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侍ジャパン要チェック。敵将ソーシア監督の“緻密すぎる戦法”。

木村公一スポーツライター・作家
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月31日のアメリカ対韓国戦は、4対2でアメリカが勝利し、B組1位で決勝ラウンドはまず日本と対戦することになった。得点差は2点。ヒット数もアメリカ6に対して韓国は5。数字の上では大きな開きはない。しかし力の差は、この数字以上のものが感じられた。

「あれ」

 その動きに気づいたのは試合中盤だろうか。ベンチのマイク・ソーシア監督が、右手人差し指で何度か帽子のひさしに手をやり、手を開いて5、2、5と動かす。視線の先にはキャッチャーがいた。ソーシア監督はベンチから直接、捕手に球種のサインを出していたのだ。あるときはストレート。あるときはフォーク。そしてそのほとんどが的中し、韓国の打者は空振り三振を喫した。アメリカの先発はソフトバンクのN・マルティネス。150キロのストレートとナックルカーブにチェンジアップ、カットと多彩な球種を操り、そのほとんどが捕手の指示した位置に来る。日本のシーズンでもここまでの投球はないかも知れない、というほどの内容だったが、その裏ではソーシア監督の指示が生きていたというわけだ。

 ある回では、2ストライクを取ると、サードがなにやらグランド右側に歩いて行く。止まったのはセカンドとファーストの間。つまりはライトの手前にポジションを変えたのだ。韓国は左打者。その打撃傾向から、セイフティーバントの危険がなくなった2ストライク以後は、流してくることはなく引っ張るだけ。そうしたデータを持っていたからこその思い切ったシフトだったわけだ。そしてこれもまた成功。こうした戦法は、相手をよく知る国内のリーグ戦ならまだしも、実際の対戦がない国際大会ともなればギャンブルにも思えるが、それをやれてしまうところがソーシア監督たるゆえんなのだろう。

 彼はメジャーの世界でも、「捕手出身で細かいデータをもとにしたスモールベースボールを好む」という評価だ。それでいて指名打者制のアメリカン・リーグで、しかも2番トラウトを起用するなど攻撃的な手法も引き出しにある。同時代でいえばカージナルスなどを率いた名将トニー・ラルーサ監督と双璧との評判だった。最近ではエンゼルスで大谷翔平の二刀流を許容した監督というイメージもある。

 いずれにせよ、短期戦の国際大会でベンチからサインを出し、カウントに応じて極端なシフトを敷く。こうした監督はそうはいない。それだけデータに、そして自身の目と頭に、自信がある証左だ。 

 そんなソーシア監督が率いるアメリカと、8月2日、日本は決勝リーグ第1戦として相対する。どれだけ日本チームを調べてきているか。そんな観戦の仕方もいいかも知れない。

スポーツライター・作家

獨協大学卒業後、フリーのスポーツライターに。以後、新聞、雑誌に野球企画を中心に寄稿する一方、漫画原作などもてがける。韓国、台湾などのプロ野球もフォローし、WBCなどの国際大会ではスポーツ専門チャンネルでコメンテイターも。でもここでは国内野球はもちろん、他ジャンルのスポーツも記していければと思っています。

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