クルードラゴンがISSから帰還。同じ機体に星出宇宙飛行士が搭乗へ
日本時間2020年8月3日午前3時すぎ、スペースX開発による新型宇宙船「Crew Dragon(クルードラゴン)」が約2ヶ月にわたる有人飛行実証ミッションを終えて地球に帰還し、米フロリダ州沿岸の海上に着水する。ロバート・ベンケン、ダグラス・ハーレー宇宙飛行士が搭乗した機体は8月2日朝に国際宇宙ステーション(ISS)を離れ、再突入に向けた飛行を続けている。
クルードラゴンの有人飛行実証「DEMO-2」は、民間企業スペースXがNASAとの契約のもとで宇宙飛行士をISSへ輸送する任務を実施するための最終飛行試験。新型宇宙船の最も重要な試験であるDEMO-2は2020年5月31日にフロリダ州ケープ・カナベラル空軍基地から打ち上げられ、無事に往路の飛行を終えてISSにドッキングした。ボブ・ベンケン、ダグ・ハーレー宇宙飛行士は第63次長期滞在クルーと共に6月、7月の2ヵ月間をISSで過ごした。
「エンデバー号」と名付けられたクルードラゴン機体は、日本時間8月2日午前8時35分にISSから離脱し飛行している。日本時間8月3日午前3時42分、フロリダ州の北西部ペンサコーラ沖のメキシコ湾上に着水する予定だ
帰還に先立つJAXAの説明によれば、クルードラゴンは宇宙船としての基本的な能力に加え、宇宙船クルーへのデータ表示やコマンド処理、宇宙飛行士によるマニュアル操縦機能、室内環境制御、トイレ機能など予定された飛行試験の項目を予定通り完了した。これまで、帰還やクルーの安全に支障となる不具合は問題の発生はなかったという。
DEMO-2完了の結果を元に新型宇宙船クルードラゴンの機体がNASAから認証され、本格的な運用段階に入る。運用第1回の飛行「Crew-1」は9月下旬に行われる予定で、クルードラゴン船長となるマイク・ホプキンス宇宙飛行士、パイロットのビクター・グローバー宇宙飛行士、2名のミッションスペシャリストのシャノン・ ウォーカー宇宙飛行士、野口聡一宇宙飛行士の4名が搭乗する。
ISS滞在中の7月21日、ボブ・ベンケン宇宙飛行士は、NASAのクリス・キャシディ宇宙飛行士とともにに船外活動(EVA)を実施。老朽化したISSのバッテリーを日本のISS補給機HTV(こうのとり)9号機が運んだ新型バッテリー(日本製リチウムイオン電池セルを使用)へ交換する作業を行った。
8月1日の帰還直前、ISSクルーと共に行われたセレモニーでは、ダグ・ハーレー宇宙飛行士が星条旗を手にしている。この旗は2011年7月8日、スペースシャトル最後のミッション、STS-135アトランティス号の飛行の際に「次にアメリカの国土から打ち上げられた宇宙船に乗ってアメリカ人宇宙飛行士が来るまで、ここに残るように」とのメッセージと共にISSに置かれたものだ。
2011年、スペースXは旗を手にするフラッグ・キャプチャリングを宣言し、言葉通り2020年のアメリカ国土から飛行する有人宇宙船の開発を果たした。旗は2人の宇宙飛行士と共にクルードラゴンに乗って地球へ帰還する予定だ。
DEMO-2のクルードラゴン機体エンデバー号は、スペースXのロケット同様に再使用される見通しだ。開発段階では、スペースXはクルードラゴンを飛行ごとに新しい機体に交換する計画だった。しかし、スペースXからNASAへクルードラゴンの機体と打ち上げロケット「Falcon 9(ファルコン9)」の第1段を再利用してISSへの宇宙飛行士輸送ミッションに使用する申請が認められる方向だ。
エンデバー号は「認証後ミッション」または「Crew-2」と呼ばれる飛行に再使用される予定となっている。Crew-2は2021年春ごろ打上げ予定クルードラゴン運用2号機で、JAXAの星出彰彦宇宙飛行士が搭乗する。JAXAによれば、エンデバー号の帰還後に機体の点検、改修を行った上で機体再使用の最終決定を行う予定だという。野口宇宙飛行士に続きクルードラゴン宇宙船に登場する星出宇宙飛行士は、スペースXの特徴でもある「再使用」機体を初めて経験することになる。