『札幌サポーターの勢いから今の浦和にないものを感じる』浦和vs札幌【レッズ川柳試合レビュー】
■札幌サポーターの勢いを見て思ったこと
すでに我が家の方でも17時くらいには雨がポツポツと降り出し、自転車で行くのはやめる。70歳近い年寄りが、雨の夜道を自転車で家と埼スタ往復するのは危険と判断したから。
それでウチから歩いて行けるバス停に行き、浦和美園駅までバスで行くことにした。予想を超える20分も到着時間が遅れた上に、やはり浦和美園まで行く乗客で、車内はドアが開くと人が溢れて転がらんばかりの混雑状態。シャトルバスもないし、もうやむを得ない。
秋雨に バスもメタボで 待ちぼうけ
とりあえず浦和美園駅に着き、そこから歩く。結局、いつもの自転車の倍以上の時間がかかった。ただ、19時でも寒さはあまり感じない。歩いて体が温まっているのもあるけど。
すぐにスタンドへ。さすがに水曜日の夜ともなると、観客は少ない。南側自由席はガラガラ状態だし、正面に見える北側も、上の方はだいぶスカスカ。客層を見ると、中高年だけではないにせよ、サッカー好きの一人客がメインで、まずファミリー層、カップルといった人達はほとんど見かけない。タイトルがかかった試合とかでなければ、だいたい平日夜は、こうした「ディープなサッカーナイト」になる。あとでの発表は1万8千人台。いわゆる「初心者」皆無なら、このくらいのところだろうな。
先発メンバー発表で、気になったのが、異常に気合が入っていたコンササポ。アウエーのサポーター席は満杯で、とても距離の離れたところから来たチームとは思えない。千葉や神奈川のチームでも、なかなかこんなに集まらない。南側自由席はすぐ近くなんで、リーダーの、こんな声も聞こえた。
「これ勝てば、無条件で決まるから」
あ、そうか、だった。コンサはまだ完全には降格圏から脱してなかったのだ。きょう勝てば「残留決定」だったのだ。それでまたいつも以上にテンション上がってるわけか。
残留が テンションあげる 火付け石
つまりコンサ側には、今日の試合には明確な「テーマ」がある。勝ってJ1に残る、という。一方、レッズには差し迫った「テーマ」はない。イヤイヤ「消化試合」とかそういうことは言いませんよ。ただ、目先の話をすれば勝っても負けても、そんなに大きな変わりはない。これは両チームの選手のモチベーションに影響してくるのではないか。
「苦戦しそうだな」
不安感がよぎるのは致し方ない。
■リンセンのタイプは・・・
正直、試合開始とともに、ピッチ上でもスタンドでも、レッズは押されていた。とにかくコンササポは応援をなかなか止めない。対抗してレッズ側もやるわけだが、勢いとしてはどうも負けている。こういうところにも「テーマ」のあるなしが関わってくるのかもしれない。西川のナイスセーブもあって、失点はないものの、全体としてコンサの方が攻めている印象は強かった。
そんな中で、いい動きをしていたのがリンセンだ。前半の35分くらいから、なんとなくレッズの攻撃も「まとまってきた」感じで、ユンカーからリンセンへパスが渡ってチャンスが生まれたり、こぼれ球をリンセンがシュートに持っていったり。ユンカーが「飛び出し」タイプだとしたら、リンセンはいいポジションを見つけてボールを受ける「待ち受け」タイプなのも、今日の試合でなんとなくわかった。
たぶんいい選手なのだ。しかし点が決まらない。後半も2度3度とチャンスはあったのに、決まらない。得点できないまま追い詰められてレッズを去っていく選手になる危険性は、まだ十分にある。近いところではアンドリュー・ナバウトなんかもそうだった。そうはならないように祈りたい。
欲しいのは 近日リンセン 先制点
ポツポツだった雨が、後半開始ごろ、一時的に少し勢いを増し、ポンチョ姿の観客が多くなる。が、その後、また落ち着いてきた。
コンササポの祈りが通じたのか、70分、とうとうルーカスフェルナンデスがゴール。私のいた南側からは、まるでゴール前にあげたクロスがそのまま入っちゃった感じで、いささか拍子抜けした。
それから先は、レッズの攻勢が続いたものの、シュートをゴールポストに弾かれたシーンなんかもあって、「きょうについていえばテンションの差かな」などと、だいぶ負けを覚悟したところで生まれたPKのチャンス。あっさりとショルツが決めた。勝ち点3を計算していたコンササポはガックシだったろうが、そうやすやすと勝ち点3を献上するわけにはいかない。勝ち点1で、コンサドーレが降格圏から脱出できたかどうかも、ついスマホの順位表でチェックする。
落ちないか コンサどーれと 順位表
ほぼ大丈夫だが。まだ残留確定ではないみたい。ペトロヴィッチのほか、興梠、小野、駒井ら元レッズ組の多いコンサドーレは、親戚みたいで、ついつい気になってしまうのだ。
帰りは、浦和美園駅までの道のりを、えっちらほっちら、息を弾ませつつ速足で歩き、行きと同じ、レッズサポではみ出さんばかりの乗客で溢れるバスで家に戻っていった。
とうとう今年のリーグ戦も、残るはあと1試合だけか。
山中伊知郎
1954年生まれ。1992年に浦和に引っ越して来て、93年のJリーグ開幕時にレッズのシーズンチケットを取得。以後30年間、ずっとシーズンチケットを持ち続け、駒場、ならびに埼スタに通う。去年より、レッズ戦を観戦した後、「川柳」を詠むという「レッズ川柳」を始める。現在、去年一年の記事をまとめた単行本『浦和レッズ川柳2021』(飯塚書店)が好評発売中。代表を務める「ビンボーひとり出版社」山中企画では、9月6日、お笑い系プロダクション「浅井企画」の元専務・川岸咨鴻氏の半生を追った『川岸咨鴻伝 コサキンを「3億年許さん」と叱責した男』をリリース。11月上旬には『タブレット純のローヤルレコード聖地純礼』も発売予定。また、今年末には『浦和レッズ川柳2022』も出す予定