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真面目すぎる大原優乃が振り切るきっかけ。『おいしい給食』で「恋愛シーンも違う意味で体を張って(笑)」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)2024「おいしい給食」製作委員会

グラビアで絶大な人気を博し、女優業でも出演作が相次ぐ大原優乃。大ヒットしたドラマシリーズの劇場版第3弾『おいしい給食 Road to イカメシ』にも、ヒロインの新米英語教師役で出演している。主演の市原隼人がハイテンションで給食を食べるシーンが話題を呼んだこの作品で、大原が受けた影響も大きかったようだ。

聖子ちゃんカットから時代を再現してもらって

――80年代が舞台の『おいしい給食』シリーズで、大原さんはドラマのseason3から、聖子ちゃんカットで愛先生を演じています。

大原 SNSでは「似合ってる」という声をいただきました。昔の時代を描く作品って、容姿やお衣装がすごく大切だと思うんですけど、ヘアメイクさんがとてもこだわってくださって。普段の私自身のヘアカットラインと変えて、この役のために細かく80年代を再現していただいて、私も作品に入っていけました。

――自分でもお顔と合うと感じました?

大原 役として「これが愛先生だな」と、しっくりきました。

――ドラマ自体の反響も感じましたか?

大原 いろいろな世代の方から愛していただいているのがわかりました。他の作品の現場でも、感想を言っていただくことが多くて。業界でもたくさんの方が観てくださっている作品だなと感じました。

お腹を抱えて笑っていたのが尊敬に

――甘利田先生役の市原隼人さんが給食を食べるシーンでのオーバーアクションは、生で見るとどう思いました?

大原 最初の段取りとかでは、お腹を抱えて笑ってしまうくらい面白いんですけど、カチンコがなる直前まで役と向き合って、考え続けられている姿を近くで見させてもらって。本番までにテイクを重ねていくにつれて、どんどん尊敬の気持ちになりました。

――自分の出番が終わったあとも、現場に残って何時間も見学されていたとか。

大原 市原さんのお芝居を少しでも学ばせていただきたかったので、プロデューサーさんにご相談して、残って見学させてもらっていました。私も教師役でしたけど、気持ち的には市原さんの生徒でした。

――愛先生が英語でキレるシーンも、振り切っていたようですね。

大原 怒鳴ると英語になる役柄なので、まず発音の練習から始めました。会話くらいの音量と怒鳴ってしゃべるときだと、英語の発音が舌の動きから変わるんです。そこにすごく苦戦して、一番時間を掛けて準備しました。

気持ちの強弱を大事に演じました

――season3で特に印象的な回やシーンはありますか?

大原 最後の9・10話は、愛の心情がたくさん描かれていました。教師として娘として、揺れ動く繊細な脚本だったので、すごく考えながら演じさせてもらいました。

――愛先生の父親がアメリカから忍川中学の視察に来て、給食中の甘利田のハイな様子を見て転勤を要請する話でした。

大原 親でもあり、教師として先輩でもある父親に、10話までに培って成長した姿も見せたかったので。未熟なところとの気持ちの強弱を大事にしました。

――4話でクラスの副担任になって、教卓で生徒にあいさつをしていたら、甘利田先生に突き飛ばされたところも面白かったです。

大原 段取りが始まる前に、市原さんから「もしかしたら突き飛ばしてしまうかも」と言っていただいていて、本当に来られたときは思わず笑ってしまいました(笑)。あと、市原さんが持っている出席簿がバンバン叩かれて、回が進むごとにどんどんボロボロになっていくのも面白かったです(笑)。砕けた紙が舞っていくんですよね。

大先輩と対峙するのはずっと緊張していて

――映画も函館で撮影。朝、校門で生徒を迎えるシーンは寒そうでした。

大原 撮影したのは春先で、肌寒い時期でしたけど、極寒ではなかったです。

――撮影以外での思い出もできました?

