デモ参加は就活に悪影響なのか?~飛び交う噂を徹底検証その2
「デモと就活」関係検証闘争本部と前回のまとめ
「デモと就活」関係検証闘争本部、本部長の石渡です。今後は、石渡連合闘争軍を建軍し、この闘いに勝ち抜く所存です(ウソ)。
さて、前回の続き。
読む気がない方は、以下のまとめをどうぞ。
・デモ参加で就活が不利になるとの噂あり
・不利になる、と福岡県行岡市議がブログで断言
・採用担当者はデモ参加を問うほど暇ではない
・思想信条を問うことは差別企業と言われかねない
・1952年、日経連が赤い学生お断り宣言
・気にする企業は気にしていた
・気にしない企業は気にしていなかった
・思想信条を隠す学生も多かった
・思想信条を隠さずどうにかなった学生もいた
・1966年安保闘争では「指導者は困るが、参加くらいなら」と日経連
・さあこれから、というところで切っているので読者はイラッとした
今回は、デモ参加・主催による就活への影響をさらに検証していきます。具体的には「デモ参加で就活に落ちる学生」。
前回と言っていることが違う?
いえいえ、前回、お伝えしたことはその通り。
デモ参加程度ですぐ就活に失敗する、ということはありません。その前提のうえで、それでも就活に失敗する学生のパターンを検証してみました。
落ちるパターンその1:デモ参加をわざわざ話す、自己PRで使う
企業側がデモ参加や思想信条などを面接などで聞くのは、アウト。これは前回お伝えしました。
このデモ参加、学生の方から話す分にはセーフ。
デモ参加以外だと、親子関係や恋愛、読書習慣、新聞購読なども同じです。自分から話す分にはセーフ。
ところが、ここで大きく分かれます。法的・社会的にはセーフでも、親子関係・恋愛などを話す学生は就活がうまく行きやすいです。そして、デモ参加はその逆で厳しいことに。
なぜ、明暗が分かれてしまうのでしょうか。
親子関係は同和差別につながる、とよく言われています。しかし、企業からすれば差別の意図なく、知りたいところ。親でなくても親戚などでも年代の違う社会人とコミュニケーションが取れていることを示すからです。
恋愛は性差別、セクハラにつながる、とよく言われています。しかし、恋愛はコミュニケーションの最たるものです。そこで苦労したなどの話は、差別の意図なく、知りたいところ。
読書・新聞は思想信条差別につながる、とよく言われています。
しかし、本を読む、新聞を読むことは視野をそれだけ広げることになります。知識・教養も身につきますし、文章力も上がります。こちらも、差別の意図なく、知りたいところ。
というわけで、親子関係、恋愛、読書・新聞などは実は企業側が聞きたい話です。したがって、法的・社会的にセーフ、というだけでなく、企業側の隠れニーズにも合っています。
では、デモ参加は?
企業からすればわざわざ聞きたいことではありせん。
わざわざ話したところで、取扱いが微妙なネタを振られた採用担当だって困ります。
デモ参加と同じく微妙なネタが就活塾や風俗など。
そんなもの、話をしたり、自己PRとして使う学生、いるのか、と思われるでしょう。
いるんですね、これが。
デモ学生はまだお目にかかったことはありませんが、就活塾・風俗はそれぞれあり。
異質なものをわざわざ話すのがダメ、と言うことではありません。親子関係・恋愛などと異なり、就活塾や風俗、デモ参加はそれぞれ、聞き手(面接担当者)がネガティブな感情を持つものです。
それだけハードルが高くなりますし、大体はハードルを超えられません。
当然ながら、採用担当者からすれば、
「自分でハードルを上げておいて、しかも、超えられない。なぜこの学生は、超えられないネタをひっこめる程度の配慮もできないのか」
と、考えてしまいます。
落ちるパターンその2:自分の意見がありそうでない
これは、デモ参加の学生だけでなく、それ以外の学生にも言えることです。
その典型がゼミのアピール型。
私は上武恒夫ゼミで就活とデモの関係について研究をしました。三菱樹脂訴訟などで、思想信条を理由とする選考不合格は違法行為です。にもかかわらず、デモ参加を非難する政治家に対して上から目線のコラムで、三流政治家だけでなくデモ参加学生も否定する自称ジャーナリストの石渡嶺司という方がいます。ゼミでも石嶺氏の取材の浅さはよく話題になります。彼のような存在がいなくなるよう、今後も研究を進めていきます。
このES、どこがまずいのか。
※考える時間1分
はい、終了。
答えは石渡への悪口を、書いているから(ウソ)。
真面目な話をすると、私の悪口はネットで拾ってきたとしか思えません。「話題になる」も単にゼミ教員の話を写しているだけ。学生はゼミをアピールしているつもりでも、ゼミの話になっていません。
デモ参加をエントリーシートに書こうとしても、それは無理があります。
なんだ、そんなこと書くわけがないじゃないか?
