桂取りに歩を打ちます。

藤井「強く同金と取られる手もありそうですけど」

 対して千田七段は同金ではなく、桂を跳ねて逃げました。コンピュータ将棋ソフトはこのあたりから少しずつ藤井よしという判定をしていました。ただし藤井三冠自身は、それほど自信はなかったようです。

 80手目。千田七段は藤井陣2筋に歩を成ってと金を作ります。さらに角を打って、攻防に利かせました。これもさすがの切り返しに見えたのですが、千田七段には誤算があったようです。

千田「仕掛けのあたりまでは、そこそこうまくやっていたかな、と思ったんですけど。そこからちょっと誤算もありまして。うまく攻め倒される展開になってしまいましたね。△2七歩成から△2六角の指し手で。のちに△4三玉から玉を上部に逃げられるスペースを作ったというねらいだったんですけれども、そのねらいが実現せず、かえって中途半端な駒になってしまった、というのが誤算でした」

 91手目。藤井三冠は7筋中段に桂を打ちます。これが「敵の打ちたいところに打て」という攻防手。相手玉を包囲しながら、自玉上部をケアしています。

藤井「最後はうまく攻めがつながる形になったかなと思います」

 千田玉は左右はさみうちの形に。上部に逃げ出すことができず、逆に下段へと落とされました。

 113手目。千田七段は自玉が受けなしに追い込まれたところで、投了を告げました。

 藤井三冠は強敵を相手に快勝。本棋戦3回目の出場で、初めてベスト4へと進出しました。

 藤井三冠と千田七段の対戦成績は、藤井4勝、千田1勝となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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