大原 空き時間にヘアメイクさんたちと女子会で、ラッキーピエロという函館のハンバーガーレストランのチェーン店に行きました。頼んだメニューのサイズが全部大きくて、驚きながら楽しい時間を過ごしました。

――忍川中学が給食完食のモデル校になって、食べ切れない生徒は昼休みも残されていました。大原さんも小学生の頃、食べるのが遅くて昼休みの最後まで残っていたとか。

大原 愛先生が常に気に掛けていた、アメリカからの転校生のマルコくんが「給食は戦いです」と言うんですけど、私も当時まさに同じ気持ちでした。

――「給食をどうしても食べられなくて、必死になっている生徒だっているんです!」と町長やPTA幹部たちに訴えるシーンは、実感がこもりました?

大原 もちろん共感しましたが、そこはどちらかと言うと、マルコくんを思っての台詞でしたね。

――そのシーンの愛先生は、だいぶ荒れていたというか(笑)。

大原 大先輩の六平(直政)さんと対峙させてもらうので、脚本をいただいてからずっと緊張していました。でも、大先輩だからこそ安心感があって、大きな胸に飛び込む想いで演じさせてもらいました。

いつの間にか大切な存在になったのかなと

――甘利田先生と愛先生の恋模様も、映画のひとつの軸になっています。

大原 他の作品のラブシーンとは違った意味で、体を張った作品ではありました(笑)。

――ドラマの初めから、甘利田先生に対する気持ちは、どう変化していったと捉えていますか?

大原 最初は興味本位で目で追っていて、いつの間にか気になる、とても大きな存在になっていったと思います。男性としても人間としても、愛は甘利田先生をとても大切に思っているんだろうなと。

――転機になった回もありました?

大原 ドラマの前半で、愛先生が生徒にバカにされて笑われていたときに、甘利田先生が空気を正すようなシーンがあって。そういう救われる瞬間が増えて、近くにいたい気持ちが、演じていても大きくなりました。

誰とでも対等に向き合う姿が心に刺さって

――人間として、愛先生は甘利田先生のどんなところに惹かれたと思いますか?

大原 給食はもちろん、何に対しても真っすぐですよね。生徒にも他の先生たちにもブレない。自分に足りない部分もたくさん持っているので、そういったところに惹かれたんじゃないかと思います。

――甘利田先生の台詞は給食のことを言っているようで、教育や世の中のことにも繋がる……とコメントされていました。役を越えて、大原さん自身に響いたものもありました?

大原 「子どもは大人を越えることがままある」とおっしゃっていたのは、その通りだと思いました。市原さん自身が生徒の皆さんに対して、年齢や立ち位置とかは関係なく、同じ目線で対等に向き合われている姿もたくさん見させていただいたので、より心に刺さりました。

――映画では生徒に「本気で取り組む守備範囲を自ら狭めている。楽だから」と指摘する場面もあります。

大原 自分自身に置き換えると、お芝居でもそうだなと思いました。仕事でも何でも、楽をすることは簡単。でも、現場で市原さんが、役から一瞬も逃げずに演じられている姿を見ていたので、甘利田先生だから台詞として成立する気がしました。

悩む時間もすべて自分の力になればと思います

――愛先生が「イヤなことからすぐ逃げちゃう」と話しつつ、大きな決断をするのも描かれていました。大原さんも何かから逃げないで、乗り越えたことはありますか?

大原 最近で言うと、この教師役も初めてでしたし、ありがたいことに幅広く役をいただくことが増えてきて。その分、悩むことも多くなりました。でも、悩んだ時間もすべて、経験として自分の力になったらいいなと思って、頑張っています。

――勇気を出して、何かを決断したことも?

大原 もともとグループ活動をしていて、個人活動に移るタイミングが、ちょうど高校を卒業する時期だったんです。その頃に上京もしたので、不安と戦いながら、いろいろな決断が重なりました。

――今も何かと戦っている感覚はありますか?

大原 取材などでよく「ライバルは?」と質問されることがあって、私は今まで自分が演じてきた役柄だと思っています。常に過去の自分を超えられるように、努力していきたいです。

笑顔でしていたお芝居を本番で変えました

――今回の映画では、終業式や夜の職員室での甘利田先生との会話など、愛先生の見せ場も多くありました。

大原 あの甘利田先生との職員室のシーンは、最初は『おいしい給食』らしく、段取りをすべて笑顔でやっていたんです。でも、本番前に監督が台本の「寂しい」という台詞のところをポンと指で差してくださって。言葉は一切なかったんですけど、背中を押してくださったような空気を感じて、全然違うお芝居になりました。

――他には、映画の撮影でどんなことが印象に残っていますか?

