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EU競争当局がグーグル広告事業を正式調査へ、ツイッターはクリエーター経済に注力も売り上げ倍増なるか?

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

筆者が注目した海外発最新テクノロジーニュース3本をダイジェストで

[1]EU競争当局、グーグル広告事業の正式調査を年内開始

欧州連合(EU)の競争当局が年内にも米グーグルの広告事業に対する正式調査を開始すると、ロイターが6月19日に報じた

広告主や広告枠販売企業、仲介業者、競合企業とグーグルの関係に焦点を当てるもので、フランス競争当局の調査よりも厳しくなりそうだと関係者は話している。

フランス競争当局は2021年6月、グーグルがオンライン広告で支配的地位を乱用し自社サービスを優遇したなどとして2億2000万ユーロ(約287億円)の制裁金を科すと発表。グーグルは決定を受け入れると明らかにしている。

EU競争当局はこれまで、オンラインショッピングやスマホOS「Android」、ネット広告の分野で競争を阻害したとしてグーグルに計80億ユーロ(約1兆円)の制裁金を科している。

グーグルの商慣行を巡っては、米司法省などが20年10月に検索サービスと検索広告の市場で非合法に独占力を維持し、反競争的かつ排他的な行為をしたとし同社を提訴した。米テキサス州などの司法長官は20年12月、他社のウェブサイトに広告を配信する事業でグーグルが自社を有利に扱うなど独占的地位を乱用したとして提訴した。

[2]ツイッター、クリエーター経済に注力も収益への直接的な貢献はまだ先

米ツイッターは2023年までに売上高を倍増させる目標を掲げており、クリエーターによるコンテンツの収益化に力を入れている。だが、その手数料収入が業績全体に及ぼす影響は当面小さく、同社は依然として広告収入に依存するビジネスを展開する。米CNBCが6月19日に報じた

ツイッターは21年5月、有料ニュース配信サービスを手掛ける米スクロールを買収すると発表した。21年1月には有料ニューズレター(メールマガジン)配信プラットフォームを手掛けるオランダ企業、レビューを買収。開発中のサブスク(継続課金)型プレミアム機能でこれら企業のサービスを提供する計画だ。

また、21年5月にはクリエーターにチップ(投げ銭)を送れる「チップジャー」の試験運用を始めた。ほかにもニューズレターなどの限定コンテンツをフォロワーに配信するサブスクサービス「スーパーフォロー」や、音声ライブ配信機能「スペース」のチケット(入場料)制も計画中だ。

ツイッターはSNS上で価値あるコンテンツを配信する様々な分野のプロや専門家、ジャーナリストなどが稼げる仕組みを用意し、利用者の裾野を広げたい考え。こうした利用者の深い関与こそが広告主に提案できる同社の企業価値であり、当面は手数料収入の増大が業績向上の柱となることはないと、専門家は分析している。

[3]アマゾン傘下のAWSがフェラーリとクラウドで提携

出所:米Amazon.com
出所:米Amazon.com

米アマゾン・ドット・コム傘下のクラウドサービス事業、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は6月18日、イタリアの高級車メーカー、フェラーリとクラウドストレージや機械学習、AI(人工知能)技術の提供で提携したと明らかにした

フェラーリは自動車の設計・性能試験で効率化を図るという。またF1チーム「スクーデリア・フェラーリ」がAWSのサービスを活用し、ファン向けのオンラインプラットフォームを立ち上げる計画。

今後のレースでマシンとドライバーのスーツにAWSのロゴを表示するとしている。

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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