うん、そりゃあ、デモのことはわざわざ書く学生はいないでしょう。
しかし、ゼミの他のテーマだと、エントリーシートでよく見かけます。ゼミをアピールしようと思った方はご注意を。
落ちるパターンその3:異論を認めない「カルト」信者
昨年、樋渡啓祐・前武雄市長(現在は、ふるさとスマホ社長)の本2冊(『沸騰!図書館』『反省しない。』)の編集担当をさせてもらいました。
樋渡さんは、武雄市長時代に、CCC(TSUTAYAを運営)に武雄市図書館を委託。365日・12時間開館と館内でのスターバックス、TSUTAYA併設を実現。
結果、来館者数は1年目92万人、2年目80万人を達成。観光客の利用が進むなどしています。
この本2冊が出る前後、Twitterでアンチ樋渡の方々から、粘着質とも言える攻撃を受けました。
最初は、まあ、アンチ樋渡という政治信条なんだし、しょうがないか、とスルーしていました。
が、それでもしつこい。うんざりした私は関連アカウントをことごとくブロックし、現在に至っています。
右か左か、その政治信条は人それぞれです。
しかし、自分が絶対正しい、と思い込むだけでなく、その正しさを押し付けられても、第三者はどう思うでしょうか。
うざい、粘着、面倒そう。
そんなところじゃないですか?
これに採用が絡むとどうなるか。
政治信条が右か左か、どちらであっても、
「他の社員や取引先などとうまくやっていけるだろうか。信念があるのはいいけど、それを押し付けようとする姿勢はトラブルを招くだけ」
と、敬遠してしまいます。
異論はあるよね、という前提で話をする、コミュニケーションをとるようにした方がよろしいのではないでしょうか。
それができないなら、左右問わず、カルト宗教の信者と同じ。どんどん敬遠されてしまいます。
落ちるパターンその4:【主催メンバー】ちやほや感が捨てられない
こちらは主催者・中心メンバー限定。
注目されているデモ(繰り返しますが、左・右、どちらのデモにも言えます)の学生組織だと主催者や中心メンバーが、それなりに注目されます。
マスコミは、「学生も怒る」という構図を出そうとします。
関連団体も、学生組織を前面に出そうとします。
かくて、それなりにちやほやされることになります。運動が大きくなっていけば、主催者・中心メンバーがリーダーシップを取る必要も出てきます。
この辺は、サークル活動やゼミと同じ。
問題は、その後の就活です。内定後でもなければ、学生がちやほやされる機会はそうそうありません。少なくとも、面接などでは厳しく見られます。
ここで、カンのいい学生であれば、サークル(またはゼミ、またはデモの学生組織)と就活では全く力関係が異なることを、すぐ悟ります。
学生時代と同じように、ちやほやされることはまずなく、されるとしたら、内定後。だったら、それまでは頑張るしかない、と割り切ります。
ところが、それができないとどうなるでしょうか。
ちょっと前までは、ちやほやされていたのに、なぜ、ここでは違うのか。
そう考えだすと、不満に思いますし、その不満感は周囲に確実に伝わります。
グループディスカッションなどだと、他の学生が「あ、あいつ、デモの主催者で、マスコミによく出ていたやつだ」などと覚えているかもしれません。
しかも、なぜ周囲はちやほやしないのか、と不満げであれば、周囲の学生は非協力的な対応をしてしまいます。
こうなると、うまく行くはずの就活もうまく行かなくなってしまいます。
で、結局、デモ参加で就活はどうなる?
ここまで落ちるパターンを見てきました。
が、これに該当する学生はそこまで多くないはずです。
過去の就活史と同様、デモに参加するだけで就活に悪影響が出ることはそれほどないでしょう。
私が危惧するのは、デモの言い訳化です。
大学名差別・学歴フィルターがその典型ですが、就活に失敗した学生が言い訳として使うわけです。
その言い訳にデモが使われるのは、何かちょっと違うかな、と。
とは言え、「言い訳同盟」にデモが入るとすれば、それだけデモが普遍化することを意味します。
学生カルチャーでデモが普遍的だったのは1970年代くらいまで。40年ぶりに復活するのでしょうか。
まあ、落ちた言い訳にされても、デモこそいい面の皮。
そもそも、デモに行かなくても、他の要因を言い訳にするのがオチ。
え?「この記事こそ、落ちる要因にしたい?」
とオチがついたところで、ひとまず終わりとします。(石渡嶺司)