大原 クランクアップの際に、市原さんが体育館の檀上から生徒さんのお名前を1人1人呼んで、卒業証書を手渡されていたんです。私たち先生2人も監督から卒業証書をいただいたあと、生徒の皆さんが「ちょっと待った!」って、2人それぞれに寄せ書きをプレゼントしてくださいました。色紙に顔のイラストと全員からのメッセージがぎっしり書かれていて。

――本物のような先生冥利に尽きる感じですね。

大原 今でもよく見返して、元気をもらっています。

――サブタイトルにあるイカメシも堪能できました?

大原 人生で初めて食べて感動しました。あんなにおいしくて豪華なものが給食に出ることが驚きですし、甘利田先生が待ちわびるのも理解できました。

――大原さんが普通に好きな食べ物というと?

大原 現場と現場の間に30分でも空き時間があったら、焼肉を1人で食べに行くくらい好きです(笑)。

テンションを上がるだけ上げてみようと

――最近の他の出演作では、『ブラックガールズトーク』の彼氏最優先女や、『万博の太陽』のプライドの高いライバル役で、インパクトを残しました。

大原 『ブラックガールズトーク』では、1回やれるだけやってみようと思いました。彼氏のことばかり話して友だちを振り回す役を、どう演じたら作品の中でイヤな女の子として成立するか。テンションを上がるだけ上げて振り切ったら、全部受け入れてくださって。MAXのまま、自由にやらせてもらいました。

――そこまで振り切ること自体には、ハードルはありませんでした?

大原 すごく体力は使いました(笑)。今年一番疲れたかもしれません。強烈な女の子だったので。

ブレずに自分らしくお芝居に向き合いたい

――以前、「芝居にも真面目すぎるので、役にもう少し遊び心を持てたら」と話されていましたが、その辺の役では、だいぶ遊び心を発揮できたのでは?

大原 今まで長所も短所も真面目さで、それがコンプレックスでもありました。でも、『おいしい給食』で市原さんとご一緒させていただいて、真面目を突き抜かれた先に、こんなカッコいい姿があるんだと知りました。私も最近は、ブレずに自分らしく向き合いたいと思いながら、お芝居をさせてもらっています。

――本当に市原さんの影響は大きかったんですね。

大原 私の役者人生の中で、すごく大きな存在になりました。

――目指す女優像が見えてきたりもしていますか?

大原 以前から目標にしていることで、役を自分に寄せるより、自分を役に近づけられる役者になりたいです。どんな役であっても。

――それも踏まえて、これから磨いていきたいことは?

大原 この前のお休みに、車を6時間くらい運転して都内から茨城まで、友だちといちご狩りに行ったんです。その頃は雨も多くて、車がちょっと汚れてきてしまったので、そろそろ洗車に行かないと。今、一番磨きたいのは車です(笑)。

Profile

大原優乃(おおはら・ゆうの)

1999年10月8日生まれ、鹿児島県出身。2009年にDream5としてCDデビュー。2014年にアニメ『妖怪ウォッチ』のエンディングテーマ『ようかい体操第一』がヒット。女優として、2019年にドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』で初レギュラー。主な出演作はドラマ『ゆるキャン△』、『あせとせっけん』、『秘密を持った少年たち』、『おいしい給食season3』、『万博の太陽』、映画『さよならモノトーン』など。映画『おいしい給食 Road to イカメシ』が5月24日より公開。

『おいしい給食 Road to イカメシ』

監督/綾部真弥 企画・脚本/永森裕二 配給/AMGエンタテインメント

出演/市原隼人、大原優乃、田澤泰粋、栄信、石黒賢ほか

5月24日より新宿ピカデリーほか全国公開

公式HP

(C)2024「おいしい給食」製作委員会
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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