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『暮れなずむ 冬の夜空に 30番』浦和vs新潟【浦和レッズ川柳試合レビュー】

浦議浦和レッズサポーター(さいたま市)

■今年一番の観客数な理由

今年も最終戦。さすがに数多くの観客が来るのが予想されるので早めに家を出、試合開始2時間以上前に埼スタに到着したが、南側自由席はすでにだいぶ埋まっていて、いつものように階段通路ぞいの席にはもちろん座れなかった。

日曜昼で、老若男女、幅広い年齢層の人たちが集まっていたものの、入場口付近で特に目立ったのはアルビレックスサポーター。ま、そりゃそうだ、残留と降格の瀬戸際で、「シーズンで一番大事な試合」になってしまったのだから。サポーター席だけでなく、正面のアッパーにも、ピッシリとアルビ・サポが。

アルビレックス新潟サポーター
アルビレックス新潟サポーター

相手にとって「残留」がテーマなのに対して、レッズ側では最後の出場になる興梠と宇賀神が「有終の美」を飾れるかが大きなテーマになる。さすがにきょう、レプリカユニフォームを着たレッズサポを見ると背番号30が目立った。

残留か 30番の 得点か

先発メンバーの発表の頃には、もうスタンドはアッパーも含めてほぼ満員。南側自由席でも、席が見つからなくて困っていたお客さんをけっこう見かけた。あとで発表された観客数は5万5千人あまり。今年最高じゃないか?何か優勝でも争っていそうな高揚感がある。

アルビサポの応援もテンション上がりまくり。寒くて、風も強い。しかしアルビサポは熱い。

発表で先発に「興梠」、リザーブに「宇賀神」がコールされた時には、もちろん拍手と声援が飛んだ。いわゆる「引退試合」ではなく、大事な「真剣勝負」の場をラストマッチとして迎えられる二人は、めぐり合わせとはいえ、選手としては幸せ者だろう。

30番 ラストマッチは ガチ勝負

「浦和vs新潟」選手入場
「浦和vs新潟」選手入場

■膠着した試合展開に

試合開始。アルビサポは松任谷由実の『真夏の世の夢』のメロディーで応援。へー、こういう曲使うんだ、とちょっとびっくり。

「引き分け狙い」なのかどうかよくわからないが、アルビは、とにかく守りを固めてくる。それで前半15分前後にレッズが攻勢をかけるが、どうも決定的チャンスまではいかない。

しかも張り切りすぎた興梠がイエローカード。私としちゃ、ずっと興梠の動きを見ていたので、必死にボールに絡もうとしつつ、なかなかうまく触れない焦りみたいなものもちょっと感じた。何かどうもきょうは勝ち負けよりも、興梠が点とれるかどうかの方に目が行ってる。自分たちの目の前で相手チームが降格する姿も、あんまり見たくないなァ、というのもある。

だから前半が0-0となっても、「レッズが得点できなくて残念」ではなく、「興梠が得点できずに残念」だった。

力みすぎ  イエローカードの 30番

後半、無得点のまま興梠が交代となって、残念の半面、まずは無傷でラストマッチを終えたことに、見ていてホッとする。監督は80分過ぎにはちゃんと宇賀神も投入し、功労者に対して筋を通した。

結局、それなりの攻防はあったものの、両軍とも得点がうまれそうな匂いもせずスコアレスドロー。引き分け確定の瞬間、もっとアルビサポが喜びを爆発させるのかと思いきや、ごく静かに試合終了を見届けていた。たぶんジュビロが負けて「残留確定」になったのを、みんな知っていたからだろう。お疲れさま。上越新幹線があるから、帰りも早い。

残留に 新幹線で 祝杯か

■興梠、宇賀神の引退について思うこと

さて、引退セレモニー。まずはパンヤとリンセンか。パンヤについては、ついに彼の得点シーンを見られなかったのは残念だな。「アジアチャンピオン」レッズがアジアで輝くためにも、東南アジアの選手に活躍してもらいたかったところだが。試合に出れば一生懸命動き回っていたのはよくわかったが、それだけじゃ点は取れない。

リンセンも、ゴール前のいいところにいるのに、なぜか点がなかなか取れない。少なくとも5~6点は取れておかしくなかったのに、リーグ戦は結果的には2得点か。レッズとは相性が合わなかったのかもしれない。残念ながら「爪跡を残した選手」とはいえなかった。

そして、次が宇賀神だ。私としちゃ2021年の天皇杯準決勝の弾丸ゴールは忘れられない。確か移籍決定後の「置き土産」だった。その前にも天皇杯決勝でゴール決めてたりして、妙に「天皇杯男」のイメージがあった。日本代表としても、1試合だけ出てるんだな。テレビドラマでいうと、突然、1回か2回、主役回がめぐってくる渋いわき役のレギュラーといった感じで、『緊急取調室』の大杉連やでんでんみたいな存在だった。いや、あくまで私の感覚で。それと背番号の「35」はやはりピンとこない。「3」だ。日が暮れたスタンドにも「3」の横断幕が飾られていた。

日も暮れて 浦和の「3」は 友弥なり

宇賀神選手の3
宇賀神選手の3

興梠については、数多く決めたゴール以上に、レッズに移籍が決定した時の衝撃が忘れられない。「アントラーズの興梠がレッズに来る? ガセネタじゃないの?」とともに、「仮に興梠クラスが来てもエメルソンやワシントンみたいな強力外国人に比べて、半分も働けないだろう」と私自身は、その実力についても懐疑的だった。それがいきなり、初年度から活躍して、ずっと二けた得点を維持したのだから、正直、私は見る目がない。今日のあいさつの中でも「3つのお願い」としてレッズサポに「誇り高きレッズサポーターとしての自覚をもってほしい」と呼びかけるなど、まさしくレッズ愛にあふれた、「忘れられない選手」になってしまった。

暮れなずむ 冬の夜空に 30番

これで今年も終わりか。

興梠選手の引退スピーチ
興梠選手の引退スピーチ


動画:『雷雨と監督交代の夏』浦和レッズ川柳2024【7月、8月、9月編】

山中伊知郎

1954年生まれ。1992年に浦和に引っ越して来て、93年のJリーグ開幕時にレッズのシーズンチケットを取得。以後31年間、ずっとシーズンチケットを持ち続け、駒場、ならびに埼スタに通う。2021年より、レッズ戦を観戦した後、「川柳」を詠むという「レッズ川柳」を始める。
代表を務める「ビンボーひとり出版社」山中企画では、どん底地下芸人から中野区議会議員に転身している井関源二さんの単行本『井関が、中野区から日本を変える』と、元放浪少女で、群馬県・沼田の市会議員に転身している今成あつこさんの『日本の洗濯は沼田から!』をリリース。来年1月には、元GS(グループサウンズ)「オリーブ」のボーカル・マミーさんが著者の『GSラストサムライ』を発売予定。

浦和レッズサポーター(さいたま市)

浦和レッズに関する情報をまとめたり、議論したりする『浦議』を1998年から運営しています。最近はYou Tube「浦議チャンネル」もやっています。浦議チャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCAFN4-ne2gUkEl6xddW71hA

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